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アフィリエイト広告に関する景品表示法上の規制はどうなったのか?最新の消費者庁指針を解説

2022.07.27

「アフィリエイト広告」は、個人ブログなどの収益源となっている一方で、一般消費者を誤導する内容を含むものが多いという問題点が指摘されています。

消費者庁は、「アフィリエイト広告等に関する検討会」を設置して、アフィリエイト広告に関する実態調査と分析を行った後、2022年6月29日に景品表示法に基づく指針の改定版を公表しました。

今回は、最新の消費者庁指針を基に、アフィリエイト広告に関する景品表示法上の規制内容を解説します。

1. アフィリエイト広告の仕組み

アフィリエイト広告とは、インターネット上で提供される成果報酬型の広告のことです。

閲覧者がアフィリエイト広告をクリックすることで、広告主からアフィリエイターに報酬が支払われます。

一般にアフィリエイト広告の掲載には、以下の3者が関与しています。

①広告主
アフィリエイト広告により、商品やサービスを宣伝したい事業者です。

②ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)
アフィリエイト広告を掲載するシステムを運営する事業者です。広告主とアフィリエイターの中間に位置します。

③アフィリエイター
自身の運営するウェブページにおいて、実際にアフィリエイト広告を掲載する者です。

多くの場合、広告内容は広告主が決定しており、ASPとアフィリエイターは、アフィリエイト広告の提供に関する広告主の補助者として位置づけられます。

2. アフィリエイト広告を「表示」しているのは誰なのか?

景品表示法では、顧客を誘引するための手段として行われる広告などを「表示」と定義し(同法2条4項)、表示を行う事業者に対する規制を定めています。

広告の「表示」を行っているのは、「表示内容の決定に関与した事業者」であると解するのが裁判例の立場です(東京高裁平成20年5月23日判決)。

アフィリエイト広告の場合、広告主が表示内容を決定するのが一般的であるため、原則として「表示」を行っているのは広告主と判断されます。

ただし例外的に、以下の場合にはアフィリエイターが「表示」を行っていると判断される可能性があるので注意が必要です。

・広告主と商品・サービスを共同供給している場合
・広告主の指示を超える内容のアフィリエイト広告を掲載した場合
など

3. 景品表示法に基づき、アフィリエイト広告の広告主が講ずべき措置

アフィリエイト広告を「表示」する者(原則として広告主)は、一般消費者による自主的・合理的な選択を阻害しないように、アフィリエイト広告の表示を適正に管理するために必要な措置を講じなければなりません(景品表示法26条1項)。

消費者庁の指針(同条2項)では、アフィリエイト広告に関して広告主が講ずべき措置として、以下の事項が例示されています。

参考:事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針|消費者庁

(1)景品表示法の考え方の周知・啓発

①アフィリエイターに対して、景品表示法の考え方の周知・啓発する。

(2)法令遵守の方針等の明確化

①アフィリエイターに対して、不当表示等を行わないように確認するなど、法令遵守の方針等を明確化する。
②法令遵守の方針等に違反したアフィリエイターに対しては、成果報酬の支払い停止や契約解除等の具体的措置を行う旨を明確化する。

(3)表示等に関する情報の確認

①アフィリエイト広告事業を他社へ委託する場合、委託先がアフィリエイターに対して、不当表示等を助長するような指示等をしていないか確認する。
②アフィリエイターが作成する表示内容を事前に確認する。
③人員体制の制約等により、すべての表示を事前確認することが困難な場合、以下の対応を取る。
・成果報酬の支払い額や支払い頻度が高いアフィリエイターの表示内容を重点的に確認する
・他の事業者に確認作業を委託する
など

(4)表示等に関する情報の共有

①アフィリエイト広告の表示内容の方針や、表示の根拠となる情報等をアフィリエイターに事前共有する。
②すべての情報を事前共有することが困難な場合は、以下の対応を取る。
・アフィリエイターからの相談を受け付ける体制を構築する
・他の事業者を通じて共有するの対応を取る。
など

(5)表示等を管理するための担当者等を定めること

①広告主がアフィリエイト広告に関する指示・確認権限を有することを、アフィリエイターとの間で確認する。
②広告主側の担当者を、社内だけでなくアフィリエイターにも周知する。
③アフィリエイター側も含めて複数の担当者が設置される場合、広告主とアフィリエイターの間で権限・所掌を確認する。
④アフィリエイター側の担当者も含めて、景品表示法等の法令に関する講習を実施する。

(6)表示等の根拠となる情報を事後的に確認するための措置を取ること

①削除されたアフィリエイト広告の内容を事後的に確認できるように、資料の保管等を行う。
②すべての資料を保管することが困難な場合、以下の対応を取る。
・アフィリエイター等における保管義務を明確化する
・他の事業者に保管を委託する
・定期的にアフィリエイト広告の表示内容を確認するなど、不当表示等の未然防止に必要十分な取り組みをする
・成果報酬の支払い額や支払い頻度が高いアフィリエイターの表示内容を重点的に保管する
など

(7)不当表示等が判明した場合の迅速・適切な対応

①広告主・ASP・アフィリエイターを通じて、迅速に不当表示等を削除・修正できる体制を構築する。
②違反したアフィリエイターに対して、成果報酬の支払い停止・成果報酬の返還・契約解除等の措置を迅速・確実に行う。
③消費者などの外部からの相談・情報提供を日常的に受け付ける窓口を設置する。

(8)その他

①アフィリエイト広告であることをわかりやすく明示する。

4. まとめ

広告主としては、アフィリエイト広告を「表示」する者として、景品表示法上要求される措置を確実に行うことが大切です。

これに対してアフィリエイターは、原則として景品表示法上の責任を負うことはありません。しかし、広告主の定める方針等に従わなければ、報酬の支払い停止や返還、契約の解除といったペナルティを受ける可能性がある点に注意が必要です。

個人の副業としても人気のアフィリエイトですが、安定的・長期的に収益を挙げたい場合は、景品表示法などの法規制についても理解を深めておきましょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw

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