買い物をしたりサービスを受けたりする際に支払う消費税は、いつから導入された税金なのでしょうか?導入されたタイミングや理由だけでなく、消費税の歴史や税率アップの背景・支払ってから納付されるまでの流れまで、気になるポイントをまとめて解説します。
意外と知らない?消費税の歴史
日本人が今や当たり前のように支払っている消費税は、古くからずっと導入されていた税金ではありません。まずは、消費税が導入されてから現在までの歴史・背景を簡単に紹介します。
1989年に3%の「消費税」がスタート
「幼少期には消費税がなかった」という人もいるのではないでしょうか?消費税は比較的新しい税金で、最初に導入されたのは竹下内閣時代の1989年4月です。当時、消費税率は3%に設定されていました。
消費税が導入される4カ月前の1988年12月には、消費税について定めた日本の法律『消費税法』が成立しています。この法律に基づき、日本国内の取引には消費税が課税されるようになりました。
ただ、一定の要件を満たす学校に支払う授業料や入学金・介護保険サービス・埋葬料・火葬料などには、消費税が課税されないことも覚えておきましょう。
2022年までに3回の税率引き上げ
税率3%からスタートした消費税は、2022年現在までに3回の税率引き上げを行ってきました。税率がアップした年と税率の変遷は以下の通りです。
消費税スタートと引き上げの年月 | 税率 |
1989年4月スタート | 3% |
1997年4月 | 5% |
2014年4月 | 8% |
2019年10月 | 10%(軽減税率8%) |
消費税が導入された88年から10年もたたないうちに、1回目の税率アップが実施されています。2回目の引き上げが行われたのは、5%になってから17年後です。
5%から8%に消費税が引き上げられてからは、わずか5年半で10%まで消費税率をアップしていることが分かります。
税抜き金額が10万円の家具を購入すると、消費税がスタートした頃は3,000円だった消費税が現在は1万円かかる計算です。
2019年からは「軽減税率」が適用
消費税率のアップは国民の生活に大きく影響します。そのため、2019年に消費税を10%にアップしたとき、同時に『軽減税率』を導入しました。基本は10%の消費税率を設定しているものの、一部の生活必需品には軽減税率が適用され、引き上げ前の8%が課税される仕組みです。
軽減税率が適用されているものは、以下の通りです。
- 飲食料品
- 週に2回以上発行される新聞
飲食料品には、肉や野菜・魚などの生鮮食品や牛乳・お茶など、生活する上で必要なものが該当します。ビールやワインなどの酒類や、外食は軽減税率の対象外なので注意しましょう。
なお、テイクアウトや出前・宅配など、飲食料品を届ける場合は軽減税率の対象で、消費税率は8%となります。
また、新聞料金に軽減税率が適用されるようにするためには、定期購読の契約が必要です。スマートフォンやタブレットなどで読める電子版の新聞購読料は、10%の消費税が課税されることも覚えておきましょう。
消費税が導入された理由
「なぜ、もともとはなかった消費税がスタートしたの?」と疑問に感じる人もいるでしょう。日本で消費税が導入された主な理由を二つ紹介します。
高齢化社会に対応するため
消費税が導入されるようになった大きな理由は、日本社会が抱える少子高齢化社会の問題です。日本国民の高齢化は加速しており、2060年には65歳以上の高齢者が全体の4割近くに上ると考えられています。
国の社会保障費のうち、年金の支給にかかる費用は半分近くの58.5兆円を占めています。しかし、少子高齢化の日本では、年金を受給する高齢者が増加していく一方、働く世代の数は減っているのが現状です。そのため、足りない社会保障の財源として消費税が導入されるようになったのです。
導入当初は高齢者の保障がメインでしたが、消費税率が10%に引き上げられた2019年には、負担が現役世代に偏っている点が見直されています。年金や医療に加えて、子育て支援や介護サービスなどの社会保障にも消費税が使われるようになりました。
「物品税」の矛盾を解消するため
「消費税がスタートしたから、買い物で税金がかかるようになった」と思っている人は多いのではないでしょうか?しかし、消費税が導入される前には特定の商品にのみ課税される『物品税』と呼ばれる税金がありました。
物品税がかかっていたものと、課税対象ではなかった商品の一例は以下の通りです。
物品税がかかっていた『ぜいたく品』の一例 | 物品税がかからなかった商品の一例 |
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表を見ると、コーヒーと紅茶は同じ飲み物であるにもかかわらず、コーヒーにだけ課税されています。紅茶にも金額の高い商品があるのに、コーヒーにだけ物品税がかかる矛盾があったのも事実です。
このよう物品税には、誰もが納得する『ぜいたく品の基準』を設けるのが困難な面がありました。また、サービス業の幅が広がり、物の購入だけではなくサービスを受けるためにお金を使う機会が増えたのも廃止の理由です。
物品税の矛盾や不足を解消するために、商品やお金を使う内容に関係なく税が課される消費税が誕生したという背景があります。物品税は消費税の開始と同時に廃止されました。
消費税の仕組みは?
「消費税は国の重要な財源だ」と言われても、自分が支払った消費税がどのように徴収されているのか分からない人は多いのではないでしょうか?消費税の仕組みと、納付先についてもチェックしましょう。
消費者が負担する「間接税」
消費税は、買い物をしたりサービスを受けたりした『消費者』が負担する『間接税』です。間接税とは負担者(払う人)と納付者(収める人)が違う税金を指します。
納付書を使ったり給与から天引きされたりして納付する所得税・住民税などは、負担者と納付者が同じ『直接税』です。
間接税である消費税は、商品を売ったりサービスを提供したりした事業者(個人の店や企業など)が、消費者から商品代金として預かった消費税をまとめて納付します。商品やサービスに対して払った消費税は、店や提供者が受け取っているわけではありません。
間接税には、消費税の他に、製造者または輸入者が納税する形で消費者が負担する『酒税』もあります。
納付先は国と地方自治体
消費税が納付されるのは、国と地方自治体です。消費者が支払った消費税は、事業者から事業者の本社を管轄している税務署にまとめて納付されます。
税務署に納付された消費税は『国税』として一部を国が徴収し、残りは『地方消費税』として各都道府県に交付されます。つまり、消費税には国税・地方税どちらの役割もあるということです。
以下の表から、消費税の内訳を確認してみましょう。
消費税率 | 地方消費税率 | |
標準税率10% | 7.8% | 2.2% |
軽減税率8% | 6.24% | 1.76% |
また、消費税(国税)のうち1.52%は、国が『地方交付税』として地方消費税とともに各自治体に交付します。
例えば1万円の洋服を購入した場合は標準税率10%が適用されるので、消費者が払う消費税額は1,000円です。1,000円のうち780円が国税、220円が地方税となります。国は780円のうち152円を地方交付税とするため、地方に分配される金額は合計372円です。
なお、地方消費税は税率が5%になった1997年からスタートしました。国が徴収した分は大部分が社会保障費に、地方に渡った分は自治体の行政に活用されます。
構成/編集部