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【深層心理の謎】専門知識があると記憶力も高まるのはなぜ?

2022.07.23

 赤いスクーターを見て、思いがけずにある人物の顔が思い浮かんだ。もう10年以上会っていないが元気にしているだろうか。とはいえ今目の前を通り過ぎた赤いスクーターは、たぶん彼のスクーターとは違う車種なのだろう……。

飯田橋駅前で赤いスクーターを目撃する

 バイクに乗らなくなって久しく経つだけに、最近のバイクについてすっかり疎くなってしまっている。排ガス規制などでいろいろな車種が生産中止になっていることはニュースなどで目にして度々残念に思っていたが、その一方で新しい車種についての情報はあまりチェックしなくなっていた。この先も当面は乗るつもりはないのだから、そうなってしまうのは仕方がない。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 所用を終え、JR飯田橋駅の西口界隈を歩いていた。もう夜8時を回ろうとしている。部屋に戻ってからも少し作業が残っているので、この辺で何か食べて帰ることにしよう。

 早稲田通りを皇居方面に向けて歩く。交番近くの交差点で信号待ちをしていると、目の前を赤いビッグスクーターが駆け抜けていった。軽快な排気音がなかなか心地よい。ナンバーが白いので250㏄か150㏄のスクーターだ。

 交差点を走り抜ける赤いスクーターを見て、ほとんど忘れかけていた人物の顔が脳裏に浮かんできた。かつての仕事上の知り合いであった人物で、赤いスクーターに乗っていたのだ。

 十数年以上前の話だが、その当時は郊外の撮影スタジオに出向いて取材する仕事がたまにあり、バイクで行くことも少なくなかった。自分はその当時、250㏄のネイキッドタイプのバイクに乗っていたが、同業者のその人物は赤い250㏄のスクーターに乗っていて、お互いバイクに乗ってスタジオに来ることも何度かあったのだ。また取材が終わってバイクで一緒に途中まで帰ることもあったりした。

 しかしその後、仕事の状況が変わるなどしてそういった取材もほどんどなくなり、彼に会うこともなくなって十数年が経っている。思い出した以上、今どうしているのか気にならないわけでもないが、その理由だけで連絡するのは個人的にはあり得ない。

 信号が変わり通りを進む。すぐ近くに大学があるので若い人の姿が多い。ラーメン屋やハンバーガーチェーン店など飲食店もちらほらと見受けられる。もう少し先を進んでみたい。

 バイクに乗らなくなってから久しく経つが故に、最近のバイクにはどんどん疎くなってしまっている。さっきのスクーターも色が赤くなければ特に気に留めることはなかっただろうし、彼の顔を思い出すこともなかったように思う。

 あのスクーターは十数年前に彼が乗っていた赤いスクーターとはたぶん違う車種なのだろうが、メーカーや車種などはまったくわからない。赤いスクーターという大雑把な分類を自分の中でしているだけである。

 一方でかつて自分が乗っていたバイクやその関連モデルについては、ある意味で当然だが今街で見かけてもすぐにわかる。しかし残念ながらそのほとんどが生産中止になっていて見かけること自体が珍しくなってきている。

専門知識が記憶力を高めていた

 通りを進む。左にある建物の鋭角のとんがり屋根には十字架が立っている。どうやら教会のようだ。

 最近のスクーターについては特に疎くなっていているのだが、それは当然ながら新車種についての情報をチェックしておらず知識が不足しているからである。最新の研究でも“違いがわかる”ためには専門的知識が不可欠であり、その専門知識によって記憶力も高められていることが報告されていて興味深い。


 私たちが覚えていることは、私たちがすでに知っていることによって形作られます。たとえば最近の水族館への訪問からエンゼルフィッシュを思い出すのは、エンゼルフィッシュが何であるかをすでに知っていて、それらについてのことを知っている人にとっては簡単です。

 特定のアイテムの記憶の検索を容易にすることに加えて、事前知識は新しい情報のための包括的な組織構造を提供することによって記憶もサポートします。

 ここでは、知覚的特徴に基づいて鳥を分類整理する初心者とは対照的に、専門家の知識がどのようにバードウォッチングにおいて概念的特徴に基づいて鳥を分類整理するように導いているのかを示します。

※「PNAS」より引用


 カナダ・オンタリオ州トロントにあるベイクレスト老人医療センター(Baycrest Center for Geriatric Care)の研究チームが2022年6月に「PNAS」で発表した研究では、エキスパートのバードウォッチャーの記憶のプロセスを検証することで、組織構造化した専門知識が類似アイテムの違いをより明確にし、新たな対象を記憶しやすくなるよう働いていることを突き止めている。

 専門的知識が記憶に与える影響を研究するために、研究チームは地元のバードウォッチャーなどの鳥類の専門家の協力を仰ぎ、比較のためのコントロールグループとしてガーデニング、釣り、ハイキング、その他の野外活動の専門家を招いて実験に参加してもらった。

 両グループの参加者はコンピュータ画面上に表示された複数の鳥の画像を見て、知覚された類似性に従って画面上に視覚的に配置するように求められた。ほとんどの専門家は、これまで見たことのない鳥種であっても、くちばしの構造や尾の形などの特定の特徴に基づいて鳥をグループ化する傾向があった。対照的に非専門家や一部の専門家は、色などのより表面的な特徴に基づいてグループ化を行う傾向が見られた。

 続いて研究チームは参加者の記憶力をテストした。最初に各参加者には一連の鳥のシリーズ写真が見せられた。次に最初に見せられた鳥を含む2番目の鳥のシリーズ写真が見せられたのだが、個々の鳥が最初のシリーズ写真で見た鳥であったかどうかを回答した。

 収集したデータを分析した結果、特定の特徴に基づいて鳥をグループ化した人は、色に基づいて鳥をグループ化した人よりも記憶課題でより良いパフォーマンスを示していることが浮き彫りとなった。この違いは、専門家と非専門家の間だけでなく、専門家の間でも見られるものであった。

 色に基づいて鳥を表面的にグループ化した人は、そうでない人よりも記憶力が劣っていたことになる。アイテム間の高い類似性はしばしば記憶を妨げるのだが、専門知識を持つことはこの問題を回避するのに役立ち、さらにより高度に組織構造化した専門知識が記憶をサポートしていることが示唆されることになったのだ。

“赤いスクーター”というわかりやすい特徴で分類していると車種の違いがあいまいにもなり、過去に見たことがあったかどうかも覚束なくなったりもするが、乗ったことがあり専門的な知識のあるバイクは各モデルの違いもよくわかり、新モデルが出ても憶えやすくなっているということになる。

 研究チームによれば加齢による記憶力の低下をこうした組織構造化した専門知識によって緩和できることを示唆している。年を取っても学び続けることで記憶力の維持と生活の質の向上に繋がり、そして専門知識の蓄積という点では年長者のほうがアドバンテージがあることも指摘されている。

学生ご用達のステーキ店で肉とご飯を貪る

 通りを進む。某ファミレスが見えてきて、ここでもいいかと思ったのだが、その先のビルの2階にはステーキ店があることが看板でわかる。この店は東京ローカルのチェーン店で、かつては高田馬場にもありよく利用していた。こんなところにもあるとは知らなかった。入ってみよう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 雑居ビルの狭い階段をのぼって辿り着いたお店の扉もまた小さいのだが、扉を開けて入ってみると店内は思っていたよりも狭くはなかった。小さめのテーブル席が7、8卓はありそうだ。先客は4人組の男子大学生のグループとカップル客だ。

 お店の人に席を案内されて4人掛けのテーブル席に着く。ホワイトボードに記されているランチメニューがよさそうだが当然この時間は注文できない。メニューをひと通り眺め、現在お店が推しているメニューの「塩レモン中落カルビ」の240gにライス、スープ、サラダのセットを注文した。一杯だけならいいだろうと思いハイボールもお願いする。

 珍しくバイクのことに考えが及んでいるのだが、再びバイクに乗る日がやってくるのだろうか。そもそもこれまでのガソリンエンジンのバイクに今後も乗ることができるのかという懸念もある。

 バイクに乗る楽しみのひとつに独特の排気音があると思うが、電動バイクでは当然そうした要素は一切なくなるだろう。そして近い将来、EV(電気自動車)が主流となった社会では電動バイクはきわめて限られた用途での移動手段になりそうだ。電動バイクでの長距離ツーリングというのは何だか心もとない感じもするし、もっぱら近場の移動だけの用途であるのなら、電動アシスト自転車と被ることになる。

 ステーキがやって来た。わりと細かくカットされたカルビ肉で、これをステーキと呼べるのかわからない感じもするが、まぁあまり細かいことにはこだわらずにいただくとしょう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 小さくカットされた肉ではあるが、ナイフでもう半分くらいに切ってから口に運ぶと、確かにレモンの風味が感じられる。肉はわりと噛み応えがあって決して柔らかくはない。カルビだけに噛みしめるほどに脂の旨味が口の中に広がる。

 ご飯を頬張るときわめて相性が良く、自然にご飯が進んでしまう。皿に盛られて提供されたご飯の量を見て、ひょっとしたら全部食べられないかもしれないという考えが一瞬脳裏をよぎったが、これならまったく問題なく食べられそうだ。

 バイクに乗っていない今、電動アシスト自転車にも乗ろうとは思わないのだが、最近になって自宅周辺に電動キックボードがレンタルできる場所が目につくようになっていて若干興味を惹かれたりもしている。実際に乗っている人もここ最近になってよく見かけるようにもなった。

 今日のように近場でご飯を食べた時など、電動キックボードで帰路に就くことができれば、確かにちょっとした痛快な気晴らしになるかもしれない。調べればこの近くにもきっと電動キックボードをレンタルできる場所があるのだろう。

 ……だが、今の自分はハイボールを一杯飲んでしまった。夜の街では高い確率でアルコールが入っている自分には、電動キックボードの利用は考えないほうがよさそうだ。

文/仲田しんじ

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