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若者世代がよく使う言葉「ひよる」の意味と正しい使い方

2022.08.09

『ひよる(日和る)』はもともと、物事を静観するといった意味の言葉ですが、世代によっては違った使われ方が主流になっているようです。正しい文脈で使えるように、本来の意味やニュアンスの変化を確認しておきましょう。具体的な例文も紹介します。

「ひよる(日和る)」の意味は?

時代の変遷とともに、本来の意味とは違った使われ方をする言葉は少なくありません。『ひよる(日和る)』も違う意味で使われるケースが多くなった言葉です。本来の意味と現在の若者が使うときで変わる意味合いを見ていきましょう。

本来の意味

元来『ひよる(日和る)』とは、物事に対して積極的に関わらず、傍観する姿勢を指す言葉です。周囲の状況を確認した上で、より強い者の味方になったり、自分の意思や信条・意見を曲げて利益のある方に流れたりするニュアンスを持ちます。

成り行きをうかがって自分の行動を決める様を表し、場合によっては強い者にへりくだる姿勢も含みます。本来の意味合いとしても、どちらかといえばネガティブな文脈で使われる場合が多かったようです。

若年層がよく使う「ひよる」の意味

『ひよる』という言葉は、『状況を傍観する』といった意味とは違った使われ方をすることも多くあります。主に現代の若年層が使う『ひよる』は本来とは異なり、『怖じ気づく(おじけづく)』『震え上がる』『ビビる』といった意味合いで使われています。

実際のところ、いわゆる若者言葉として『ひよる』の意味を『怖じ気づく』と紹介している情報も多いようです。しかし、若者言葉という表現自体がそもそも古いという考え方もあるでしょう。

確かに若年層が中心ではあるものの、実際はより広い世代で『怖じ気づく』『ビビる』といった意味で使われているのが実情です。

類語表現は?

『ひよる』の本来の意味合い(傍観する・静観する)における類語には、『勝ち馬に乗る』『長いものに巻かれる』などがあります。どちらも状況を一歩引いたところから確認し、自分の有利になるように行動するといったニュアンスを持つ表現です。

一方、多くの世代に使われている意味(怖じ気づく)の類語としては、『戦慄する』『血の気が引く』という表現が該当します。あるいは『臆病者』のニュアンスを含んで使われるケースもあります。

『戦慄する』や『血の気が引く』は置かれた状況に恐怖心を抱き、本来すべき行動ができなくなる状況を指す表現です。ただし、他者の怖じ気づいている様子を見て、馬鹿にしたり励まして行動を促したりする際に使われる場合も多くあります。

「ひよる」の語源も知っておこう

青空と太陽

(出典) photo-ac.com

『ひよる』の意味に加え、言葉の語源も解説します。ただし、いわゆる若者言葉として使われる『ひよる』に関しては、学術的な見地において語源が判明しているわけではありません。

あくまでも一般的に広く認識されている説にすぎないという点は覚えておきましょう。

本来の「ひよる(日和る)」の語源

本来の『状況を傍観する』といった意味の『ひよる(日和る)』は、もともと『日和見』を動詞にしたものです。

日和見とは、もともと天気や気候などの状態を観察することを意味し、江戸時代には日和見のために専用の場所が設けられていました。航海のコースを検討するため、風の向きや潮の動きなどを推し量る行為を意味していたのです。

その意味が転じて、周囲の状況を観察した上で自らが有利になるよう動く行為を『ひよる(日和る)』と言うようになりました。

後に、自分の意思を曲げてでも利益になる方向に動くといったように、若干ネガティブな意味合いが加味されるようになりましたが、もともとは『状況をよく観察する』というニュアンスが強かったようです。

怖じ気づくという意味の「ひよる」の語源

『怖じ気づく』『ビビる』といった意味の『ひよる』の語源には諸説あります。ただ、ちょっとしたことで怖がってしまう『ひ弱』な人間の様子から、『ひ弱になる』が転じて『ひよる』になったとする説が有力とされているようです。

また、1960~70年代の学生運動が盛んだった頃の文化が、若者が使う『ひよる』のニュアンスに関係しているともいわれます。どっちつかずの立場を取っている人をあおるのに『ひよる』という言葉が使われたことから、怖じ気づく様子を表すようになったという説です。

いずれも学術的な裏付けがあるわけではないため、確実な語源であると断言はできません。しかし、数十年にわたって長く使われ続けたことで、現在では一般的に『怖じ気づく』『ビビる』といった意味で、広く使われるようになったのは間違いないでしょう。

「ひよる」の使い方と例文

作文を書く

(出典) photo-ac.com

自分なりに例文を考えてみることで、言葉をスムーズに使えるようになるでしょう。『ひよる』の具体的な使い方を、本来の意味で使う場合・怖じ気づくというニュアンスで使う場合に分けて紹介します。

本来の意味での使用例

本来の意味での『ひよる(日和る)』『ひよった(日和った)』の使い方としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 日和ってA社の提案ばかりを受け入れていたので、B社の担当者からひんしゅくを買っている
  • あの政治家は、いかなる政局にあっても常に日和った態度を取るので、政界では『風見鶏』と呼ばれていた

いずれも周囲の状況や動きを一歩引いたところで確認し、自分に有利なように動く者に対して使っています。必ずしもネガティブなニュアンスを含むわけではありませんが、一般的には批判的な意味を込めて使われるケースが多いでしょう。

怖じ気づくという意味の「ひよる」の使用例

『怖じ気づく』『ビビる』といった意味での『ひよる』の例文としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 彼は私たちの前では口が悪いが、部長を前にするとひよって何も言えなくなる
  • 彼女はプロゲーマーなのに、ホラー作品をプレイするとどうしてもひよって下手になってしまう

いずれも状況に怖じ気づいてしまい、本来すべき(立場や状況によって推奨される)行動が取れなくなる様子を指しています。中には自分の行動を反省する意味で使う人もいますが、相手を批判したり馬鹿にしたりするために使う人が多い表現といえるでしょう。

構成/編集部

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