世の中は、美味しいものであふれている。
社会人になってからは、少しずつ世界が広がり、
仲間とコスパの良いお店を開拓したり、
先輩たちにすてきなお店を教えてもらったりして、
楽しい時間を過ごしてきた。
でも最近、本当においしいものは何なのか、
わからなくなる瞬間がある。
この時代に、日本という国で暮らしていると、
まずいものというのは、あまりない。
ほとんどのものはおいしい。
だからこそ、わからなくなってしまう。
忙しい仕事の合間に、
コンビニでサッと買って食べられるおにぎりは、
とてもありがたいし、おいしい。
必死に予約をとって、高いお金を払って、
どうぞと目の前に置かれる料理は、
やはりありがたいし、おいしい。
だけど、私が本当に好きなものって、何だっけ?
こうなると結局、母の手料理を思い出してしまう。
いわゆる、おふくろの味というやつだ。
何がどうおいしいかと聞かれてもよくわからないけど、
とにかくやさしくて安心できる。
大げさではないが質素でもなく、いつもちゃんと作られていた。
それがどれほどすごいことか、今ならわかる。
自分のことを想って作ってくれたものが、一番おいしい。
飽きるほど語り継がれてきたことだろうけど、
結局そういうことなんだと思う。
私はこの先、おふくろの味に勝るものに出会えるのだろうか?
最後の晩餐は、
母の唐揚げとだし巻き卵を食べながらビールを飲みたい。
けど、その頃にはもう母はいないだろうから、どうしようかなぁ。
写真は、母がお正月に作ってくれた唐揚げ。
自分で作っても、そこそこの味にしかならない。
Natsumi Uga
テレビ朝日アナウンサーを経て、2019年よりフリーとして活動。現在、『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)、自身初のラジオ番組『日本郵便 SUNDAY’S POST』(TOKYO FM/JFN)、『テンカイズ』(TBSラジオ)、MCを務める『土曜はナニする!?』(関西テレビ・フジテレビ系)などに出演中。
文/宇賀なつみ
※「宇賀なつみ 素顔のままで」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME8月号に掲載されたものです。