今年は6月からすでに全国的に猛暑日が観測され、東京では35度を超える日も続いた。こんなに暑いと、雨があけたらさっそく海水浴へ行こうと思い立つ人も少なくないだろう。しかし、これから海に行く人に気をつけて貰いたいことがある。
2022年7月初旬に投稿された、あるツイートが大きな反響を呼び、現時点で7.2万いいね、3.1万リツイートされている(2022年7月12日現在)。その内容は下記である。
「江ノ島の海水浴場にカツオノエボシが大発生していてヤバいです。海開きで家族連れも大勢訪れています。素足で遊んでいる子供も多く見かけるので不安です。」
このツイートは海の生き物に詳しい「うえひろ」さん(@uehiro_sakana)による投稿で、美しい青色をした不思議な生物の写真が添付されていた。
「カツオノエボシ」を知らない人多し!
うえひろさん提供(以下同)
うえひろさんのツイートにはたくさんのリプライがあり、中には「どういう生物なのか分からない」「刺されたらどうなるんですか?」というような内容も多く見られた。そういう筆者も「カツオノエボシ」がなんなのか知らない者のひとり…。しかし、ツイートの内容から危険であろうことは想像できた。
うえひろさんが撮影した写真のカツオノエボシは生きているとのことで、撮影時は触手も動いていたという。素手では危険なためピンセットを使って拾い、撮影用に観察ケースに入れて写真を撮ったのだそう(危ないのでマネはしないようにしましょう)。撮影後は危険なため、人がいない場所に返したとのこと。海の生物に幼少から興味があったうえひろさんは、カツオノエボシについて以前から知っていたという。
「初めて知ったのは幼稚園児の頃に『水の生き物』の図鑑を読んだときです。当時、危険生物に興味があったので印象に残っていました。」
興味を持っていなければ、なかなか知る機会が少ない生物かも知れない。
カツオノエボシの危険性
カツオノエボシがどのように危険なのか、うえひろさんと同様に注意を促すツイートをしていた「かながわ海岸美化財団」(@bikazaidan)に話を聞いた。かながわ県美化財団は1991年に設立し、横須賀市走水海岸から湯河原町湯河原海岸までの150㎞の海岸を年間通して清掃するなどの活動を行う、日本で唯一の海岸美化専門の団体である。
かながわ海岸美化財団によると、カツオノエボシとは、触手に強力な毒を持つクラゲであり、普段は沖合に浮かんでいるとのこと。しかし南風にのって海岸に吹き寄せられてくることがあり、刺されると非常に危険な生物だという。
「刺されると電気ショックを受けたかのような激痛が走り、アナフィラキシーショックで死に至る場合もあります。透明な青色がキレイで、お子様などはつい手を伸ばしがちですが、死んで海岸に打ちあがっても触手の毒は強力に残っていて非常に危険です」
「カツオノエボシ」にどう気をつけるべき?
これから海水浴に行きたい方々は、「カツオノエボシ」にどのように気をつけたらいいのだろうか。かながわ海岸美化財団にうかがった。
「まずは遊びに行く海岸の最新情報をチェックして、カツオノエボシが漂着している情報があるときは、十分に注意する必要があります」
また、カツオノエボシの毒は、風船状の本体ではなく、見えづらい触手にあるという。
「海岸でカツオノエボシを発見した場合は、触れないのはもちろん、近づかないようにするのが一番です」
もし刺された場合は、真水ではなく、海水で洗い流した後、速やかに病院へ行くのが良いとのこと。真水だと悪化する恐れがあるという。
「カツオノエボシ」を初めて耳にしたという方も(Twitterの反応を見る限り)少なくないようだ。しかしカツオノエボシは毎年、夏が始まる頃に漂着することが多く、確認されるのは珍しくないとのこと。ただ今年は特に多いようだ。「十分に気を付けていただきながらも、夏を楽しんで」とのコメントをいただいた。
今年は暑く長い夏が予想され、海水浴を楽しむ方も多いと思われる。「カツオノエボシ」は見た目が美しいため、ついつい近寄りたくなってしまうが、危険な毒を持った生物だ。特に親子で行かれる方は、お子様が触ってしまわないように注意していただきたい。
取材・文/まなたろう
画像提供/うえひろ(@uehiro_sakana)