子供の頃から板書やメモというものが一切できなかった筆者に「手書きの可能性」を教えてくれたのは、大手電子機器メーカーに務めるHさんである。その筋の有名人だ。
学校の先生は、文字の書き方から改行の間合い、そしてノートに書く文言まで事細かく生徒に指導した。
それが筆者を手書き嫌いにした一因でもあったのだが、Hさんはそんな筆者に「手書きは自由で構わない」ということを教えてくれたのだ。
思い立ったことを、自分の好きなフレーズを使いながら手書きで記録する。そして、そのようなことができるガジェットは高確率で売れる。
今回解説する『HUAWEI MatePad Paper』は、手書き派のためのE inkタブレットである。
まるで本物の紙
紙のような質感が特徴のE ink画面。これを搭載したタブレットで読書をすると、だんだんと本物の書籍を読み進めているような感覚に陥ってしまう。
ファーウェイにとっては、『HUAWEI MatePad Paper』が初めてのE inkタブレット。搭載されているのは10.8インチのHD解像度ディスプレイだ。これはE inkタブレットにしてはかなり大きな部類のはず。
そして『HUAWEI MatePad Paper』には、Bluetoothで接続できるスマートペンシル『HUAWEI M-Pencil』が付属している。これを使って、タブレットに手書きのメモを記録できるという仕組みだ。
早速使ってみよう。
『HUAWEI M-Pencil』を画面の上に滑らせてすぐに感じたのは、「本物の紙との類似性」である。
感覚を文章で表現するのは非常に難しいが、確かに書きやすい。この質感は、まさに紙のようだ。
しばらく筆を進めていくと、何だか記述自体が楽しくなってしまう。決して綺麗とは言えない筆者の字体も、『HUAWEI MatePad Paper』のディスプレイが忠実に映し出す。
反応速度も申し分ない。4,096段階の筆圧感知の賜物か、人間の反射神経では遅延を一切感じられないほどだ。
「書き込み族」のためのタブレット
この『HUAWEI MatePad Paper』にPDF資料を取り込み、それにあとから手書きするという用途も見出だせるはずだ。
他人からもらった資料に、自分でいろいろと書き込まなければ気が済まない人は確かに存在する。
筆者自身、そのような同業者を知っている。曰く、「そのほうが資料の内容を把握できる」とのこと。
そのような「書き込み族」の琴線に触れるような機能が、『HUAWEI MatePad Paper』には詰まっている。
『HUAWEI M-Pencil』は『HUAWEI MatePad Paper』の本体に磁石で設置できる仕組みで、しかもその間に電力をチャージする。
タブレット側の電力が完全に枯渇しない限り、いつでもどこでも気ままにメモを取ることが可能だ。
これ、取材にも使えるんじゃないか?
筆者は専業ライターだから、どうしても「この製品は自分の稼業に利用できるのでは?」という見方で考えてしまう。
取材の最中にメモを取る時にこれを使う……というわけではない。そもそも筆者は、インタビューの時もメモというものを一切取らない方針を貫いている(でないと取材相手の表情を見ることができない)。
では、どのような場面で『HUAWEI MatePad Paper』を利用するか。
たとえば今日のスケジュールを簡単に書き込み、「今日はこの時刻に待ち合わせをする」ということを再認識するために使ってみる。
記憶力が優れているとは言えない筆者だから、スケジュールを手で書き起こすことによって「予定の失念」を防止するのだ。
読書にも最適
また、この『HUAWEI MatePad Paper』にKindleのアプリをインストールして電子書籍を読むことも、もちろんできる。
筆者の場合はインドネシア語の単語帳を、『HUAWEI MatePad Paper』で読んでいる。
最後にインドネシアから帰国したのは2020年2月20日だが、読者諸兄諸姉もご推察の通りこれはギリギリのタイミングだった。
日本にも新型コロナウイルスが上陸し、港も空港もそろそろ封鎖されるのではと皆が大騒ぎしていた頃である。
そしてそれ以来、筆者は海外へは渡航していない。
そのせいで、せっかく覚えたインドネシア語もすっかり忘れてしまった。
本当は現地に行って新聞や雑誌を読むのが一番いいのだが、まあ今年いっぱいは国内でくすぶるしかないだろう。
が、ただただくすぶっているわけにもいかない。ここは電子書籍でインドネシア語を覚え直し、いずれ訪れる渡航の日に備えよう。
価格に見合う付加価値
『HUAWEI MatePad Paper』は、ファーウェイ公式ストアにて6万9,800円(7月21日現在。『HUAWEI M-Pencil』付属の場合)の価格で販売されている。
これは安い! 今買わないと損! と言える価格ではない。
少なくとも筆者と同程度の経済力の人から見れば、7万円は覚悟のいる買い物。
が、それに見合うだけの付加価値は十分に有していると断言することもできる。
手書き派にとっての良き相棒、それが『HUAWEI MatePad Paper』である。
【参考】
HUAWEI MatePad Paper
取材・文/澤田真一