おじさん達の賭け事だった麻雀が、今、そのイメージを変えて人気ゲームスポーツになっていた!特に若者層や女性からの注目が、高まっている。その背景には麻雀のプロリーグ「Mリーグ」の誕生があった。
Mリーグではユニホームを着用して対局する競技で、「賭けない」「飲まない」「吸わない」のがルール。1 チームは必ず男⼥混成が義務付けられており、若い⼥性が対局に登場するため、同世代の女性ファンも獲得している。
特に実況のおもしろさはゲーム実況にも負けず、麻雀初心者でも競技を楽しめる。スマホやタブレットなどで気軽に⿇雀が楽しめるゲームアプリも続々登場して、若者層が⿇雀に熱中できる環境が整った。
今回はプロチーム・KADOKAWAサクラナイツに所属し、Mリーグ優勝の立役者となった堀慎吾さんに、新しい麻雀の魅力とMリーグについて解説してもらおう!
チケットは即完売のMリーグ戦
――堀さん、盛り上がっていますが、簡単にリーグについて教えていただけますか?
堀さん Mリーグは2018年にスタートした競技⿇雀のプロリーグ戦です。最⼤4⼈で1チームを組み、合計8チームによって優勝が争われます。従来の麻雀は「個⼈戦」のイメージですが、これをチームスポーツ化することで、プロ野球やJリーグのように応援したいチームや選⼿など、「推し」が現れ、⿇雀ファンが増えました。
特にチームでは男⼥混成にする規定があるため、若い⼥性プロの活躍も⽬⽴っています。スーツ姿で対局するのではなく、ユニホームを着用して打つ競技になったことでもスタイリッシュさが増して、若者層や⼥性にも広まっています。
前回の2021~22年のシーズンで4シーズン⽬を終えた Mリーグはインターネット TV「ABEMA」で放映されたほか、スマホやタブレットなどでも視聴可能となり、視聴者数は年々伸びています。
4シーズン目の開幕戦では 150 万人が視聴し、同ファイナル最終戦は 300 万人を超える視聴と、爆増しているような状態です。別会場で対局を視聴するパブリックビューイングも盛り上がっていて、決して安くないチケット(8,000円~9,000円ほど)にもかかわらず、チケットは即完売でした。会場には家族連れや若いカップルの姿が多く、新規ファンの増加を肌で感じています。
なかなかなれないMリーガーへの険しい道のり
――参戦する選手について、教えてください。
堀さん リーグに参戦できるのは⿇雀界で活躍するトッププロのみです。チーム編成がある場合にも、ドラフト会議で指名されないと、チームに所属できない仕組みです。私は2020年のドラフト会議で、KADOKAWAサクラナイツからの唯一の指名選手でした。
Mリーグは麻雀プロのリーグ戦なので、普通に麻雀が上手な人ではMリーガーになることはできません。プロであっても、今のところドラフトでノミネートされるのは
・日本プロ麻雀協会
・日本プロ麻雀連盟
・最高位戦日本プロ麻雀協会
・麻将連合-μ-
・RMU
この5団体に所属するプロ選手となっています。Mリーガーが日本でも最高峰の、選ばれたトップ選手と言われる理由のひとつです。
このドラフトでのノミネートは単に麻雀が強いだけで選ばれるわけではありません。選ぶ側の企業がメリットを感じるような選手でなければならないのです。競技ではため息をついたり、小手返しは禁止されています。こうした見ている人や対戦相手を不愉快にさせるような行動をするプロは、強くても選ばれないのです。
Mリーガーは男性プロだけでなく、女性プロもいらっしゃいます。経歴も麻雀手法もそれぞれ個性的です。TEAMRAIDEN/雷電の⿊沢咲選⼿は「セレブ⿇雀」と呼ばれる独⾃の打ち筋で 3シーズン連続で3桁プラスの好成績を収めて、大人気です。KADOKAWAサクラナイツの岡田紗佳選手はモデルやタレントとしても活躍されています。
――このほど、Mリーグをもっと楽しく観ることができる堀さんの新刊「麻雀 至極の戦略」(KADOKAWA発刊、定価1700円+税別)が発刊されました。強いと言われる堀さんの技の一端を知ることができる一冊ですね。
堀さん 前著の『麻雀 だから君は負けるんです』(竹書房発刊)で、自分の麻雀に対する基本的な考えや知識についてはすべて書いてしまったので、今回はMリーグでの実戦譜を通して、私自身の打ち筋や考えについて解説しています。これによって麻雀の「自由さ」を伝えたいと思いました。
麻雀の面白さは、自由なところです。よく「この手牌はこれを切らなきゃいけない」とか「こんなことをしてはいけない」ということを言われたり書かれたりしています。でも、それはその人の考え方であって、麻雀はすごく自由だということを、書きました。その自由さを一人でも多くの読者の方に共感していただきたいです。
――書籍では35個の極意が語られていますが、その中で一つ、大切だと思われる極意を紹介していただけますか?
堀さん どれかと言われたとき、頭に浮かんだのは「極意」ではなく「コラム」です。本書のP129のコラム4がいちばん重要かなと思います。
このコラムに補足するならば、自分が正しいと思っている麻雀がズレている可能性があることに気づこう、ということです。
ほかの人の麻雀を見て、自分とまったく違う選択をしたのに結果がよかった場合は、その人が場面ごとに正しい選択しているかもしれないし、自分が思っている選択よりもいい選択が含まれている証拠。なんでも否定から入るのではなく、自分の考えに固執したり、常識にのっとりすぎたりしないで、「意外とこういう選択もアリじゃないか?」と考える癖をつけることが大切ということです。
自分と全然違う麻雀を打っている人がヒントをくれることがある、と受け入れられれば、もっと麻雀の幅が広がるはずです。
――最後に堀さんに、1)Mリーグをもっと楽しむコツ、2)これから麻雀をやってみようと思っている@DIMEの読者の方にアドバイス、この2点を教えてください。
堀さん
1)Mリーグをもっと楽しむコツ
Mリーグを初めて見るのであれば、推しチーム、推し選手を作ることが第一かなと思います。それで見る楽しさがかなり変わってくるはずです。それでMリーグを見ていくうちに麻雀についての知識が増え、その後はどんどんMリーグ全体を楽しめるようになっていくと思います。
2)麻雀初心者へのアドバイス
「とにかくこれはこうする」という決めつけをしないで、いろんなことを試してみてください。最初から、経験者と打って勝ち越すのは難しいものです。でも、将棋などとは違って、必ず負けるゲームでもないところが麻雀のいいところ。
回数をこなして、いろいろなことを試してみる。例えば、しょっちゅうポンチ―をする人ならば、鳴かないで打ってみるとか。逆に鳴かない人なら、ポンチ―してみるとか。とにかくいろいろ経験をしてみること。そのなかで自分に合った打ち方を探していくと、より麻雀が面白いものになると思いますよ。
――ありがとうございました。
これからますます活況が予想されるMリーグ。その中心人物である堀慎吾さんの戦術・戦略が学べる新刊書「麻雀 至極の戦略」。リーグをもっと楽しむことができる、参考書としても活用したい。
著者紹介
堀 慎吾(ほり しんご)
1984年、新潟県出身。日本プロ麻雀協会所属。KADOKAWAサクラナイツ所属。
2017年に最高位戦Classicを制覇、2019年には自団体のリーグ戦の頂点である「雀王戦」を制覇して第18期雀王を獲得。
2020年、麻雀プロリーグ「Mリーグ」のKADOKAWAサクラナイツからこの年のドラフト会議で唯一の指名選手となり、チームに加入。
2021-22シーズン、サクラナイツのMリーグ初優勝に貢献。
著書に『麻雀 だから君は負けるんです』(竹書房)、監修に『切れぬ牌などあんまりない!』(KADOKAWA)がある。
Twitter ▶ @elis0323
文/柿川鮎子
編集/inox.