MHD モエ ヘネシー ディアジオは、究極のアイラモルト『アードベッグ』がリリースした、カスクの中で最も古く唯一無二の1975年製カスク『アードベッグ カスク No.3』をアジアの個人コレクターに1600万ポンド(日本円:約26億円)で売却した。今回の販売は、ウイスキーのカスク史上でもっとも高額での取引となった。
『アードベッグ カスク No.3』は、アードベッグ蒸留所の2度の閉鎖を乗り越えた、唯一無二の1975年製カスク。1970年代にはシングルモルトがほとんど造られず、1980年代と1990年代にはアードベッグ蒸留所が閉鎖されていた時期があり、アードベッグがリリースしたカスクの中でもっとも古く、類を見ないほど貴重なものだという。今回の『アードベッグ カスク No.3』の個人売却は、アードベッグの約200年の歴史において、これまでのシングルモルトカスクのオークション記録をはるかにしのぐ特別なマイルストーンとなった。
グレンモーレンジィ社のトマ ・ モラプールCEOは、今回の売却について「私達のこれまでの道のりを支えてくれたアードベッグコミュニティの全ての人にとって、誇らしいことだと思います。わずか25年前、アードベッグは存続の危機に瀕していましたが、現在では世界でもっとも人気のあるウイスキーのひとつとなっています。スモーキーなスピリッツを生み出す蒸留所スタッフから、何十年にもわたって樽を管理する熟成庫スタッフ、そしてファンやバーテンダー、コレクターの間でこのウイスキーの評価を高めることに貢献してくれている世界中のチームに至るまで、何世代にもわたる努力の結晶がここにあるのです」とコメントしている。
アードベッグがリリースしたカスクの中で最も古く、唯一無二の1975年製カスク
『アードベッグ カスク No.3』
このカスクは、熟成年数、希少性、味わいのクオリティーの並外れた組み合わせを実現。アジアの個人コレクターに売却された『アードベッグ カスク No.3』は、そのオーナーのために5年かけてボトリングされるという。アードベッグ蒸留所のメンバーは、オーナーに代わってアイラ島の安全な場所で『アードベッグ カスク No.3』の熟成を続け、1975年の希少なアードベッグの46、47、 48、49、50年熟成を提供。最後のボトルは、50年熟成のアードベッグとしてさらなる味わいの複雑さと深みを増していく予定で、少なくとも今後10年間は再現不可能な唯一無二のアードベッグコレクションになる。
テイスティングノート
色調:深いブロンズ色
アロマ:ブラジルナッツとトフィーの香りが広がり、亜麻仁油、カシスの花の香り、甘く芳しいピートスモークとタバコのニュアンスが感じられる。加水するとライムやフェンネルなど、さらに複雑な香りが広がる。
味わい:複雑で豊か、そして驚くほどエレガント。スペアミントのトップノートに、ラプサンスーチョン茶、ビスケット、優しいタールのニュアンスが感じられ、エスプレッソコーヒーと塩キャラメルのタフィーの風味が重なり合う。
フィニッシュ:タール、スモーキーノート、オークの贅沢なハーモニー。
1975年11月25日に蒸留されたスモーキーでバランスのとれた『アードベッグ カスク No.3』のスピリッツは、バーボンとオロロソシェリーのふたつの樽で熟成。これらのカスクは、アードベッグの熟練の職人たちによって38年以上にわたって辛抱強く熟成を重ねてきている。アードベッグ最高蒸留・製造責任者のビル・ラムズデン博士は、このふたつのカスクを組み合わせて、さらに特別なシングルモルトを造ると決断。その誕生から46年以上経った今日、このシングルモルトは、シェリーの特徴、スモーキーな香り、豊かでエレガントな味わいが融合したウイスキーになっている。世界的に有名なウイスキー専門家のチャールズ・マクリーン氏は「歴史が刻まれた液体、驚異的な作品」と評している。
ウイスキーに革命を起こすサイエンティスト
ビル・ラムズデン博士
アードベッグ最高蒸留・製造責任者
アードベッグとグレンモーレンジィ蒸留所の最高蒸留・製造責任者として、すべてのウイスキー造りに携わっている。バイオケミストリー(生化学)の博士号取得という科学のバックグラウンドとウイスキーに携わってきた経験、芸術的センスによってその才能を発揮し、世界屈指のウイスキークリエイターとして数々の賞を受賞。ウイスキー界に革命を起こし、その名を馳せている。常に「もしもならば 」という固定概念を崩す発想の持ち主で、その柔軟なアイデアで、 ウッド・マネジメントのパイオニアとして厳選されたさまざまな樽を用いた実験的な試みや追加熟成の技術などで広く知られている。世界中のワインやスピリッツの産地を旅して周り、ウイスキーに独特の個性を与える最高の樽を求め続けている。
「『アードベッグ カスク No.3』は、アードベッグ史上最高の味わいです。アロマはナッツ、ハーブ、スモーキーで、タール、 エスプレッソコーヒー、スペアミントの風味は、この年代のウイスキーとしては驚くほど繊細です。この時代の原酒はほとんど残っていないため、このカスクはまさに唯一無二。その複雑なフレーバーは、何十年にもわたってこのカスクを管理してきたアードベッグチームの並外れた技術の証しです。この先5年間、どのように進化し続けるのかますます楽しみです」(ビル・ラムズデン博士のコメント)
アードベッグについて
1815年にスコットランドのアイラ島で生まれたシングルモルトウイスキー。ピートが非常に強くスモーキーでありながら繊細な甘さと高い品質で人を魅了してやまない風味は、ピーティーパラドックスとの愛称もある。クセになる個性的な味わいから「アードベギャン」と呼ばれる熱狂的なファンに愛されるカルト的な存在であり、世界130か国以上、15万人のコミュニティーメンバーに支持される世界でもっともピーティーでスモーキーな究極のアイラモルト。今回の販売による利益の一部である100万ポンド(約16億円)は、カスクを何世代にもわたって大切に扱ってきた蒸留所のスタッフに敬意を表し、アイラ島の活動を支援するために寄付する予定だという。
構成/KUMU