デスクトップPCに求められるものは性能だけではないはずだ。
何しろ、部屋の隅に据え置くものである。そして大抵のデスクトップPCは、部屋に置いたら目についてしまうほど巨大な箱だ。
こんな代物を部屋に置くのは嫌だ! という人もいるだろう。
そこでミニPCの出番だ。片手で持ち上げられるだけのサイズの筐体は、いざとなれば机の引き出しに収納できる。もちろん、使用中も部屋の景観を崩すことはない。
ASUSが発表した『ASUS Mini PC PN63-S1』は、1kgにも満たない筐体にも関わらずIntel Core iプロセッサーを搭載している。
今回はこの最上位版、11世代Intel Core i-7を搭載した『PN63-S1-S7094AD』について解説していきたい。
PCの小型化を阻害する「冷却装置」
筆者の手元に、大きな細長いダンボール箱が届いた。発送元はASUS。もちろん、心当たりはある。
今回の記事のために、メーカーから『ASUS Mini PC PN63-S1』の貸出をお願いしたのだ。
早速開けてみる。しかし、実際の製品はダンボール箱よりも遥かに小さい。
いささか過度な梱包ではないかと思ってしまうくらいに、『ASUS Mini PC PN63-S1』は小さい。
重量は先述の通り約0.9kg、サイズは幅130mm×奥行き120mm×高さ58mmに過ぎない。筆者が折り畳みナイフを入れている茶箱と、ほぼ同じサイズ感だ。
メモリは16GB(最大64GBまで拡張可能)、ストレージは256GB。そしてプロセッサーはIntel Core i7-1165G7、これはIntel Iris Xe Graphicsという内蔵グラフィックを持っている。
苦笑してしまうほどに高スペックのPCだ。
もちろん、一般的なデスクトップPCであればこの程度のスペックは珍しいものではない。
が、プロセッサーというものは高性能であればあるほど消費電力が大きく、発熱も起こしやすくなる。
つまり優秀なプロセッサーには優秀な冷却装置が欠かせないのだ。
しかし大掛かりな冷却装置を搭載すると、当然だが筐体も大きくなる。
筆者はこれまでにもミニPCのレビュー記事を@DIMEで書いてきたが、それらはいずれもCeleronもしくはPentium搭載機である。
つまり省電力のロースペックプロセッサーだ。
もっとも「ロースペック」と書いてしまうと、かなりの誤解を生んでしまう。最近のCeleronはセカンドPCとしてなら優秀なパフォーマンスを見せてくれる。
が、それ以上の性能を求めるとなると強力な冷却装置が必要になり、それに伴って本体サイズも大きくなり、それが嫌ならプロセッサーをCeleronにしなければ……という堂々巡りが発生してしまう。
普段使いなら十分過ぎるスペック
以上の理由から、『ASUS Mini PC PN63-S1』には強力な冷却ファンが内蔵されている。
この冷却ファンがなければ、プロセッサーは簡単に熱暴走を起こしてしまう。
逆に言えば、筆者がこれまで取り上げたミニPCは『ASUS Mini PC PN63-S1』よりも大きな冷却ファンを必要としなかったからこそ筐体を小さくできたのだ。
11世代Intel Core i-7を採用したPCで、1kgを切るということ自体が開発者の努力の賜物である。
実際に使ってみよう。モニターは筆者の自宅にある15年もののテレビ。液晶に力を入れていた頃のシャープ製だ。
HDMI端子があるから、PCとの接続には不自由しない。『ASUS Mini PC PN63-S1』からの映像もはっきり映し出してくれる。
このPCで物書きの仕事をし、その合間に動画を観て、ついでにSteamからダウンロードしたゲームもやってみる。
Intel Iris Xe Graphicsのおかげで、激しいアクションのある3Dゲームでない限り支障は殆どない。
てか、デスクトップPCはこのくらいのパフォーマンスで十分じゃないの?
ノートPCとの使い分け
現状、筆者はノートPCを2台所有している。そのうちの1台はグラフィックボードを搭載したゲーミングPCだ。
このゲーミングノートPCは、かなり重い。16.1インチ画面で、重量は約2.5kg。
グラフィックボードはそれを冷やすための冷却装置も内蔵されているから、どうしても重くなってしまうのだ。
複雑な処理を必要とするゲームはこちらに任せて、仕事やネット検索、動画視聴は『ASUS Mini PC PN63-S1』を起動させる……という具合に使い分けてもいいはずだ。
記事執筆日が発売日
この記事の執筆は2022年7月22日。
そしてPR TIMESのプレスリリースをよく見れば、『ASUS Mini PC PN63-S1』の発売は何と今日ではないか。
発売日前に実機に触ることができたというのは、ガジェットライターにとってはこの上ない光栄でもある。
そしてこの『ASUS Mini PC PN63-S1』の登場をきっかけに、時代は「高性能ミニPC競争」へと動くのではないかと筆者は思案している。
<製品スペック>
搭載CPU:インテル(R) Core™ i7-1165G7 プロセッサー
動作周波数:2.8 GHz (最大ブーストクロック 4.7GHz)
キャッシュメモリ:12 MB Intel(R) Smart Cache
搭載メモリ:16GB(8G×2)(最大64GB) / SO-DIMMスロット×2(空きスロット×0)
機能:Intel(R) Iris(R) Xe Graphics (CPU内蔵)
搭載ストレージ :PCIe 256G×1
インターフェース
前面:USB 3.2 Gen2 Type-C×1、 USB 3.2 Gen2×1、 オーディオジャック×1
側面:ケンジントンロック×1、 3in1カードリーダー×1(Micro SD/Micro SDHC/Micro SDXC)
背面:Mini Display Port 1.2 ×1、 USB 3.2 Gen2 ×2、 HDMI 1.4 Port ×1
DP 1.4 ×1 、 RJ45 2.5G LAN ×1、 DC-in ×1、 パッドロックリング×1
ネットワーク機能:10/100/1000/2500 Mbps
無線LAN機能 : Wi-Fi 6
Bluetooth機能 : Bluetooth(R) 5.2
搭載OS :Windows 11 home
消費電力:最大約90W
VESAマウント : 対応
サイズ :幅130mm×奥行き120mm×高さ58mm
質量 :約0.9kg
価格 :オープン価格
製品ページ : https://www.asus.com/jp/
取材・文/澤田真一