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覚えておきたい契約者本人が亡くなった後に遺族が貸金庫を開けるための手続きの方法

2022.07.21

貴金属や重要な書類などを預けるため、貸金庫を契約する方がいらっしゃいます。

もし貸金庫を契約している本人が亡くなった場合、遺族が貸金庫を開けて保管物を取り出すためには、どのような手続きが必要なのでしょうか?

今回は、貸金庫の相続手続きなどについてまとめました。

1. 貸金庫サービスを提供している事業者の例

貸金庫サービスは、主に銀行・物流会社や倉庫会社・貴金属店などが提供しています。

1-1. 銀行

「メガバンク」3行をはじめとして、多くの銀行が貸金庫サービスを提供しています。

銀行金庫内に設けられているキャビネットの一部を、貸金庫として顧客向けに貸し出すサービスが一般的です。貸金庫の使用料は、原則として預金口座から引き落とされます。

参考:貸金庫|三井住友銀行
参考:貸金庫|みずほ銀行
参考:貸金庫|三菱UFJ銀行

1-2. 物流会社・倉庫会社

物流会社や倉庫会社など、物の保管を専門的に取り扱う企業でも、貸金庫サービスを提供している場合があります。貸金庫の使用料は、口座振替などの方法によって支払います。

参考:貸金庫|住友倉庫
参考:貸金庫|三菱倉庫
参考:TERRADA SAFE BOX|寺田倉庫

1-3. 貴金属店

貴金属店では、金地金やプラチナ地金などの預かりサービスを提供している場合があります。

ただし、預けた地金そのものを返還するのではなく、新しい地金で返還するなど、他業種の貸金庫とはサービス内容が異なる貴金属店もあるようです。

参考:ゴールド・キーパー|田中貴金属工業

2. 遺族が貸金庫を開けるには、相続手続きが必要

貸金庫を契約している本人が亡くなった場合、遺族が貸金庫を開けて物を取り出すためには、相続手続きを申請する必要があります。

2-1. 貸金庫の相続手続きにおいて証明すべき事項

相続手続きを申請する際には、貸金庫を開けようとする人に、本人から引き継いだ「貸金庫を開ける権利」があることを証明しなければなりません。

貸金庫契約上の地位は、相続によって相続人全員が本人から共有的に承継します(民法896条、898条)。したがって、本人の死後に貸金庫を開けるためには、原則として相続人全員の同意が必要です。

ただし、遺言書または遺産分割協議によって、貸金庫契約上の地位を相続する者が定められたことを証明すれば、その者が貸金庫を開けられます。

また、遺言書で指定された遺言執行者が就任した場合、遺言執行者は単独で貸金庫を開けることが可能です。

2-2. 貸金庫の相続手続きにおける主な必要書類

貸金庫の相続手続きにおいて、必要となる書類は状況によって異なります。

主に想定される状況ごとの必要書類は、おおむね以下のとおりです。貸金庫サービスを提供する事業者によって異なる場合がありますので、詳しくは事業者の窓口にご確認ください。

①遺言書がある場合
・遺言書
・検認調書または検認済証明書(公正証書遺言、遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言以外の場合)
・被相続人の戸籍全部事項証明書(死亡の事実が記載されたもの)
・貸金庫契約上の地位を相続する者(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者)の印鑑証明書

②遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合
・遺産分割協議書
・被相続人の除籍全部事項証明書または戸籍全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)
・相続人全員の戸籍全部事項証明書
・相続人全員の印鑑証明書

③遺言書も遺産分割協議書もない場合
・被相続人の除籍全部事項証明書または戸籍全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)
・相続人全員の戸籍全部事項証明書
・相続人全員の印鑑証明書

2-3. 貸金庫を開ける当日に立ち会うべき人

実際に貸金庫を開ける場には、以下の方が立ち会います。

①遺言執行者が就任している場合
遺言執行者が立ち会います。

②①以外で、遺言書や遺産分割により、貸金庫契約上の地位を相続する者が定められた場合
貸金庫契約上の地位を相続する者が立ち会います。

③貸金庫契約上の地位を相続する者が決まっていない場合
相続人全員が立ち会います。

なお、相続人全員が立ち会うべきケースにおいて、一部の相続人が当日欠席する場合、欠席相続人の同意書をあらかじめ取得しておけば、代表者のみの立会いによる貸金庫の開披が認められます。

ただし、貸金庫の中の物を持ち帰るためには、相続人全員が立ち会うか、または各相続人の代理人として公証人・弁護士・司法書士などの出席を求められるケースが多いです。

3. 貸金庫の中身にも相続税がかかることに注意

貸金庫の中身が亡くなった被相続人の所有物の場合、相続財産に含まれるため、相続税の課税対象となります。

特に、貸金庫の中に高価な貴金属類などが保管されていた場合、相続税申告の際の計算に含めておかないと、後から高額の追徴課税を受けるおそれがあるので注意が必要です。

相続税に関しては、他の税金よりも税務調査が行われる割合が高くなっているので、貸金庫の中身についても忘れずに含めたうえで、相続税の計算を行ってください。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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