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アクセンチュアがメタバース上で発表した4つのテクノロジートレンド

2022.07.16

デジタル、クラウド、セキュリティ領域などで高い能力を持つグローバル企業のアクセンチュアは、これまで『Technology Vision』として数千人規模のグローバル調査から世界のテクノロジートレンドを年次で予測してきた。22回目の開催となる今年は、日本を含む35か国、23業種4650名以上の企業幹部へのグローバル調査を実施し、そこからメタバースをテーマにしたこれからの企業が押さえるべき4つのトレンドを定義して発表した。今回の発表では、新たな試みとして『Cluster』を活用したメタバース空間で開催されたことも注目ポイントだった。プレゼンターの山根圭輔氏は、メタバースに用意された会場にアバターで登壇してVR視聴にも対応。参加者もアプリに用意されたアバターを使って会場に参加して視聴するスタイルで行われた。バーチャル会場内にはリリースやプレゼン資料などのダウンロードリンクが用意されており、そこからデータを入手することができた。

今回のプレゼンで利用されたのは『Cluster』を使ったメタバース会場。パソコン、スマートフォン、タブレットなどでアプリを使って参加することができ、対応VRゴーグルを持っていればVRによる視聴もできた。希望者は『ZOOM』による参加も可能だった。

プレゼンターは、アクセンチュア/テクノロジーコンサルティング本部インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービス グループ共同日本統括マネジング・ディレクターの山根圭輔氏。メタバースでアバターを操作するために、VRゴーグルやプレゼンのための機材を装着して「ケーブルに絡まれた状態」(山根氏)でプレゼンした。

プレゼンの冒頭では、『Technology Vision』の最近6年の変遷が紹介された。これまでのテーマは3年1セットになっているイメージで、2016年から3年間は「“ひと”中心にテクノロジーを活用すべし」として、デジタルは”ひと”こそが最優先だと提唱。2019年からはデジタルの時代が終わって「ポスト・デジタル時代の到来に備えよ」として、企業は「テクノロジー企業」にならないといけないと提案し、それを推進するリーダーシップ論として「テクノロジーCEO」を定義して発表した。そして2022年からは新シリーズとして、企業がテクノロジー企業になったら次に備えるべき技術革新とフロンティアは、メタバースにあると語った。

「全世界の企業幹部にヒアリング調査をした結果でも長期戦略の立案において、経済、政治、社会よりもテクノロジーの進歩を信頼するという意見がほとんどで、なおかつ71パーセントの企業幹部が「メタバースが自社にポジティブなインパクトをもたらす」と回答しています。メタバースとは、『現実世界から完全仮想世界まで、その中間にまたがる連続的な共同体験において、「ブラウジング」から「参加や居住」の場へと移行可能なインターネットの進化系』と考えています。いわゆるVR空間をメタバースと狭義では言いますが、アクセンチュアでは、現実と仮想空間が連続的で共有体験できるところに非常に重きを置いて、『Metaverse Continuum(メタバース連続体)』として捉えています」(山根氏)。

さまざまなテクノロジーによって人々の体験のあり方が変わりつつある中で、企業は従来の事業計画とは全く異なる未来に向かって競争を始めているという。そういった中で今年は、「メタバースで会いましょう‐ビジネスを再創造するテクノロジーと体験の融合(Meet Me in the Metaverse:The Continuum of Technology and Experience Reshaping Business)」と題して、「メタバース連続体」を支える4つのテクノロジートレンドとして、「WebMe」、「プログラム可能な世界」、「アンリアル」、「不可能を可能にするコンピューティング」が解説された。

トレンド1:『WebMe』――メタバースの中の「私」(WebMe: Putting the Me in Metaverse)

企業は現在のインターネット技術を踏まえて戦略を策定しているが、デジタル世界においてプラットフォームの相互運用性やデータの可搬性はまだ十分ではないという。そして『WebMe』は、”Web3”やメタバースなどの技術によって、自分のデータを自分自身がオーナーシップを取って管理し、さまざまな分散した空間を往来しながらサービスを受けられる世界を示している。これまで国家、大企業、銀行など中央集権的な存在が担保して、利用者はID、パソワード、決済情報などを預けてサービスを受けるしかなかったが、Web3の技術でビルドインされた分散化したデータレイヤーでは、自分自身がオーナーシップを取って自分で管理しながらサービスを往来できるようになる。ちなみにアクセンチュアでは、Web3について「分散したデータ層をインターネット上で構築していく新たな取り組みで、データの出所、真正性、価値を確立することでウェブ全体に信頼のレイヤーを生み出すことが重要なポイントと考えている」(山根氏)という。

Web3やメタバースは、さまざまなサイトやアプリの集合体ではなく、歩いて部屋を移動するぐらい簡単に、場所から場所への移動を可能とする一貫性のある三次元空間になっていくとも予測している。今回の調査でも企業経営層やIT担当幹部の95パーセントが「将来のデジタルプラットフォームでは、一貫した体験を提供し、異なるプラットフォームや空間における顧客データの相互運用を実現する必要がある」と答えているという。

Web3のデータ基盤で「ブロックチェーン」の技術が伸びて、いま盛り上がっているNFTでデータ自身の真正性を担保し、仮想通貨とNFTが紐づくことで情報に価値を付与できる「デジタルアセット(デジタルの価値・資産)」という考え方も注目ポイントだった。デジタルアセットは、物理的アセットである土地や物などを超えるぐらいまで価値を高める可能性もあるという。さらに非中央集権化してプラットフォーマーの中央集権から抜け出して、自分たちのメタバースを自分たちで分散型の自立した組織(DAO=Decentralized Autonomous Organization:分散型自立組織)として運営していく動きも始まっているという。

今後は、Web3によってデータの出所、真正性、価値が確立された信頼のレイヤーがウェブ全体に広がり、それによってデジタルアセットの価値が高まると予想される。データ所有権をユーザーが取り戻す技術やWeb3のサービスなど相互運用性を高める技術が、エンタープライズ企業には、ますます重要になってくるという。

『WebMe』に関連するメタバースの事例として、エピックゲームの『フォートナイト』が紹介された。5億人を超えるプレーヤーがオンライン上に存在し、ゲームではなく社会性や経済性を持つコミュニティになっている。コンサートでは数千万人が視聴し、自分で作ったクリエイティブをシェアするコミュニティもあり、最近ではウクライナの人道支援の寄付が一瞬にして集まるなど社会性を持つようになっている。

トレンド2:『プログラム可能な世界』――世の中をパーソナライズする(Programmable World: Our Planet, Personalized)

5G通信、アンビエントコンピューティング(環境に溶け込んだコンピュータ)、拡張現実、スマートマテリアル(知能材料)など新興テクノロジーが進化し、デジタル環境が現実世界に編み込まれている環境では、人々が世の中と繋がる方法や内容が変わるだけでなく、人々の感覚や交流方法やコントロールする方法が一新されるという。『プログラム可能な世界』とは、「デジタル革命の最後にして最大のフロンティアである物理世界をパーソナライズしていこうという考え方」(山根氏)で構築される世界。

従来のデジタル技術では仮想空間の出来事から現実世界へ与える影響に限界はあるが、リアルに生きている物理世界でもパーソナライズ・自動化・カスタマイズできる「プログラム可能な世界」にしていくことが求められていくという。現実世界と仮想世界がシームレスにつながってパーソナライズされていく世界を作ることが次のフロンティアだと山根氏は語る。調査では92パーセントが「先進企業が仮想世界の垣根を取り払い現実に近づけることで、仮想世界と現実世界の一貫性に対するニーズは高まるだろう」(山根氏)と回答しているという。

今までも車いすの人が海外旅行で夕食にレストランに行きたいと思い、イヤホンでAIアシスタントに自分の希望を伝えると近くのレストランが紹介されるなどは可能だった。それが「プログラム可能な世界」では、予約するとARレンズがレストランまでのルートを歩道上に強調表示で道案内して、レストランに到着して車いすを入口に向けると、ドアへの小さな階段が自動的に平坦なスロープに変化するというような、シームレスに実世界とデジタルがつながったサービスも可能になるという。

そこで重要なのが「デジタルツイン」という考え方。リアル空間の情報を集めて、そのデータを元に仮想空間でリアル空間を再現する技術で、すでに大きな注目が集まっている。「実現には2つのポイントがあります。ひとつが「デジタルツイン・ドリブン」という発想をあらゆるビジネス活動の変革に向けた核(フレームワーク)にするという考え方。「デジタルツイン」という考え方はいろいろなところで広がっていますが、まだ「As-Is(局地的デジタルツイン)」にとどまっています。新しい「To-Be(デジタルツイン・ドリブン)」では、これから作っていくあらゆる企業活動・商品をすべて「デジタルツイン」ありきで考えて、現実世界と同時に仮想世界を作っていく発想の転換が必要になってきます」(山根氏)

「プログラム可能な世界」を構築するためには、「コネクト」「エクスペリエンス」「マテリアル」という3つの層で構成する必要があるという。1つめの層である「コネクト」は超高速の5GのネットワークやIotデバイスの相互接続が普及することによって、環境にコンピュータが溶け込むようなアンビエントコンピューティングの世界で、文脈や環境に反応して表示情報を制御・変化させる技術「コンテキスト・アウェア・コンピューティング」。2つめの層である「エクスペリエンス」は、あらゆるところに作られた「デジタルツイン」とARを組み合わせることでデジタル体験を物理世界に溶け込ませること。3つめの層である「マテリアル」は、可変性のある素材技術やデジタル素材で物自体をカスタマイズしていくこと。デジタルから自由に操作できる新素材がシームレスに物理世界とデジタル世界をつなぐ形になるという。

「この3つの層に対する取り組みが必要になり、これをそろえた上であらゆるビジネス活動、経済活動、組織活動、人の活動などが「デジタルツイン・ドリブン」でありきで考えていくことが重要になってくる。物理世界が次のデジタルのフロンティアで、仮想世界との地続きの「プログラム可能な世界」にしていくためには、「デジタルツイン・ドリブン」という発想でビジネスを立ち上げて、「コネクト」「エクスペリエンス」「マテリアル」という3つの層でプログラム可能な世界を構築していく発想が必要になってくきます」(山根氏)

トレンド3:『アンリアル』――本物の世界を人工的に作る(The Unreal: Making Synthetic, Authentic)

さまざまな業界や企業では、AI(人工知能)が生成する現実世界を反映したデータの利活用を進めていく動きが加速している。そんな「アンリアル」が現実世界に溶け出し始めている中で、リアルとアンリアルの境界線や善悪についても課題がありそうだ。企業や消費者が企業のコンテンツやアルゴリズム、ブランドそのものに関して、リアルかフェイクではなく信頼のおける本物であるか否かを重視しており、AIの活用はこれまで以上に企業の最重要課題となっているという。実在しないアンリアルな世界が現実となりつつある中で、企業も準備を進める必要がありそうだ。すでに96パーセントが「データの出処やいつわりのないAI活用の立証に取り組んでいる」と答えている。

山根氏は、プレゼンで「本物がどっちで良い悪いはどっちという話ではなく、人間はアンリアルなものにも感情移入ができます。リアルとアンリアルが混在する社会で納得感を得るためには、「オーセンティシティ(ホンモノ感)」が重要になってきます」と語った。そして「ホンモノ感」の醸成には、一貫して目的・共感性のある「ストーリー」が重要になってくるという。その裏付けとなるのが「出所の保証」「社内の統制」「法整備への協力」の3つで、これらが下支えして「オーセンティシティ」を高めるストーリーを構築していく必要があるという。

「アンリアル」の事例としては、すでにいい例と悪い例が出始めている。英国慈善団体『Missing People』は、行方不明者の写真から生成した人工的な動画を作成。さまざまな表情が見えるので行方不明者の判別がしやすいと注目された。『トップガン・マーベリック』に前作と同じ役で出演した俳優は、すでに喉頭がんで声帯を失っていたがAI技術で自分の声で会話できるように復活させて映画出演を果たした。悪い面としては、ウクライナのゼレンスキー大統領のニセ動画で国民に降伏を呼びかけるフェイク動画がアップされてしまう事件もあった。さらに大手銀行でAIが顧客の声を完コピして支店長をだまし、40万ドルを送金させる詐欺も起こっている。

リアル感が欠如したモラルハザードが巨大テック企業では起こっており、倫理観点でチェックする機能を設置して社員に対する倫理観教育も必要になっている。ソニーでは、従来の品質管理プロセスにAI倫理審査を導入して社内統制をしている。Schooは、AI倫理を学ぶための動画授業のようなものを一般公開。法整備への協力に関しては、新しい世界なのでさまざまな課題もあるが、一般企業が作っていく中で出てきた課題をまとめて法整備に提言する「バーチャルシティコンソーシアム」が都市連動型メタバースの利活用に向けたバーチャルシティガイドラインを発表し、法整備の課題提起をしている。

AIによって創り出される「アンリアル」は、五感すべてに押し寄せており、リアルと見極めることは困難になりつつある。そこではリアルかアンリアルかよりも「ホンモノ感」が重要で、それを下支えするのが「ストーリー」だという。そのために「出所の保証」、「社内統制」、「法整備への協力」などについて企業は深くコミットしなくてはいけなくなっていくと山根氏は語った。

トレンド4:『不可能を可能にするコンピューティング』――新たなマシンが可能性を切り開く(Computing the Impossible: New Machines, New Possibilities)

多くの経営幹部が『HQB』と呼ばれる「High Performance Computing(HPC:高性能コンピュータ)」、「Quantum Computing(量子コンピュータ)」、「Biology-inspired Computing(生物学的コンピュータ)」などの次世代コンピューティングのパワーに大きな期待をしていて、これらはメタバースの基盤技術にも活用されていく流れがある。「HPC」には、従来型の高性能コンピュータだが単体型として目的特化型の高性能チップを独自開発して自社製品に組み込むタイプと分散型で汎用型の安価なチップを並列処理や分散処理に活用してハイパフォーマンスを出させるタイプがある。

前者は、Teslaが自動運転車に自社開発チックを搭載して差別化を図っている例がある。後者は、並列分散科学計算として『COVID19』のたんぱく質の構造解析に貢献した。「量子コンピュータ」は、一番ホットな形で日進月歩で統治・改善されており、「生物学的コンピュータ」はアイデアの学術的検証が進んでいる段階で、まだこれからの分野だ。これらの新たなコンピュータの勃興により、さまざまな業界でコンピュータによる解決能力の限界が広がりつつあるという。一方で「量子コンピュータ」や生物学に基づくコンピューティングなどの手法によって、従来のコンピューティングでは費用や効率性がまったく見合わなかった困難な課題を企業が解決できるようになったという

アクセンチュアの調査では、企業幹部の94パーセントが「難解に見える課題の解決に向けて次世代コンピューティングを活用することが長期的な成功を左右する」と回答している。これまでのカタログスペック神話である「CPUの性能が×倍になったから●●が可能になる」、「通信速度が×倍になったから●●が可能になる」というような簡単な話ではなく、何を実現したいかという観点で業界全体に共通する構造変化を特定して自社固有のユースケースを定めて現行資産(人と技術)を評価し、技術投資の優先領域を定めて人材採用を推進。パートナーシップを探索してさらに機能強化していく。このステップをぐるぐると回しながら次世代コンピューティングを自分のものにしていくことが重要になってくるという。

山根氏によると「メタバース連続体」として3つの連続性の定義をした時に、「テクノロジーがつながる」、「仮想と現実が行き交う」、「顧客体験と企業の役割が広がる」がきれいにマッピングできるという。これからはメタバースに飛び込んで、顧客とともに変化して「デジタルツイン・ドリブン」という思考の型に組み込み、言行一致で「ホンモノ感」に取り組んでいく。その上で活用可能なユースケースや新しい次世代コンピューティングを活用可能か考えていくことがビジネスでは重要になってくるという。

「「デジタルアセット」が価値を持ち、個人の能力を拡張するメタバースが求められていきます。「WebMe」では非中央集権化で「私」が中心になっていき、「プログラム可能な世界」では「私」に最適化されて個人が自由に使えるデジタルツインが広がっていく。「アンリアル」では、さまざまな「デジタルアセット」が個人の力で生成・評価されて個人が価値を決めていく。そういう時代に物理世界にいる企業は、「個人に力を持たせない」と対抗せずに個人をエンパワーすることが求められるようになります」(山根氏)

これからはテクノロジーによって担保された「私」の存在価値が現実でも仮想空間でもシームレスになり、さまざまなサービスが相互連携していくと予想される。いま注目されるメタバースやWeb3の可能性を広げるためには、企業が取り組むべきテクノロジートレンドは多そうだ。

https://www.accenture.com/jp-ja/insights/technology/technology-trends-2022

構成/久村竜二

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