進学や就職を迎えるにあたり、パソコンを本格的に使う局面がやってくる。スマホに慣れ親しんだ世代が、これからの新世界に旅立つ上で重要なのは、動作が俊敏かつ小型軽量の「QWERTY配列のキーボードを搭載するノートPC」を使いこなすことではないだろうか。
・5万円以下
・タッチパネル対応型
・堅牢&軽量。できれば防水
・メモリは4GB以上
・ストレージはSSD
・ノングレア(非光沢)
・ディスプレイが大きく展開するタイプ
・バッテリー寿命が長い
・自動更新ポリシーの期限ができるだけ長い
・「セーフサーチ」「セーフブラウジング」「URLのブロック」を設定可能なもの
以上の条件でノートPCを探したところ、上記の多くに適合するChromebookがあったので、解説をして行くこととしよう。
Chromebookは小型で軽量、高速を兼ね備えたPC!
このChromebook。使い慣れない人が多いかもしれないが、ぱっと見は普通のPCだ。しかしその実、これまでのWindows PCやMacとは大きくコンセプトが異なる。
Chromebookとは、Googleが開発しているオペレーティングシステムのGoogle「Chrome OS」を搭載しているノートパソコンのことを指す。要約すれば、ブラウザのGoogle ChromeとAndroidのアプリを動かすPCだ。
しかし逆に考えるとChromeと、Androidのアプリさえ動けば良いので、比較的安価に製造が可能となり、軽快な動作が期待できる。
パソコンを使っている人の多くは、ChomeなどWebブラウザでのネット視聴重視のはず。それならばChromebookにも一定の優位性があると言わざるを得ない。
そこで今回、Chromebookをリリースしている、日本HP、レノボ・ジャパン、日本エイサー(Acer)、富士通クライアントコンピューティング、エイスース(ASUS)・ジャパン(順不同)の各5社に、突撃取材を行った所、ほとんどの会社から試用品をお借りできた。
それではこれより各社のChromebookを紹介して行こう。なお、すべてタッチ操作が可能な機種だ。価格はおおむねメーカー直販価格なので、販売店によってはもっと安価に入手できる可能性が有ることを付け加えておく。
HP「Chromebook 14a(AMD)」4万4800円〜
HP「Chromebook 14a」を起動した第一印象は何と言っても「筐体の雰囲気がMacBookみたい!」および「ディスプレイの解像度がすごい!」……この2点である。
それもそのはず、天板の色はMacBookに近い質感だと感じたし、IPS液晶でフルHD(1920×1080)だから画像の美しさは当然だ。さすがに4Kではないが、Chromebookに多くを求める必要性は低い。
蛍光灯の明かりの下でブラウジングをしてみたが、照明の映り込みも見られなかった。非常にソツがない画面だと感じた。
光沢液晶搭載PCは画面が美しく綺麗だとは思うが、実際に業務で使ってみると、明かりが反射して文字が見えなくなり、ストレスが溜まることが多い。ここはやはり実用性を優先した方が良いだろう。
実重は約1.34kgと標準的。手提げカバンに入れて持ち歩くには何の支障もないが、試しに片手で持つにはちょっと辛かった。
Androidスマホではおなじみの「Google Play」がプリインストールされていたので、早速ゲームアプリをインストールしてみた。アプリの種類にもよる様だが、基本は縦表示される様だ。タッチパネルが利用できるので、操作はスマホ同様、画面を触って快適にプレイが可能だ。動作速度も特に遅延を体感することは無かった。ブラウザゲームであればなおさらタイムラグを感じることはないだろう。ささいな要望だが、本体を横に寝せたら横向き全画面表示してくれたらなお喜ばしかった、
主な仕様
プロセッサー:AMD 3015Ce モバイル・プロセッサー
カラー:セラミックホワイト
メモリ:4GB
ディスプレイ:14.0インチワイド・フルHDブライトビュー・IPSタッチディスプレイ (1920×1080)
グラフィックス:AMD Radeon グラフィックス
ストレージ:64GB eMMC フラッシュメモリ
無線機能:IEEE802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.0
キーボード:日本語配列、バックライト付き
質量:約1.34 kg
バッテリー:最大10時間
【FURUの本音ジャッジ】
デザイン ★★★★★
操作性 ★★★★★
サイズ ★★★★
重量 ★★★★
価格 ★★★★★
Lenovo「IdeaPad Duet 560 Chromebook」6万9870円〜
いきなり5万円越えでミッションを果たせなくなってしまったが、ちょっと待って欲しい。
Lenovo「IdeaPad」の商品名を聞いて、勘の良い人はすぐに気がついたと思う。そう、本機はChromebookにもかかわらず、いわゆる2 in 1と呼ばれる、キーボードに接続可能なタブレットPCなのだ。
この手のタブレットPCのキーボードは別売が多いのだが、本機は標準で付属しているのはありがたい、
できるだけ軽く、荷物を増やしたくない時にはタブレットとして、落ち着いて文章を入力したい時にはキーボードを接続して、という風にTPOに合わせて様々な形態で運用できるのがとても便利だ。
キーボードは磁石の力でパチンととまり、装着感がとても小気味良い。そしてタブレット本体から給電されるので、本体と別々に充電しなくても済むのはありがたい。
手に持った最初の印象は……「よ、横長すぎる?」だった。実際、液晶の解像度はChromebookで標準的なフルHD(1920×1080)なので、実際はそこまで横長ではないのだが、フレームが細いので特にその様に感じるのだろう。ディスプレイは、巷では高画質で定評のある有機ELだからだろうか、とても目が幸せになる美しい画面だと感じた。さらに低ブルーライト認定を受けているとか。ようするに目に優しい。
手に持った重量感も、ノートPCタイプのものに比べれば段違いに軽い。もちろんキーボードを付けた状態でも、ノートPCよりちょっと軽いくらいの感覚だ。Lenovo「IdeaPad」の真価を最も発揮するのは、やはりタブレットスタイルなんだろうな、と深く染み入った。
意味も無く斜めに持ってみたが、なんとか画面の表示を読むことだけはできた。可視性は非常に高い。
背面にはスタンドが内蔵されているので、キーボードの有無にかかわらず自立するのはありがたい。
また構造上、ノートPCの様にヒンジの限界を超えて折り曲げて壊してしまうなんてことも無縁なので、180度開いて平らにもできるし、360度折り返すことも容易だ。壊れるリスクが少ない分、ついデジタルガジェットを手荒に扱ってしまいがちな人たちには朗報だろう。
主な仕様
プロセッサー:Qualcomm Snapdragon 7c Gen2
動作周波数:2.55GHz
メインメモリ容量 (標準):4GB
容量 (最大):4GB
表示機能: 13.3型 FHD OLED (有機ELディスプレイ) (1920×1080ドット、最大10.74億色) 、マルチタッチ対応(10点)、光沢有り
ビデオ・チップ:Qualcomm Adreno 618
インターフェース(Tablet本体):USBポート Type-C
オーディオ関連ポート:マイクロホン/ヘッドホン・コンボ・ジャック
タブレット本体:約305.86×186.74×7.23mm
フォリオキーボード&スタンドカバー装着時:約305.93×192.63×15.83mm
タブレット本体:約700g
フォリオキーボード&スタンドカバー装着時:約1.2kg
バッテリー:4セル リチウムイオンポリマーバッテリー (固定式)
使用時間:約15.5時間
充電時間(パワーオフ時):約2.5時間
【FURUの本音ジャッジ】
デザイン ★★★★★
操作性 ★★★★
サイズ ★★★★★
重量 ★★★★
価格 ★★★★
Acer「CP311-3H-H14N」オープン価格(調査時点4万円台)
ピュアシルバーの筐体が目に優しいノートPCスタイルのChromebookではあるが、画面サイズはこれまでより小さい11.6型。残念ながら1366×768の解像度につきフルHDではないのだが、この画面サイズでそこまで高精度にしてしまったら、かえって文字が見づらくなるので、このくらいがちょうど良い。ちなみに画面は抗菌仕様のゴリラガラスなので、細菌やウィルスによる感染が気になるこのご時世には実にタイムリーな仕様と言えよう。お子様用PCとしてちょうど良いかも知れない。手触りも軽やかだ。
本機はノートPC型にもかかわらず、液晶画面がよく回る。180度も360度も自由自在。これは楽しい。
バッテリーが連続約15時間持つのは地味に喜ばしい。やはり充電を気にしながら恐る恐る使うのは精神衛生上よろしくないからだ。朝、充電して持っていけば、家に帰るまでバッテリーは持つ計算だ。つくづく最近のノートPCはバッテリーが長持ちする様になったのだなあと感心する。
Lenovo「IdeaPad」と一緒に並べてみた。やはりAcer「CP311-3H-H14N」の方が一回りサイズが小さいのが歴然だ。しかしタブレットも捨てがたい。そういった悩み深い人たちには2台持ちがおすすめだ。
主な仕様
本体色:ピュアシルバー
プロセッサー:MediaTek プロセッサー M8183C 2.00GHz
システムメモリー:標準 4GB/最大 4GB、オンボード 4GB、LPDDR4X-4266MHz
ディスプレイ:11.6型、WXGA HD(1366×768)、16:9画面、LEDバックライト、光沢パネル、IPSパネル搭載、抗菌仕様Corning Gorilla Glass
タッチパネル:10点マルチタッチ
グラフィックス:Mali-G72 MP3 GPU(CPUに内蔵)
ストレージ:32GB eMMC
スピーカー:内蔵ステレオ・スピーカー×2
内蔵マイクロホン×1
Bluetooth:Bluetooth 4.1 準拠
外部インターフェース:USB 3.2 ポート×1(Type-C、Gen 1、最大5Gbps、PD対応/映像出力対応)、USB 2.0 ポート×1、ヘッドセット/スピーカー・ジャック×1
バッテリー駆動時間(標準):約15時間
寸法(W×H×D):約290.0×18.8×206.0mm
重量:約1.05kg
【FURUの本音ジャッジ】
デザイン ★★★★
操作性 ★★★★★
サイズ ★★★★★
重量 ★★★★
価格 ★★★★★
FMV「Chromebook 14F」7万5680円(7月27日14時まで)
これまでの機種とは一線を画すサイズの14インチ。第一印象としては「質実剛健なノートPCらしいノートPC」だ。キーボードに深みがあり、色もダーククロムでとても渋い。全体的にガシッとした作りとなっており、HDMI端子やMicro SDカードスロットまで内蔵されているので、とにかく何よりも軽さや小ささを目指す! という方向性ではない。筆者的には、実はこういう考え方も好物だ。
重量も約1.29kgなので、重くも大きすぎることもない。ちょうど良い感じ満載のPCだろう。
Wi-Fiの電波もサクッと掴んでくれるので、すぐに利用が可能だ。
残念ながらディスプレイは180度や360度まで回転ささせることはできない。
主な仕様
CPU:インテル Core i3-1115G4 プロセッサー
動作周波数 インテル ターボ・ブースト・テクノロジー2.0対応:最大4.10GHz
コア / スレッド数:2コア/4スレッド
キャッシュメモリ:6MB
グラフィックス・アクセラレーター :Intel UHD Graphics(CPUに内蔵)
メインメモリ:8GB
表示機能:LED バックライト付きタッチパネル式高輝度・広視野角 TFT カラーLCD(ノングレア液晶)
パネルサイズ:14型ワイド
解像度/表示色:1920×1080ドット / 26万色
タッチ機能:静電容量方式タッチパネル(10点マルチタッチ)
ストレージ:約128GB SSD(PCIe)
入力装置:キーボード 日本語キーボード(キーピッチ約19.0mm/キーストローク約1.7mm/78キー、JIS配列準拠)
ダイレクト・メモリースロット:microSDメモリーカード対応
USB:USB3.2(Gen2)Type-C(USB Power Delivery 対応、DisplayPort Alt Mode 対応)×2(右側面×1、左側面×1)、USB3.2(Gen2)Type-A×2(右側面×1、左側面×1)
外部出力:HDMI出力端子×1
バッテリー駆動時間:10時間
バッテリー充電時間:約1.5時間
外形寸法(幅×奥行き×高さ)(突起部含まず):323.8×216.8×19.9mm
本体質量(バッテリーパック含む):約1.29kg
【FURUの本音ジャッジ】
デザイン ★★★★★
操作性 ★★★★★
サイズ ★★★★★
重量 ★★★★
価格 ★★★★★
ASUS「Chromebook Detachable CM3 (CM3000) 」4万4820円〜
今回、残念ながらタイミングが合わずお借りできなかったが、ASUS「Chromebook Detachable CM3」はその名の通りデタッチャブルなPCだ。デタッチャブルとは取り外し可能という意味だ。いわゆる2 in 1と呼ばれる、キーボードに接続可能なタブレットPCの一派である。スタンドカバーに質感があり、シックな素材が購買意欲をそそらされる。これからの世の中、PCも無骨なだけでは駄目なのだ。ある程度のデザイン性の高さも要求される時代になったと言える。
スタイラスペンが内蔵可能なのは喜ばしい。すぐどこかになくしてしまう、筆者のような慌て者には必要不可欠な機能だと言える。
サイズはこれまでの最小の10.5液晶。重量は約506g と大変軽い。それでありながら12.3時間もバッテリーが持つとは驚きだ。
ディスプレイの縦置き、横置きも自由自在。つくづく試用できなかったのが残念だ。またの機会に期待しよう。
主な仕様
CPU:MediaTek Kompanio 500 (8183) 2GHz
グラフィックス機能:ARM Mali-G72 MP3 (CPU内蔵)
表示機能:タッチパネル搭載 10.5型ワイドTFTカラー液晶 1920×1200ドット (WUXGA)、
メインメモリ:4GB LPDDR4X
記憶装置:eMMC 64GB
インターフェース:USB2.0(Type-C)×1
マイクロホン/ヘッドホン・コンボジャック×1
入力機能:78キー日本語キーボード (JIS配列)、 マルチタッチ・タッチパッド、10点マルチタッチ・タッチスクリーン (静電容量方式)
バッテリー駆動時間:本体: 約12.3時間
本体 + デタッチャブルキーボード: 約12時間
本体: 約506g
本体 + デタッチャブルキーボード: 約748g
本体 + デタッチャブルキーボード+スタンドカバー: 約915g
本体: 幅255.44×奥行き167.2×高さ7.9mm
本体 + デタッチャブルキーボード: 幅255.44×奥行き167.2×高さ13.3mm
本体 + デタッチャブルキーボード + スタンドカバー: 幅255.44×奥行き167.2×高さ16.9mm
【FURUの本音ジャッジ】
デザイン ★★★★★
操作性 ★★★★
サイズ ★★★★★
重量 ★★★★
価格 ★★★★
Chromebookの「自動更新ポリシー」について
ChromebookのOSは常に自動更新され機能が強化されるのが特徴だが、その更新される期限は無期ではなく、一定の期間があらかじめ決められている。ある期限(発売後、約8年と言われている)を過ぎると自動更新されなくなり、セキュリティリスクが高まるのだ。今回ご紹介した機種は新機種なので、まだまだ更新期限は先だが、あらかじめ以下のリンクで期限を確認しておいた方が良い。中古のChromebookを購入する際はなおさら注意しておいた方が良いだろう。
Chrome OS デバイスのポリシーを管理する自動更新ポリシー
安価で快適に利用可能なChromebookだが、現状、完全にWindowsやMacの代替え品となる訳ではない。しかしChromebookは、ネット視聴の利用が多いなら、シチュエーション毎に機器の使い分けを促進する大きな潜在能力を秘めている。
文/FURU