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毎日使っているバッグの中に見知らぬGPS装置を発見…これは犯罪行為に当たる?

2022.07.25

2022年7月に、愛知県警の捜査車両にアップル製の通信機器「AirTag(エアタグ)」が取り付けられていたことが報じられました。

AirTagのようなGPS機能を活用した装置を、他人の持ち物へ勝手に取り付けた場合、何らかの犯罪が成立するのでしょうか?

また、自分の持ち物にGPS装置が取り付けられていることを発見した場合、どのように対処すべきなのでしょうか?

今回は、他人の持ち物へ勝手にGPS装置を取り付ける行為について、成立する犯罪や対処法などをまとめました。

1. AirTagの仕組み

「AirTag」は、自分の持ち物に取り付けることで、その位置を探すことができるアップル社の製品です。

AirTag自体にGPS機能は内蔵されていませんが、最寄りに存在するiPhoneがBluetooth機能を通じてAirTagを検知する仕組みが採用されています。

たとえば、部屋のどこに物を置いたか忘れてしまった場合、その物にAirTagが付けてあれば、自分のiPhoneを使って位置を探すことができます。

また、どこかにAirTagを付けた持ち物を落としてしまった場合には、最寄りのiPhoneがBluetooth機能でAirTagを検知します。

その後AirTagを検知した旨と、iPhoneのGPS機能により取得された位置情報がiCloudへ送信され、さらにAirTagの所有者のiPhoneへ検知の旨が通知されます。

2. 他人の持ち物へ勝手にGPS装置等を取り付けたら犯罪?

他人の持ち物へ勝手にGPS装置等を取り付けた場合、ストーカー規制法違反・住居侵入罪・器物損壊罪などの犯罪に該当する可能性があります。

2-1. 恋愛感情等による場合は「ストーカー規制法違反」

ストーカー規制法2条3項では、他人の持ち物へ勝手にGPS装置を取り付けて、位置情報を取得する行為を禁止しています。これを「位置情報無承諾取得等」と言います。

同一の者に対して、位置情報無承諾取得等を繰り返した場合には「ストーカー行為」に該当し、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます(同法18条)。

ただし、位置情報無承諾取得等に該当するためには、以下の要件を両方満たすことが必要です。

①特定の者に対する恋愛感情やその他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行うこと
②位置情報を記録または送信する機能(GPS機能)を有する装置であること

①に挙げるもの以外の目的、たとえば同業他社に対する偵察や、犯罪捜査を免れるなども目的によってGPS装置を取り付けた場合には、ストーカー規制法違反には該当しません。

またAirTagのように、それ自体にGPS機能が組み込まれていない装置は②を満たさないため、他人の持ち物へ取り付けても、ストーカー規制法違反には該当しない点に注意が必要です。

2-2. 取り付けのために不法侵入した場合は「住居侵入罪」

GPS装置等を取り付けるために、他人の住居・邸宅・建造物に侵入した場合には「住居侵入罪」が成立し、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」が科されます(刑法130条前段)。

所有者や看守者の承諾を得て立ち入ったとしても、GPS装置等を取り付けるという目的を秘していた場合は、正当な理由のない侵入として住居侵入罪が成立します。

2-3. 取り付けの際に物を壊した場合は「器物損壊罪」

GPS装置等を取り付ける際に、他人の持ち物を破損した場合には「器物損壊罪」が成立します(刑法261条)。

器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」です。

2-4. AirTagを忍び込ませる行為は、犯罪の責任を問いにくい

ストーカー規制法違反・住居侵入罪・器物損壊罪のいずれにも該当しない場合、他人の持ち物へGPS装置等を取り付ける行為について、犯罪の責任を問うことは難しいと考えられます。

特に、AirTagを勝手に他人の持ち物へ忍び込ませる行為については、以下の理由から、犯罪に該当しない形で実行できてしまう可能性が高い状況です。そのため、今後の法改正等による対応が期待されます。

・GPS機能を搭載していないため、位置情報無承諾取得等(ストーカー規制法違反)に当たらない
・公共の場で他人のカバンに忍び込ませるなど、住居侵入や器物損壊を伴わない形での実行も可能

なお、犯罪に該当しないとしても、位置情報を勝手に取得されることに伴う精神的苦痛について、被害者は加害者に損害賠償(慰謝料)を請求することは可能です(民法709条)。

3. 持ち物の中にGPS装置等を見つけたら警察に相談を

GPS装置等が自分の持ち物に勝手に取り付けられていたり、カバンに入れられたりするのを発見した場合、速やかに警察へ相談することをお勧めいたします。

警察が捜査できるのは犯罪に該当する場合に限られますが、GPS装置等を発見した経緯を相談すれば、捜査に向けた何らかのきっかけが見つかる可能性があります。

また、現時点では犯罪に該当しないとしても、今後の犯罪被害の発生を防ぐために、警察の協力を得ることができる場合が多いです。

自分の持ち物の中に、GPS装置等の不審物を発見した場合には、できるだけ早めに警察へご相談ください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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