運動会や部活動など、学校での活動中に子どもが熱中症になった場合、学校側に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
必要に応じて弁護士のサポートを受けながら、学校側の対応に問題がなかったかを検証したうえで、法的根拠に基づく損害賠償請求を行ってください。
今回は学校で発生した熱中症について、学校側の損害賠償責任に関する法律のルールや、過去の裁判例をまとめました。
1. 行事・部活動中の熱中症に関する学校側の責任
学校で発生した熱中症について、学校側に何らかの注意義務違反(過失)が認められる場合、学校側は生徒に対して損害賠償責任を負います。
学校側が負う損害賠償責任の法的根拠は、国立・公立学校か私立学校かによって以下のとおり異なります。
1-1. 国立・公立学校の場合|国家賠償責任
国立の小学校・中学校・高等学校の場合は国、国立大学の場合は国立大学法人、公立学校の場合は設立した自治体が、被害生徒やその遺族に対する国家賠償責任を負います(国家賠償法1条)。
その一方で、公務員である教諭などは、被害生徒や遺族に対する個人責任を負いません(最高裁昭和30年4月19日判決)。
1-2. 私立学校の場合|不法行為責任・使用者責任
私立学校の場合、注意義務に違反した者(教諭など)が、学校で熱中症に罹った被害生徒やその遺族に対して、不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法709条)。
また、学校の運営者である学校法人などにも、被害生徒やその遺族に対して、使用者責任に基づく損害賠償が義務付けられます(民法715条1項)。
2. 熱中症に関する学校側の責任を認めた裁判例
学校で熱中症に罹って死亡した場合や、重篤な後遺症が残った場合には、特に高額の損害賠償を認めた裁判例が複数存在します。
①東京高裁平成6年10月26日判決
県立高校の相撲部員が、練習中に熱中症による急性心不全を発症して死亡した事案です。
裁判所は、本人が練習をやめたがっていたにもかかわらず、顧問教諭が理由も聞かずに練習を続行させ、倒れた後も日向のグラウンドに寝かせておいたなどの行動につき注意義務違反を認定し、県に3,600万円余りの損害賠償を命じました。
②静岡地裁沼津支部平成7年4月19日判決
私立高校のラグビー部員が、練習中に熱中症による多臓器不全を発症して死亡した事案です。
裁判所は、本人の体調不良を認めた時点で直ちに休ませず、水分を補給させるなどの措置を怠ったラグビー部監督の注意義務違反を認定し、学校側に5,000万円余りの損害賠償を命じました。
③大阪高裁平成27年1月22日判決
公立高校のテニス部員が、練習中に熱中症で倒れて心肺停止に陥り、低酸素脳症を発症して重度の後遺症を負った事案です。
裁判所は、
・日差しが強くなりやすい時間帯の練習であること
・定期試験の最終日で睡眠不足の可能性があること
・本人の真面目な性格
などを考慮して、顧問教諭には部員の健康状態に配慮した指示・指導(練習内容の軽減・水分補給の指導など)を行う義務があったと指摘しました。
そして、これらの指示・指導を怠ったことを理由に注意義務違反を認定し、県に対して2億3,000万円余りの損害賠償を命じました。
3. 熱中症に関する学校側の責任を否定した裁判例
その一方で、学校における熱中症への罹患につき、学校側の責任を否定した裁判例も存在します。
①盛岡地裁昭和60年2月21日判決
私立高校の野球部員が、ランニング中に熱中症に罹って死亡した事案です。
裁判所は、事故発生当時の天候が小雨・曇りで25度前後であったことや、事故発生時までに本人に変わった様子が見られなかったことなどを考慮して、学校側の注意義務違反を否定しました。
さらに裁判所は、高校1、2年生の判断能力は「成人に準ずる程度」に達していると指摘し、何らかの疾病・事故の発生を予見できるような特段の事情がない限り、部長や監督が練習の模様を逐一監視することまでは要求されないと判示しました。
②大阪高裁平成6年6月29日判決
私立高校のサッカー部員が、合宿中に熱中症に罹り、その後腎不全によって死亡した事案です。
裁判所は、
・練習中の休憩や給水が自由であったこと
・厳しい練習があったとは認められないこと
・本人から体調不良の申出がなかったこと
・本人は高校1年生であり、自分の健康状態について医師の診察を要するか否かの判断ができる年齢であること
・他の合宿参加者の中にも、顧問教諭に申し出て医師の診察を受けた者があり、本人もそのことを知っていたとみられること
などを指摘して、学校側の注意義務違反を否定しました。
いずれの裁判例についても、過酷で厳しい部活指導が横行していた時代背景に鑑みると、高校生の判断能力を高く評価しすぎているように思われます。
ただし少なくとも、熱中症について学校側の責任が認められるかどうかについては、個々の事情に応じて結論が異なる点に注意が必要です。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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