親が年金をもらう世代になり、年金に興味を持ち始めた人もいるのではないでしょうか?年金の支給日や受給するための手続き、受給を開始する前に知っておくとよい注意点などを把握して、老後の生活に備えましょう。年金の種類も併せて紹介します。
公的年金の支給日は偶数月の15日
公的年金の支給日は偶数月の15日で、15日が土日・祝日の場合は直前の平日に支給されます。公的年金には『国民年金』と『厚生年金』があり、受給できる年金の種類は職業によって違います。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
職業に関係なく受け取れる「国民年金」
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、全員が原則『国民年金』に加入しなければなりません。国民年金でもらえる年金の種類は、以下の三つです。
- 老齢基礎年金
- 障害基礎年金
- 遺族基礎年金
多くの人が老後にもらえるお金としてイメージするのは、『老齢基礎年金』でしょう。また、国民年金に加入している『被保険者』は、職業や状況などによって以下のように第1号・第2号・第3号に分けられます。
第1号被保険者 |
|
第2号被保険者 | 会社員や公務員 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている配偶者や子など |
第1号被保険者に扶養されている配偶者や、厚生年金に加入している65歳以上の受給権者に扶養されている配偶者は、第3号被保険者には該当しません。本人もしくは配偶者、世帯主が保険料を支払う必要があることに注意しましょう。
参考:
年金の支払月はいつですか。|日本年金機構
た行 第1号被保険者|日本年金機構
会社員や公務員は「厚生年金」も上乗せ
国民年金の第2号被保険者である会社員や公務員は、国民年金と同時に厚生年金保険や共済組合に加入しています。そのため、国民年金に加えて、加入したときの報酬額や加入期間に応じて計算する『厚生年金』が支給されます。
なお、公務員を対象としていた『共済年金』は2015年10月に廃止され、厚生年金に統一されていることも覚えておきましょう。厚生年金の種類も、国民年金と同じく三つです。
国民年金 | 厚生年金 |
老齢基礎年金 | 老齢厚生年金 |
障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
会社員や公務員の人は厚生年金保険や共済組合に加入している分、多くの公的年金を受給できることが分かります。
参考:
年金制度の仕組みと考え方_第3_公的年金制度の体系(被保険者、保険料)|厚生労働省
被用者年金一元化パンフ|文部科学省共済組合
私的年金の支給日は運営元が設定
私的年金は、公的年金の保障をさらに充実させることを目的とした年金制度です。私的年金は、さらに『企業年金』と『個人年金』に分けられます。主に企業や法人が運営しており、支給日は加入している私的年金によってさまざまです。
会社が運営する「企業年金」の場合
企業年金は、会社が福利厚生の目的で運営しているものがほとんどです。そのため、会社によっては企業年金がない場合もあります。
代表的な企業年金は、以下の三つです。
- 確定給付企業年金
- 確定拠出年金(企業型)
- 厚生年金基金
『厚生年金基金』は、厚生労働大臣の認可を受けた法人が設立できる企業年金です。なお、2014年4月1日以降、厚生年金基金を新設できなくなりました。
厚生年金基金の支払日は、運営元の『企業年金連合会』が支払月の1日と定めています。1日が金融機関の休業日に当たる場合は、翌営業日に支給される決まりです。支払月は受給する年金額と誕生月によって異なることも覚えておきましょう。
確定給付企業年金や企業型の確定拠出年金の支払日は、運営元である企業によって変わります。
参考:年金の支払月|連合会からの年金給付制度|企業年金連合会
個人で加入する「個人年金」の場合
公的年金や企業年金だけでは不安な人が、老後の資金形成の目的で任意で加入するのが『個人年金』です。
個人年金には自営業者やフリーランスなど、国民年金の第1号被保険者が加入できる『国民年金基金』や『個人型の確定拠出年金(iDeCo)』などがあります。
iDeCoと国民年金基金の運営者はどちらも『国民年金基金連合会』が中心です。ただ、iDeCoには証券会社や銀行などの金融機関も関わっています。そのため、国民年金基金の支給日が公的年金と同じ偶数月の15日なのに対し、iDeCoの支給日と支給月は金融機関ごとに違います。
iDeCoの支給月は、受け取り回数によって以下のように変わるのが基本です。JAバンクの例を見てみましょう。
1年の受け取り回数 |
1回 | 2回 | 4回 | 6回 |
支給月 | 12月 |
|
|
偶数月 |
その他、生命保険会社や損害保険会社・銀行などが運営する『個人年金保険』も、個人年金の一つです。
参考:iDeCoの給付(受取)について(JAバンクのiDeCo)
初めて年金をもらうときの注意点
受給できる年齢になったのに公的年金が支払われない場合は、何かしらの理由があります。思わぬ損をしないためにも、初めて公的年金をもらう際の注意点をチェックしましょう。
受給には手続きが必要
老齢年金を受給できる年齢になったからといって、自動的に公的年金が支払われるわけではありません。公的年金の受給をスタートするためには、『決定請求』と呼ばれる手続きが必要です。
国民年金のみの場合は、住んでいる地域の役所や役場にある国民年金の窓口で決定請求の手続きができます。
ただ、会社員や公務員の第2号被保険者に扶養された第3号被保険者の期間がある人は、年金事務所か年金相談センターで手続きをしなければならない点に注意しましょう。
受給資格は65歳の誕生日「前日」に発生
公的年金の受給資格が発生するのは『満65歳』とされています。満65歳と聞くと、65歳の誕生日から受給できるとイメージする人が多いのではないでしょうか?
しかし、『年齢計算に関する法律』に基づいて行われる年金の計算において、満65歳は『65歳の誕生日の前日』と定められています。つまり65歳の誕生日の前日から公的年金の受給資格が発生し、受給を開始するための決定請求ができるようになるのです。
なお、年金の受給資格が発生してから5年が経過すると、5年を過ぎた分の年金が受け取れなくなる可能性もあるので注意しましょう。
参考:参議院法制局
初回の年金は偶数月に振り込まれない場合も
公的年金が支給されるのは偶数月の15日ですが、初回は奇数月に支給される場合もあります。公的年金は、受給資格が発生した月の翌月分から受け取りが可能です。
例えば、12月に受給資格が発生して決定請求をすると、支給の対象になるのは翌月の1月分からです。スムーズにいくと1月分が2月に振り込まれますが、審査や事務処理のタイミングによっては奇数月の3月に振り込まれる場合があるようです。
年金の支払開始月は、決定請求の手続きが完了した際に受給資格の証明として交付される『年金証書』で確認できます。基礎年金番号が記載されている年金証書は、公的年金を受給した後の届出にも必要です。大切に保管しましょう。
公的年金に関する豆知識
たとえ年金の受給がほど遠い年齢であっても、年金の受給資格を満たせれば年金を受け取る老後は訪れます。年金の支給額を確認する方法や支給額を増やすポイント、年金を受給している親が死亡したときの対応もチェックしておきましょう。
支給額の目安は「ねんきん定期便」で確認できる
20歳を過ぎている人は、誕生日の前後に『ねんきん定期便』を受け取った経験があるでしょう。
ねんきん定期便は、日本年金機構が加入者の誕生月に郵送する書類です。ねんきん定期便が届けられる主な目的は、加入者に年金制度への理解を深めてもらうことです。
ほとんどの年ははがきが送られてきますが、35歳と45歳・59歳は節目の年として封書が届きます。ねんきん定期便で確認できる内容は、以下のように年齢によって違います。
50歳未満 | これまでの加入実績に応じた年金額 |
50歳以上 | 年金の見込額 |
「ねんきん定期便を紛失してしまった…」という場合には、『ねんきんネット』がおすすめです。オンラインでねんきん定期便の内容を確認できます。
繰り下げ・繰り上げ制度がある
公的年金の受給資格は、満65歳から発生するのが基本です。ただ、繰り下げ制度や繰り上げ制度を使えば受給開始の時期を変えることもできます。
繰り下げ制度では、65歳から受給が可能な公的年金を最大で10年間(75歳まで)遅らせることが可能です。遅らせた月の分、受給額は0.7%ずつ上がります。
例えば、振替加算額を除く老齢年金の額が140万円の人が、5年繰り下げて満70歳から受給する場合、年金の増額率は『0.7%×12カ月×5年=42%』です。140万円の年金額が198万8,000円にまで上がります。
逆に年金の受給を繰り上げると年金額は減ります。繰り上げ受給は60歳から可能で、1カ月ごとの減額率は0.4%です。満60歳からに5年繰り上げると減額率は『0.4%×12カ月×5年で24%』となり、本来140万の年金額のうち『100-24=76%』をかけた106万4,000円しか受け取れません。
なお、国民年金と厚生年金を受け取れる人が繰り上げ受給をする場合、両方とも繰り上げる必要があります。
参考:
年金の繰下げ受給|日本年金機構
年金の繰上げ受給|日本年金機構
受給者の死亡で「未支給年金」が発生する
年金受給者が亡くなると『未支給年金』が発生します。未支給年金は故人が受け取るはずだった年金です。亡くなった当時に生計を同じくしていた配偶者や子どもなどの遺族が申請することで、受給できます。
年金は死亡した月まで発生するため、年金支給のない5月に亡くなった場合には4月分と5月分が未支給年金という扱いです。
なお、未支給年金は受け取った遺族の一時所得と見なされます。未支給年金を受け取った年の一時所得が50万円を超える場合には、確定申告が必要になることも覚えておきましょう。
参考:
基礎編講義 未支給年金|厚生労働省
No.1490 一時所得 Q&A|国税庁
構成/DIME編集部