2022年現在、日本の消費税は10%(軽減税率8%)です。段階的に上がってきた税率を見て、「消費税は何に使われているんだろう?」と疑問に思う人も多いでしょう。消費税の内訳や使い道、税率がアップされた理由について詳しく解説します。
消費税は納める先によって使い道が違う
消費税は国に納める『国税』の部分と、地方に納める『地方税』の部分に分けられます。地方税部分は別途『地方消費税』と呼ばれ、使い道も国と地方で違うのが特徴です。消費税・地方消費税それぞれの使い道を確認しましょう。
7.8%の「消費税」は大部分が国の社会保障費に
買い物をしたりサービスを受けたりしたときに支払う消費税10%のうち、国が徴収する国税(消費税)部分は7.8%、地方消費税(地方税)が2.2%です。さらに国税部分のうち1.52%分を『地方交付税』として各都道府県に分配しています。
そのため、実際に国の財源として使われているのは10%のうちの6.28%です。6.28%の消費税は、国民の暮らしを支える社会保障の財源に充てられています。消費者が支払う消費税のうち、半分以上は国民のために使われているのです。
社会保障の内容とは
国が行う社会保障の内容は、以下の4分野に分けられます。
- 年金
- 医療
- 介護
- 子ども・子育て支援
社会保障は高齢者に支払う年金だけではありません。義務教育就学後から69歳の人が原則として3割負担で医療が受けられる『国民皆保険』の制度も、社会保障の一つです。
妊娠をした際に無料で受けられる妊婦健診や、地域の子育て支援なども社会保障に含まれます。
財務省が公表している資料によると、2022年度予算における消費税の徴収額は国・地方合わせると27.5兆円で、国の消費税は21.6兆円です。一方、国の年金には13.4兆円・医療には12.1兆円が予算として必要だとされています。
年金と医療の予算だけでも合計25.5兆円で、消費税の税収額21.6兆円を超えています。なお、2022年度の介護や子ども・子育て支援の予算の合計は6.7兆円なので、社会保障の財源は上記4分野を全て合わせると32.2兆円も必要です。
国の予算を見ると、消費税収を社会保障に回してもなお苦しい現状が分かるでしょう。
2.2%の「地方消費税」は地方の行政に活用
消費税10%のうち2.2%を占める『地方消費税』は、消費税と同様に商品の販売・サービスなどの国内取引や外国貨物の引取にかかる都道府県税です。
地方消費税の半分を、市町村に交付している都道府県もあります。地方消費税の主な使い道は、以下の通りです。
- 道路や下水道の整備
- 医療や福祉の充実
- 学校教育や環境保護事業の財源
2.2%のうちの1.2%は、年金や医療・介護・子育て支援をはじめとする、地域の社会保障に役立てられています。
消費税が支払われた後の流れをチェック
支払った消費税は、どのような流れで国や地方に徴収されるのでしょうか?消費税が支払われてから、国や地方へ納付されるまでの流れについて解説します。
消費税は間接税。お店が税務署へ納付
前提として消費税は所得税や住民税と違い、支払う人と納める人が異なる『間接税』です。お店が消費者から預かった消費税をまとめて、本店を管轄している税務署に納付しています。
消費税は買い物だけではなく、サービスにも課税されます。ただし、以下のようなサービスは非課税で消費税がかかりません。
- 社会保険医療
- 介護保険サービスや社会福祉事業
- 埋葬料や火葬料
- 一定の学校の授業料や入学金など
非課税とされている取引は他にもさまざまあります。賃貸契約の家賃にも、消費税はかかっていません。
参考:消費税のしくみ|国税庁
国を通じて都道府県に交付
お店が税務署に納めた消費税は、国を通じて都道府県に交付されます。「自分が払った消費税は、買い物をした店がある都道府県に支払われるだろう」と考える人も多いのではないでしょうか?
しかし実は、消費税が支払われるのは、買い物やサービスを受けた都道府県とは限りません。
例えば、東京都の店で売られているタオルを、ある人が購入したとしましょう。このとき支払われた地方消費税分の一部は、東京の店の仕入を通じて生産地の愛媛県に納付されることになります。
しかし、物が売られた(最終的に消費された)都道府県以外に納付されると、地方財源の確保につながらない可能性があるでしょう。この問題を解消するために、都道府県の消費に関する統計データを使って互いの税収に偏りがないように調整する『精算制度』が設けられています。
消費税が10%に引き上げられた理由
1989年に3%からスタートした消費税の税率は少しずつ上がり、2019年には10%になりました。わずか30年の間に消費税が10%にまで引き上げられた背景には、日本が抱える財政難が関係しています。
少子高齢化で社会保障費が増えている
消費税が10%にアップした大きな原因は、日本国民の少子高齢化です。
2020年版の厚生労働白書によると、1990年には人口の約12%だった65歳以上の高齢者が、2019年には28.4%にまで上がっています。さらに2040年には35.3%まで増加すると予想されているのです。
高齢化が進むにつれて、高齢者に支給する公的年金の費用は増加します。
社会保障の財源は、国民が支払う保険料で賄うのが基本です。しかし、保険料は働いている現役世代が担う形になるため、現役世代に経済的な負担が集中してしまいます。
そこで、年齢を問わず買い物やサービスを受ける際に支払う消費税を社会保障費の財源にし、負担が偏らないようにしているのです。
景気の動向を受けにくく、安定財源となる
景気に左右されにくい消費税の特徴も、税率が10%にアップした理由の一つです。収入の額に応じて徴収される所得税は、景気の影響を受けやすく税収が不安定な傾向にあります。
また、法人企業が支払う法人税は、マイナスを繰り越せる『繰越欠損金制度』があるため、安定した財源には適していません。1990年代にバブルが崩壊して以降、企業の繰越欠損額は増加しており、法人税の税収は伸び悩んでいるのが現実です。
しかし、景気が悪くなったからといって、食料品や日用品などの生活必需品の購入額が急激に減ることはないでしょう。そのため、国民の生活を支える社会保障費の財源には、安定した税収を見込める消費税が充てられています。
構成/編集部