ビジネスシーンでしばしば耳にする『生憎』とは、どのような意味なのでしょうか?クッション言葉としてうまく活用すれば人間関係や仕事をスムーズにできる『生憎』の使い方・NG例を、例文と一緒に確認していきましょう。
生憎とはどんな意味?
『生憎』は話し言葉でもメールでも、よく見聞きする言葉の一つです。日常的に使っていても「そういえば正確な意味を考えたことがない」という人もいるかもしれません。まずは生憎の基本的な意味と由来を説明します。
意味と由来
生憎は『あいにく』と読み、形容動詞と副詞があります。どちらの場合も、期待や目的にそぐわない様子やタイミングや都合が悪い様を表す言葉です。形容動詞は『生憎だ』『生憎~』、副詞は『生憎~だ』『生憎の~だ』と活用が異なります。
生憎の語源とされるのは、古語の『あやにく』です。感動詞『あや』と形容詞『にくし』の語幹から、「ああ、憎たらしい」と期待外れの状況を悔しがる心情を表しています。
『あやにく』の音が変化し、期待に添わなかったり都合が悪かったりする状態を表す『生憎』となったのです。
よく使われるシーンと例文
生憎を使用する主なシーンは、3パターンに分けられます。共通するのは『期待に添えず残念な気持ち』を伝えて、悪印象を与えずに断りたい場面で使うことです。
生憎の適切な使用シーンとニュアンスを知り、気遣いを伝える表現として活用しましょう。
期待外れの天候になったとき
生憎をよく耳にするシーンの一つに、天気を話題にする会話が挙げられます。一般的に晴れの方が都合がいいとされるので、雨や悪天候に対して以下のように使う場合が多いでしょう。
- 週末は生憎の雨で出掛けられなかった。
- 今日のイベントを楽しみにしていましたが、生憎の雨模様ですね。
天気に『生憎』を付けて期待外れの空模様になったことを示し、外出やイベントの予定が思うようにいかず、残念な気持ちを表すときに使います。
相手の誘いや提案を断るとき
相手の誘いや提案を断るときも、『生憎』が活躍するシーンです。「自分が悪いわけではないけれど、期待に添えなくて残念だ」という気遣いを感じさせ、相手に好印象を与えやすい表現になります。
目上の相手や職場の同僚・部下と、幅広い相手に対して使えるので、ビジネスシーンでも重宝するでしょう。例文は以下の通りです。
- ご招待いただいた食事会ですが、生憎、都合がつかず参加できません。
- せっかくのお話ですが、生憎、予定が合わずお断りする運びとなりました。
『生憎』を付けることで、残念な気持ちが伝わる分だけやわらかい断り方ができます。角を立てずに断りたいときに活用しましょう。
日程や状況が相手の期待通りでないとき
生憎は相手の期待した日程に都合がつかなかったり、在庫不足・担当者の不在などの状況で取引先の期待に応えられなかったりする場合にも使えます。
- 生憎ですが、担当の○○はただいま外出中です。よろしければご用件を承ります。
- 生憎その日は別件があり、他の業務に当たる時間を確保できません。翌日の正午までなら書類を提出できますが、いかがでしょうか?
「生憎ですがご期待には添えません」と断った上で、具体的な代案を出すとよいでしょう。上司から部下まで、会話でもメールでも使える丁寧な表現です。
ビジネスシーンにふさわしくない使い方
生憎という言葉の意味を正しく知らないと、間違った使い方をして印象を悪くしてしまう場合もあります。言葉を正しく身に付けるには、適切な使い方とともに、ミスしやすいパターンも知ると効果的です。
うっかり言ってしまいやすいNG例も見ていきましょう。
自分の都合で迷惑を掛ける場合
『生憎』はタイミングが合わなかったり相手の希望する状況でなかったりと、自分の責任ではない理由で相手の期待に応えられない場合に使う言葉です。
そのため、自分の都合で相手に迷惑を掛けているときには、ふさわしいといえません。かえって無責任な発言として、相手を不快にさせかねないことに注意しましょう。
体調不良で仕事の納期を守れなくなったなど、自分の都合で相手の期待に応えられないときは、素直に『申し訳ありません』と謝罪するのが適切です。
皮肉に聞こえて誤解される言い回し
『生憎』には、気を付けなければならない特殊な使い方があります。文脈によっては「相手の期待通りにいかなくて、いい気味だ」という、皮肉やあざけりの気持ちを表すのです。
たとえば、一見『生憎』を丁寧にしたように見える『お生憎様』は、よく皮肉として使用されます。ビジネスシーンでは避けた方がいいでしょう。相手に悪意と受け取られればトラブルの元になります。嫌みに聞こえそうなときも、無理に『生憎』を使わないのが賢明です。
自分の都合で断るときの言い回し
生憎という言葉は、自分の都合で断る場合にはふさわしくない言葉です。では、どのような言い回しなら、こちらの都合で断るケースでも使えるのでしょうか?相手を不快にさせずにうまく断る表現を、例文とともに紹介します。
謝罪しつつ断る表現
ビジネスでは、ただ断るだけで済ませてしまうときつく聞こえることがあります。クッション言葉で気遣いを表すのが上手な断り方です。クッション言葉の例には以下のような表現が挙げられます。
- 勝手を言いまして誠に申し訳ございませんが~
- お急ぎのところ恐縮ですが~
特に自分の都合で断るときは、先に『申し訳ございませんが』と謝罪を入れるといいでしょう。相手の気持ちを落ち着かせ、その後の人間関係の悪化を防ぐ効果があります。
感謝の意も伝えながら断る表現
「本当は受けたいけれど、断らざるを得なくて残念だ」という気持ちを表す場合には、感謝を述べるクッション言葉も効果的です。相手の申し出に謝意を伝えたいときは、次のような言い回しがあります。
- 身に余るお話で光栄なのですが~
- 大変ありがたいお話ですが~
断る前に、相手が誘ってくれたり期待してくれたりしたことへの感謝を表しましょう。シチュエーションにもよりますが、次の機会には希望に応えたい気持ちを表すと、より好感度が上がります。
構成/編集部