動物園・水族館・植物園を専門に撮影取材している動物園写真家の阪田真一(写真家/ライター)が、そこに住む生きものをはじめ、施設の取り組みや、それに関わる人達の魅力を紹介。
沖縄旅行と言えばマリンリゾートにゴルフ、いや沖縄の郷土料理を食べ歩くグルメツアーや沖縄ならではの観光スポット巡りでインスタ映え写真を撮り歩くなど、様々な沖縄の過ごし方を満喫していることだろう。
今回は嘉手納米軍基地や、リゾート地区でもあるアメリカンビレッジ、大型ショッピングモールのライカムなどの近い場所に位置する動物園。『沖縄こどもの国』を新たな観光スポットとして案内しよう。
入園して見つけたらゲットするべき「キリン食パン」
突然だが、キリン好きにはたまらない物がメインゲート横の売店で売られている。
それは、キリンの模様を再現した「キリン食パン」。
小ぶりな食パンではあるが、そのディテールはキリン推しであれば歓喜するであろう。
カボチャのピューレで色づけられた黄色にココアパウダーで色づけられた黒い斑点模様。これほどまでに可愛らしい食パンがあっただろうか。今回、その味に関してもお伝えしたいところではあるが食パンをぶら下げながら取材するというのも大変なので、帰りに買おうと思っていた。
しかし閉園近くまで取材しており、園内を巡って売店まで戻ってきたときにはすでに完売。なぜ取り置きしてもらわなかったのかと一番の後悔であったことは、園の広報担当者には秘密である。次回来園した際は「キリン食パン」を入園直後にゲットして「キリン食パン」抱えて園内を巡るつもりだ。
「キリン食パン」をゲットしたい場合は、事前に園に連絡しておくか(注文出来るかは要確認)、入園直後に売店で在庫を確認して欲しい。目の前にそれがあったのならば即購入しておくことをお勧めする。
沖縄そばから、定番のブルーシールのアイスクリームまで
こちらも、メインゲートをくぐると右手で営業している、「パーラーウェルカム」。沖縄そばをはじめ、動物園ならではの軽食メニューがずらり。横には最近本州でも見かけることが多くなったブルーシールのアイスクリームが並んでいる。これだけでも沖縄に来たという気分を盛り上がるのではないだろうか。
「琉球弧(りゅうきゅうこ)」に生息する固有種を知る
「琉球弧(りゅうきゅうこ)」とは、九州南部に位置する種子島あたりから台湾の手前の与那国島までに連なる弧状に連なる島々のことを言う。その島々は、「北琉球」「中琉球」「南琉球」と3つに分かれており、ここ「沖縄こどもの国」がある沖縄本島は「中琉球」に位置する。
「沖縄こどもの国」では亜熱帯海洋性気候に属する「琉球弧」の一年を通して温暖な気候で暮らす生きものたちを数多く見ることが出来る。今回はその一部を紹介しよう。
琉球弧に生息する生き物を展示しているエリアに足を踏み入れると、まず目につくのは「オリイオオコウモリ」である。現地では(カーブヤー)と名前で親しまれている。多くのコウモリを昼間に見る機会もないため、「オリイオオコウモリ」の表情や仕草まで見えると、とても愛らしく思えてくる。しかなぜ逆さまで生活が出来るのだろう。不思議な生き物である。
つづいては、「オリイオオコウモリ」の展示の向かいにいる、「カンムリワシ」。日本では、石垣島と西表島に留鳥する種である。留鳥(りゅうちょう)とは一年中その生息域にとどまって定住する鳥のことを言う。
実は「カンムリワシ」は絶滅危惧ⅠA類似分類されている、現存する種の中でもっとも絶滅の恐れが高い生きものなのだ。その死因のひとつとしては「ロードキル」である。それは、道ばたでひかれた小動物と食べているところを自分自身も車にひかれてしまったり、また飛行中に車とぶつかったりという事故が多いのだそうだ。
実際に、この場で生きている「カンムリワシ」をみて交通事故と生きものとの関係について親子で話せる切っ掛けにもなるだろう。
[カンムリワシ](石垣島・西表島を中心にした八重山諸島に分布)
「オリイオオコウモリ」の横に展示されているのは、「アカショウビン」。とても朱色が美しく、小柄なずんぐりした胴体に艶やか赤いくちばしが一際目をひく。
おおきな展示スペース内でこのような小さな撮りを見つけるのはとても難しい物ではあるが、その用紙の鮮やかさから、比較的見つけやすく、ひとたび見つけるとその少しの動作自体が愛らしく、しばらくその場で観察してしまう人も多い。
[アカショウビン]達がいたエリアを抜けて暫く進むと、[ハナジカ]がたたずむ運動場が見えてくる。
[ハナジカ]は漢字で書くと、ウメにハナと書いて梅花鹿(はなじか)とされている。別名、台湾ジカとも呼ばれており、主に台湾に生息する鹿である。しかし目の前で真顔でエサの草をハムハムしている姿を見つめているとコチラは何も考えず見ていられるのではないだろうか。何故、あんな真顔なのかと思いながらじっと見ているとジワジワと可笑しくなってしまう。
このエリアでは、素通り出来ないのが「やくしまざる」である。彼らは日本の最南端に生息するニホンザルである。「ヤクシマザル」の展示場は上からもしたからも、色んな角度から観察の出来る構造となっており、彼らの生活の様々なシーンを見ることが出来る。その生活を覗いていると自分たちの生活に似たシーンをよく見かける。しかし、その生活スタイルはとても穏やかで愛情にあふれていることにも気づかされる。
沖縄文化と動物達の特徴を伝える展示
琉球弧の生きものを紹介するエリアを抜けるとそこは、家畜ゾーン。いわゆる沖縄で家畜として飼われている生きものたちを実際に見て学ぶことが出来るエリアだ。しかし、その紹介の仕方が衝撃的なのだ。
今回一番驚かされた紹介板はコチラの「シマヒージャー」である。その紹介文を読むと「ウチナーソウルフードアニマル」…!なんともストレートな紹介の仕方。逆に気持ちがいい。水族館で魚たちを見て「美味しそう」とつぶやく人は大勢いるだろうが、動物園で動物達を見て「美味しそう」とつぶやく人はいないだろう。ましてや食べるものとして見ている人もいないであろう。そこでこの紹介板である。
見た瞬間に「ハッ!」とさせられる。沖縄の郷土料理「ヒージャー汁(山羊汁)」は沖縄観光で食べてみたいフードの一つでもあるが、実際に動物園にきて、彼らを見ているときに、「ヒージャー汁」を思い浮かべる来園者もいないだろうが、この紹介板が見事にソレを紐付けてくれる。生きものの紹介だけにとどまらず、沖縄の食文化に食育までもカバーするとは「沖縄こどもの国」は素晴らしい見せ方の提案をしている。
ちなみに、このような紹介板だけではなく、担当飼育員さん達による、手書きの特徴を伝える紹介板も各所で見られるから、これを探して読むだけでも面白い。是非写真に納めて自分だけの図鑑をのようにして、帰りの飛行機の待ち時間にでも改めて読んでみて欲しい。
実は、「沖縄こどもの国」では、定期的に動物たちの特徴を自分で調べてファイリングして自分だけのどうぶつ図鑑を作るイベント「おでかけワンダーミュージアム『どうぶつ探偵アニマルン』」が開催されている。
これは、園内にある、「ワンダーミュージアム」の企画で沖縄の家族連れに大人気のイベントとなっている。
一回だけの参加でもとても楽しい思い出作りにもなるので、来園する際は園のTwitterなどのSNSをチェックしておくと良いだろう。
沖縄県の天然記念物「琉球犬(りゅうきゅういぬ)」
今回の取材で私の心をギュッと掴んだのは、「琉球犬(りゅうきゅういぬ)」の「ハナちゃん」である。
実はこう見えて縄文時代から日本に生息する縄文犬の一種であり、沖縄の在来種として狩猟犬として活躍していたという。また、1995年沖縄県の天然記念物に指定されており、1990年に設立された「琉球犬保存会」が「琉球犬」の保全活動を行っている。
「ハナちゃん」はとても警戒心が強く、見知らぬ人には警戒してすぐ吠える。(私も吠えられました)
しかし、取材させて頂く中で飼育員さんに「琉球犬」ことや「ハナちゃん」の性格などを教えてもらい、少しづつ「ハナちゃん」との距離を縮めたのだが、やはりすぐ側までは寄っては来てくれず。それでもカメラ目線は沢山してくれたので、この記事でご紹介出来なかった写真は、私のTwitterの方でご覧頂くこととしよう。
世界の動物達にも会える「里山の迷宮」「アニマルフィールド」「ライオンフィールド」
ここからは世界のアニマル達と出会えるソーンだ。このエリアも見応えがある。高低差もかなりある入り組んだ展示エリアは動物達の様々な様子を見ることが出来る。
まずは、「マレーグマ」である。彼は、実は以前ご紹介した「天王寺動物園」からお引っ越ししてきた「マーズ」である。この取材はまだ彼が引っ越してきたばかりの時期に行った物でこのときはまだ新しい環境に慣れる訓練をしているようであった。また飼育員さん達の試行錯誤の積み重ねで、現在は展示エリアもずいぶん様変わりして、「マーズ」も居心地の良さそうな様子が見られるそうだ。
四国から本州などに生息している。少し山奥に行くと時折見かけることもある少し身近な生きものではあるが、逆に沖縄では出会うことの出来ない動物である。絵本でもよく登場するキツネを沖縄で実際に見ることが出来るのも動物園の良さである。
「沖縄こどもの国」では2頭のジャガーが飼育されており、どちらも間近で動く姿が見ることが出来る。ガラス越しに見られる展示と檻越しに見られる展示の二種類が用意されている。ガラス越しの展示はジャガーがとても近くまで歩いてきてくれるので実際の大きさを目の当たりにして驚いて泣いてしまう子供もいた。檻越しの展示は実際にジャガーの匂いや息づかいを感じられる展示となっている。(現在ジャガー達は、新しい住まいが建築されゾウの展示エリア近くにお引っ越ししている)
「里山の迷宮」エリアから東第2ゲートに向かって下って行くとそこは「アニマルフィールド」である。
そこではカバの親子に遭遇する。モモエ(母)と水美(娘)がプールの中で佇んでいた。プールの上はうっそうと茂った緑に覆われ、密林としとかしている。その光景がとても穏やかで、密林に取り残された遺跡に住み着いたカバたちというタイトルをつけてもおかしくない程に雰囲気のある光景である。是非この緑の空間の心地よさをカバの親子を眺めながら感じてもらいたい。
「カバの親子」に別れを告げ、坂道を更に下って行くとソレまで茂っていた頭上の木々はひらけて、青空が広く広がる。そこには遠くに沖縄の街を背にしたキリンの運動場が現れる。2021年3月にキリンの赤ちゃんが誕生。
母子は同じ運動場です後しており、父は別の運動場で過す。はしゃぐ赤ちゃんキリンの相手をしている母キリン。その光景を離れた場所から見守る父キリン。のどかな光景である。
キリンの先には、ゾウの展示場。周辺にはハイビスカスの花が植えられており、沖縄の動物園らしさを演出している。現在ここで暮らす象は2頭。琉人(♂)と琉花(♀)。2015年3月この2頭の間に沖縄で初の象の赤ちゃんの琉美(♀)の誕生となった。しかし「ゾウの血管内皮ヘルペスウィルス」という病で2018年3月この世を後にした。今でも命日を偲ぶファンは多い。沖縄でゾウが見られるのはこの「沖縄こどもの国」だけである。
「アニマルフィールド」を通ってきて、順路を進むと見えてくるのはふれあい広場横の「ライオンフィールド」である。多くの動物園では開けた平面での展示が多い中、ここでは高低差のある立地を活かした構造物として建築されておりあたかもライオンの群れと、ホワイトライオンのペアが同じスペースで飼育されているように感じる。
面白いほどに、色んな角度からライオンたちを観察出来るのだ。(おや?このフレーズここで3回目かな。)
「沖縄こどもの国」の展示の特徴は立体的な建造物による様々な場所から、様々な状態の動物達を観察出来るよう工夫されていることが最大の魅力なのだ。
動物だけじゃない。科学と創作の探究「ワンダーミュージアム」
「沖縄こどもの国」の魅力は、動物達だけではなく、なんと園内にある「ワンダーミュージアム」では科学や創作について学べる施設が存在する。(入園料とは別途入館料が必要)
入り口を入ると、そこには音に反応して色とりどりのLED球が光り、音の強弱など音の質によってその表現が自在に変化する「ワンダービジョン」。これは「ワンダーミュージアム」の中央の吹き抜けに設置されており巨大である。
これだけでも、これから先に進むにつれどのような物が体験出来るのかとわくわくしてしまう。「ワンダーミュージアム」は各フロアは「きづきの森」「にぎわい広場」「光のアトリエ」「ボール・サーカス」「そうぞう工房」の5つの展示エリアで構成されている。それぞれにいくつもの体験コーナーが設けられており、その体験を通して「なぜ?」「どうして?」という興味や探究心を刺激してくれる。その仕組みを知れば知るほどその仕組みが面白くもなり、また体験したくなるのだ。この「ワンダーミュージアム」内での滞在時間は長く、ここに足繁く通うファンも多く居るそうだ。
[口の形を再現した発声の実験と影絵で遊ぶプロジェクションマッピング]
子供達のアイデアを形にする取り組みも「ワンダーミュージアム」の魅力の一つである。
これは、子供達が「こんなオモチャがあればいいな」を書き込み「そうぞうポスト」に投函した物の中から選ばれた物を実際に館内の工房で常駐の職人さんが形にしてくれるという物である。
こういったアイデアはすべてファイリングされており、誰でも自由に閲覧することが出来る。
そのアイデアの数にびっくりする。大人の皆さんもアイデアに困ったときにそのファイルをめくってみてはどうだろうか。
館内でも大人気のエリアが「わじゃぶくろ」コーナー。100円で買い物袋を購入し、貸出の電卓片手にそれぞれ値段のつけられた廃材を100円分袋に詰める。それを作業スペースへ持って行き、物作りの体験をするというコーナーである。
子供達は、駄菓子屋でお菓子を選ぶ感覚で捨ててしまわれるはずの梱包材や空き箱、セロハンテープの芯など様々な廃材からイメージを膨らませて、物を形にする楽しみを体感するのだが。やはり素材を選ぶときの「何を作ろうか」「これを使ったらどんな物が出来るか」など廃材に思いを巡らすときが一番楽しいのかもしれない。
家族で沖縄旅行なら「沖縄こどもの国」が一番
丸一日掛けて巡っても、もっと動物達を見ていたい、遊んで学びたいと思わせてくれるこの「沖縄こどもの国」は地元では定番の遠足のスポットである。高台に位置するここからは沖縄市の町並みが広がる。
メリーゴーランドの屋根には「ペガサスの像」ここで記念撮影すると良いことが起こりそうな気がしませんか。
ここに訪れると何故だか懐かしいと感じる。この不思議な感覚を是非多くの人にも味わってもらいたい。
そして「また来たいね」と言える、そんな場所なのである。
【取材協力】
・沖縄こどもの国Okinawa Zoo & Museum (HP)
〒904-0021 沖縄県沖縄市胡屋5丁目7−1
TEL:098-933-4190
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【写真/記事】
・動物園写真家 阪田真一 (HP)
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構成/DIME編集部