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総務省がキャリアショップの端末販売拒否にメス、回線と端末の完全分離は順調に進んでいるのか?

2022.07.22

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、端末の単体販売を拒否する携帯電話ショップへの総務省の姿勢について話し合っていきます。

※新型コロナウイルス感染拡大対策を行っております

ドコモの井伊社長自ら端末と回線のセット販売再開を求める

房野氏:端末の単体販売を拒否している携帯電話ショップが存在することを総務省が問題視しています。でも、安い人気端末を単体で購入し、転売して儲けるという、いわゆる〝転売ヤー〟のこともありますし、難しい問題ですね。

房野氏

法林氏:つまり、回線付きでも端末単体でも同じ値段で売れということで、現実的には相当難しい話。2022年6月にNTTドコモの井伊社長のインタビュー記事がいくつかのメディアに載っていたけれど、「もう一度、回線と端末はセットで販売するべき」とおっしゃっていた。回線を契約している人に対しては安く売る、そうじゃない人には高く売るようにしたいということだけど、それが一理あるタイミングになっているなと僕は思います。

法林氏

房野氏:今は回線契約付きだと割引が税抜き2万円までとなっているので難しいですね。

石川氏:完全分離じゃなきゃダメ、ではなくて、セット販売で割引をOKにする。韓国でも導入されていますが、使い放題プランなど高いプランを契約している人は端末価格を安く設定して、安いプランの人は割引しないとか、そういうやり方を導入してもいいんじゃないかなって思います。純粋にどちらかだけではなく、自由に売れるように。MNO4社があって、それぞれ経済圏があるんだから、楽天モバイルだったらポイントをたくさん付ける、auだったら住宅ローンを安くするとか、色々やり方があるじゃないですか。そういうもっと多様な売り方で競争させればいいのに、あまりにルールがガチガチ過ぎるので面白いことができない。転売ヤーに狙われている状態にもなっているので、そろそろ見直しが必要なんじゃないかって気がしますね。

石川氏

石野氏:井伊社長は、いろんな媒体で「セット販売に戻してはどうか」と言っていますが、そこまで大幅に戻さなくて、とりあえず2万円の割引額を少し引き上げるだけで改善する問題じゃないかなぁって気がします。販売拒否が起こるのは、単体で買おうとする人がいるから。一応、今でも回線契約あり/なしで割引額で最大2万円の差はついている。「2万円程度の差だったら単体で買うぞ」っていう人たちがいる。ということは、そこの割引額を4万円とかにすれば、「4万円だったら回線契約をしますよね」って話になる。やっぱり2万円というのが無茶というか、根拠なく決められた数字なので、まずそこを直した方がいいんじゃないかなって気がします。

石野氏

法林氏:もう1つね、きっと2人が怒るような方法があるんですよ。転売されるスマートフォンは割引かないようにすればいい。

一同:(笑)

法林氏:iPhoneは定価でしか売らない(笑)

房野氏:確かに転売されているのはほぼiPhoneですよね。

法林氏:ほかの端末は、もうどんどん割り引いていい(笑)

石野氏:井伊社長のインタビューを見ていると、中古端末の価格を下回る値引きはおかしいと発言していた。それをiPhoneに適用すると、1円になるどころか、今は為替の影響で買取価格がiPhoneの定価を上回ることがありますよね。

法林氏:割と安直に転売が増えていて云々という言い方しているけれど、反社会的勢力が関わっていると言われている。総務省として、それはなんとかしなさいとキャリアに対して言いたいところであって……原則を決めるにしても、いい加減な決め方をしちゃったから、こうなっちゃうよねって感じ。

石川氏:有識者会議でも転売が起こるってことは議論されていたと思うんですよ。それを押し切ったのが敗因。やっぱり悪いことを考える人はたくさんいるので……

法林氏:それにしても、井伊社長がああいう場、インタビューで発言したのは、正直、びっくり。またセット販売をできるようにした方がいいという言い方を、まさかするとは思わなかった。NTTドコモの責任者がそう言っている、しかも、今までのドコモの責任者とは違い、持ち株により近い存在ということを考えると、なにかあるのかなってちょっと思った。

石野氏:根回しされているんですかね。インタビューを読んで、「おや、そういう話が水面下で進んでるのか?」っていうのはちょっと思いました。

「完全分離」の見直しを検討すべきという声も

房野氏:総務省の有識者会議では、「ぼちぼち見直しもした方がいい」という有識者もいました。確かにこのままの状態だと、MVNOがMNPの弾として使われちゃうじゃないですか。あれはMVNOがかわいそうですよね。

石川氏:そうしたのは総務省ですからね。

房野氏:まぁ、そうなんですけど。

法林氏:2006年にMNPが始まったけれど、MNOからMVNOに動く場合は優遇するとか、そういう施策にすれば良かったと思う。例えばドコモからIIJに行く時には優遇しますと。逆に、IIJからドコモに戻る時は、例えばMNPの手数料を取っていいとか。弱者側を優遇、保護するような方向で制度を作ればよかったのに、そうしなかった。

房野氏:100万契約あればMNOと同じ規制がかけられてしまうし、MVNOは大変ですよね。

石野氏:違約金が1000円というのも、なぜそこに国が介入しているんだっていうのはあるかな。百歩譲って、電波を割り当ててるMNOの4社に対して、1000円なり撤廃だっていうのはわかるんですけど、MVNOに100万回線で規制をかけるのはちょっと……100万契約なんて小規模じゃないですか。

法林氏:MNOと桁が違う。

石野氏:そう、桁が1つ違う。それなのに同じ義務を課すのはどうなのかな。契約解除料が2年契約で1万円とかだったら、まぁそんなにMNPの弾にされることはないですよね。楽天モバイルも「楽天挟み」っていうキーワードがあるらしいですけど。例えばドコモユーザーが端末を買い換えたい時に、1度楽天モバイルにMNPして、そこからドコモに戻ってくるとMNPの割引を受けて端末を買える。という裏技を、ショップ店員が案内せざるを得なくて苦しいっていうことが、大手新聞の記事にありました。それが通称、楽天挟みって言われてるらしいですが、これも違約金があれば回避できる問題。

石川氏:かつて、キャリアには自分たちを守るためのいろんなルールがあった。国や競争政策によって、ユーザーが乗り換えやすい方向に振られてしまったために、こんな混乱が起きた。こういったごちゃごちゃした状況は総務省が色々言うものでもなく、市場の原理に任せるしかないんじゃないのかなぁと思います。

法林氏:総務省にはほかにやることがあるだろうって気がするんですよね。確かにユーザーは移行しやすくなったけど、大手キャリアでいいと思っている人はそんなに動かない。むしろ、強制的に料金を下げさせるためにどうしたらいいかってことを考えた方が、動くこと以上に大事じゃないかな。電波を割り当てているのだから、「去年より10%安くしろ」ぐらいのこと言ってもいいわけですよ。5G基地局の開設状況、5G基盤展開率を出していたり、人口カバー率も含めてだけど、ああいう比率を出しているわけだから、例えば料金の値下げ率も、頭のいい大学の先生に計算してもらって、それにそぐわない場合は免許割当の時の評価点数を引いたりしてもいい。

石野氏:確かに、電波の有効活用の視点からできそうですね。

ユーザーがごそっと移行する可能性と影響

石川氏:本当に乗り換えしやすくなって、楽天モバイルの0円廃止で仮に3割ユーザーがいなくなったら、150万人が一気にMNPで契約を変更する。みんな0円でしか使っていないのであれば影響はないかもしれないけれど……

法林氏:プラスですよ。経営としてみた場合は、極めてプラスです。ただ、成長性という部分に関しては、可能性のある人を失うわけなのでマイナスかもしれないけれど、それって選択と集中の話じゃないけれども、「今までは山手線の1駅ごとにお店を出していたけれど、この駅はお客さんが来ないから閉店して、新宿を東口と西口の2店舗にしよう」という考えと変わらないわけですよ。

石川氏:楽天モバイルと同じことがほかのMNOにも起きるかもしれない。例えば、以前、ahamo発表の後にauが新料金の発表会をしたら、期待していたものと違って「さよならau」と炎上した。契約解除料も2年縛りもないから、みんな一斉にauを辞めようとなって仮に1割辞めたとしたら何百万人といなくなるわけじゃないですか。そういうリスクがすごく大きくなっていると思います。かつては2年縛りや解除料があったから、そういうことがあっても炎上が収まれば、多少解約する人がいるにしても、なんとかなった。だけど今後、プロモーションに失敗したり、ネットワーク障害が起こって使えなくなった時に、ユーザーが一斉に解約するってことになったら、経営計画が根本から崩れると思う。

法林氏:そこは携帯電話事業者として頑張らなきゃいけないところ。実際、「さよならau」の時はそれほど減っていない。

石川氏:減る可能性が高くなるってことですよ。

石野氏:可能性はあるけれど、それは自業自得なので。そこはそうならないように頑張るべき。

石川氏:ユーザーがごそっといなくなる可能性、リスクがあるわけですよ。となると、設備投資とかもしにくくなるんだろうなっていう気がしていて。

法林氏:楽天モバイルの件は、楽天経済圏への寄与が少ない人が減るという格好なので、経営的には僕はプラスだと思う。ちょっと残念なのは、「楽天モバイル、0円だからいいか」と思っていた人が楽天の証券や銀行から離れているケースがある。それはまぁ、そうなりますよね。楽天モバイルが0円をやめて構成を見直したのは僕はプラスだと思うけど、それをグループ全体の成長につなげていけるかどうかは、またちょっと別の話だよね。

……続く!

次回は、KDDIの大規模通信障害について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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