チームスポーツは子どもたちのメンタルに良い
団体競技のスポーツを行っている子どもは、それによってメンタルヘルス上のメリットを得られ、一方、個人競技への参加ではそのようなメリットは生じない可能性があるとする論文が発表された。
米カリフォルニア州立大学フラトン校のMatt Hoffmann氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に2022年6月1日掲載された。
これまでの研究から、団体競技に参加している子どもは、スポーツを行っていない子どもよりも、メンタルヘルスが良好であることが報告されている。
Hoffmann氏らの研究からも同様の結果が得られた。しかし、これとは対照的に、テニスや体操、レスリングなどの個人競技に参加している子どもでは、そのような傾向が見られなかった。
Hoffmann氏は、「スポーツへの参加は一般的に、子どもたちのメンタルヘルスに良い影響を及ぼすようだが、全てのスポーツが同様のメリットをもたらすわけではないようだ」と語っている。
その理由を同氏は「明確ではない」とした上で、「団体競技であればパフォーマンスへのプレッシャーをチームメートと分かち合えるが、個人競技ではそれができないからかもしれない。また、保護者が子どもに期待をかけている場合、その差はより顕著なものになり得る」と推測している。
この研究の対象は、米国の9〜13歳の子ども1万1,235人。
子どもの行動チェックリスト(CBCL)という調査票により、子どもたちの不安やうつ状態を評価し、スポーツへの参加の有無、および、参加している場合は団体競技か個人競技かで、不安・うつレベルが異なるかを検討した。
その結果、全体として団体競技に参加している子どもの不安・うつスコアは、スポーツを行っていない子どもより10~19%低く、反対に個人競技に参加している子どもでは、わずかなスコア上昇が認められた。
世帯収入などの子どものメンタルヘルスに影響を及ぼし得る因子を調整しても、この結果は変わらなかった。
ただしHoffmann氏は、「この研究のみからは、団体競技への参加がメンタルヘルスを良好にし、個人競技はそうでないと断言はできない。一つの可能性としては、内向的な子どもは団体競技ではなく、個人競技に魅力を感じやすいのではないかとも考えられる。そのような解釈上の制限はあるが、団体競技への参加は友情や帰属意識を築く機会となり、協力して課題に対処するスキルを身に付けることができ、メンタルヘルスの改善につながるのではないか」と同氏は述べている。
本研究に関連して、米スタンフォード・チルドレンズヘルスで小児スポーツ医学を専門としているErin Moix Grieb氏は、テニスや体操などの個人競技に参加する子どもの間で、若年期から専門性を高めようとする傾向が強くなっていることに懸念を表している。
「個人競技を行う子どもは1年中トレーニングをしていることがあり、それによってけがのリスクが上昇する懸念がある。そして、けがを負うことは、アスリートのメンタルヘルスに問題が生じる最も強い危険因子の一つだ。また、トレーニングへの過剰な集中は強いストレスとなり、子どもを社会的孤立や燃え尽き症候群のリスクにさらしてしまうこともある」と解説する。
一方、Hoffmann氏は、「全ての子どもが成長のために、団体競技への参加を必要としているわけではない。また、個人競技への参加を保護者が思いとどまらせるべきではない」とした上で、保護者が子どもたちと一緒にスポーツを行うことを提案している。
一緒にプレーすることで、子どもがそのスポーツを楽しんでいるか否かを判断可能だという。
この提案にはGrieb氏も同意。また、「子どもはスポーツ以外の活動を通しても、社会的なつながりを作り上げていく。自分の子どもが興味を抱いていることが分かったなら、同じような興味を持つ子どもたちのグループに参加するように勧めてほしい。それによって自分が他者からサポートされていることを理解できるようになり、グループとして目標に向かうという体験が、子どものメンタルヘルス改善に大いに役立つだろう」と同氏は語っている。(HealthDay News 2022年6月2日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0268583
構成/DIME編集部