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なぜ10年おきに妖怪ブームがやってくるのか?

2022.07.27

大昔から人々を魅了した妖怪たちが巻き起こす定期的なムーブメント

日本人は昔から神仏を丁重に扱ってきたし、ときには身の回りの怪異やちょっと変わった動物、癖のある隣人などをしばしば“妖怪”と呼んだ。

妖怪というのは今に至るまでに山のように誕生してきたし、その出自もさまざま。

人に害をなす野生動物を妖怪と呼ぶ場合もあったし、天候の急変は妖怪のしわざとされたし、外国でいうところのポルターガイストのことを「家鳴り」と呼んで妖怪視もしてきた。

または極端に長生きする人や動物を妖怪と認識する風潮もあったという。

そしてこの妖怪というのは、前々から定期的にブームを巻き起こしている。

今回は、ここ数十年の妖怪ブームについて振り返っていきたい。

そもそも妖怪は昔から人気だった!

妖怪ブームというのは昔からしばしば到来したもののようで、それこそ江戸時代にもこのような風潮があったりもする。

鳥山石燕という江戸時代に活躍した画家が、数々の妖怪画を残しており、影響を受けた画家は数多い。彼の創出した妖怪のデザインは今も様々な媒体で引用され続けている。

石燕が描く妖怪は、これまで言い伝えの中でのみ存在してきたものをどこか愛嬌のあるイメージでビジュアル化したケースが多く、その愛着のわくデザインが今日の妖怪像の形成にも深く寄与した。

言ってみれば、今に至るまでしばしば生じてきた妖怪ブームの最初の波を起こしたのが、この石燕なのかもしれない。

実際、妖怪画の第一人者である漫画家の水木しげるも、石燕が描いた妖怪のデザインを尊重して、ほとんど手を加えずに自身の漫画にも登場させてきたほどだ。

その水木自身は、終戦からまだ10年も経過していない時期に妖怪の登場する奇妙な紙芝居を描いたり、そこからほどなくして貸本漫画家として、やはり妖怪が登場する作品を上梓している。

この頃にはのちに大人気キャラクターとなる鬼太郎も既に完成していたが、その立ち位置は今とはやや異なり、デザインもおどろおどろしい。

そんな昭和における最初の妖怪ブームとなると、これは恐らく40年代前半がもっとも勢いがあったようだ。

昭和43年に大映が『妖怪大戦争』という映画を公開し、これが大ヒット。子供たちに妖怪という存在を強く認識させることとなる。

もっとも、筆者は昭和59年生まれなので、実際の空気感を体験できていない。あと少し早く生まれていれば…。

本作はかなり評判があったようで、関連するように妖怪の人形やプラモデルなどのグッズが次々に発売されまくった。

『妖怪大戦争』は今もコアなファンが多い作品で、平成に元号が変わってからもリメイクされている。

水木しげるの功績はやはり大きい!

それにしたって、近代の妖怪ブームの第一人者と言ったらやはり水木しげるを置いて他にない。

『ゲゲゲの鬼太郎』の原作者で、戦後の比較的早い段階から妖怪が活躍する漫画を描いていたし、精緻で魅力的な妖怪画だって山のように描き残している。

その『ゲゲゲの鬼太郎』がアニメ化された折には、やはり妖怪ブームと呼ぶべき大流行が巻き起こった。

実は『ゲゲゲの鬼太郎』が最初にアニメになったのは、『妖怪大戦争』と同じく昭和43年。

しかしそれ以前に、既に児童誌では『墓場の鬼太郎』というタイトルで漫画が連載されていたこともあって、アニメ化される前の段階で昭和の第一次妖怪ブームの下地にはなっていた。

これがアニメになったことで子供たちの間で鬼太郎人気はさらに高まることになる。当時はモノクロ作品だったが、それが余計に怖い雰囲気を醸し出してもいたようだ。

昭和46年には『ゲゲゲの鬼太郎』がカラー作品として再登場したが、これが現代では第二期と呼ばれる括りのもの。そしてこの二期こそが、もっとも恐ろしいと評価するファンも多い。

水木しげるによる漫画作品に、大映が公開した『妖怪大戦争』。

これと併せて『ゲゲゲの鬼太郎』第一期のモノクロ作品、第二期のカラー作品双方が、昭和最初の妖怪ブームを形成することとなった。

昭和の終わりにも妖怪ブームは再来している!

第二期『ゲゲゲの鬼太郎』は、昭和47年に終了する。これに伴い妖怪ブームは一旦沈静化し、東映の『仮面ライダー』が流行することで、子供たちは変身ブームに沸くこととなった。

しかし、これで昭和の妖怪ブームが終わったわけではなかった。

昭和60年には『ゲゲゲの鬼太郎』の第三期が放映されることとなり、こちらは昭和63年までの長期間にわたって放送が続く人気アニメとなったのだ。

従来のエピソードをリメイクしたものもあれば、新しい切り口で描くシーンも多いのが三期鬼太郎の特徴。

中でもアクションシーンはかなりパワーアップしており、人間のレギュラーキャラクターが登場したことで、人間を悪い妖怪から守るヒーローとしての鬼太郎像が描かれることも多かった。

このヒロイックなイメージは当時賛否もあったようだが、現在では概ね好意的に受け止められている。

筆者はこの三期を観て育った世代。エンディング曲のラストで妖怪が画面いっぱいに登場する場面があり、そこで毎回号泣していた。

そしてこの第三期の放送期間中には、実に数々の関連商品が発売されている。

食玩やソフビ人形、それから文具に大型のプレイセットなどが信じられない数、市場に供給され続けた。

中でもこの「ゲゲゲ妖怪城」はこの時期に発売されていた玩具の中でもとりわけ大サイズ。

劇中でも第1話に登場した建物であり、劇場版では敵妖怪軍団のアジトとしても活用されるなどしていたため、当時これを欲しがった子供は多かった。

もちろん筆者もその中の1人だった。

30代の前半になって結構な値段のするこの「妖怪城」を購入し、子供の頃の夢を一つ叶えた気分になった!

とにかく、この昭和末期の妖怪ブームもかなり熱量を帯びていた。おばけは死なないとはよく言ったものである。

最低でも10年おきにやってくる妖怪ブーム…

水木しげる原作の『ゲゲゲの鬼太郎』は、第一期が昭和43年。第二期が46年。第三期は昭和60年に放映スタートしている。

このうち一期と二期に関しては放送された時期が近いが、実はこれ以降は大体10年スパンで新作が放映されていることは、妖怪ファンにはよく知られている。

元号代わって平成8年に第四期。

平成19年には第五期がスタートし、こちらは事情によって打ち切りの憂き目を見ることとなったが、平成30年には第六期が放送されることとなった。

おおまかではあるが10年間隔で『ゲゲゲの鬼太郎』は復活し、その都度妖怪ブームもある程度巻き起こっている。

これ以外にも妖怪ブームの火付け役となる作品はある。

平成25年には『妖怪ウォッチ』というゲームソフトがリリースされ大ヒット。翌26年にはアニメ化され、大変な話題となったことも記憶に新しい。

『ゲゲゲの鬼太郎』が大体10年おきに放送されるうえに、『妖怪ウォッチ』などの妖怪を題材にした作品もヒットすることがあるので、結果的にこの国ではいくら時代が変わろうと、元号が変わろうと、妖怪の存在が埋もれることがない。

そもそも私たち日本人は無意識に妖怪を求め続けている!

ちょっとここで観念的な話をしたい。

日本というのは世界的に見ても割と珍しい、多神教が当たり前になった国である。

勢力の強い宗教はあるが、信教の自由がおおよそ担保された国で、キリストを信奉する家もあれば、神道を重んじる家もあり、仏壇に手を合わせる家もある。

外国から移住した人のための礼拝堂の設置もおおよそ許されているし、このいい意味での緩さは、多様性がある。

元々八百万の神がいることが当たり前に信じられてきた国だし、かと言って無信教の人の居場所がないわけでもない。

「いるかいないか分からないけど、神様がいるという体(てい)で生きてます」というような人が割と多いのが日本という国であり、その八百万の神の中には、元々人に害を成したものを無理やり神様扱いして祀り、祟らない神様に格上げしたというような事例も各地に存在している。

物凄く懐が広くて深いのが、この国の人たちなのである。

だから古くなった家具に魂が宿るとか言われても「そうなんだ」と思えるし、ちょっとした怪異があっても「ま、そういうこともあるね」と流しちゃうとか、とにかく些細なことは大体そう思って済ませる度量があったもので、これが多種多様な妖怪を創出する土壌となったのだろう。

特定の神様の存在をあまり強く信じていない人も多い一方で、目に見えないものがいたとしても特にそれを強く否定もしない。そういう国民性の国だからこそ、妖怪がコンテンツとして定期的にリバイバルされる節もあるはずだ。

昭和から平成、そして時代は令和となったが、きっと今後も何かのタイミングで妖怪の魅力を再確認できるチャンスは訪れる。

時代はどんどん変わっていくが、やっぱり日本人の精神性の中から妖怪への理解と許容、興味が消え失せることはないのだ。

文/松本ミゾレ

編集/inox.

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