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アプリ治療、刺しっぱなし注射、日本の低侵襲性AIデバイスが世界の人々の命を救う日

2022.08.15

AI&低侵襲性デバイス

日進月歩のウエアラブル機器だが、その最前線は「医療現場」にある。それもそのはず、多くの機器が搭載する心拍計や酸素濃度計などは、もともとは医療機器が測定していたからだ。最新の医療機器をみつめると、ウエアラブル機器の未来が浮かび上がってくる。

私が解説します

村上和巳さん医療ジャーナリスト  村上和巳さん
1969年生まれ。医療専門紙記者を経てフリージャーナリストに。日本医学ジャーナリスト協会理事。著書に『二人に一人がガンになる』(マイナビ新書)など。

医療現場のウエアラブルは「アプリ」から進化する

 身体の状態や運動量を測定するものを〝身につける〟ということは多くの人が当たり前になってきた。特に近年はIoTやAIの技術の進歩によって、モバイル端末やウエアラブルデバイスを医療にどう生かすことができるか、研究や開発が世界中で盛んに行なわれている。

 しかし、最新の医療機器といえば海外製という印象が強く、日本は欧米に比べ一歩遅れている。だが、その理由は「日本の医療技術が遅れているから」ではない。「薬事承認スピードの差」だ。つまり、役人の事情なのである。日本は世界に負けず、医療現場やヘルスケアに生かせる技術を続々と生み出しているにもかかわらず、開発されても消費者の手元に届くのが海外に比べて遅いのだ。具体例を挙げれば、日本は2014年にAIなどを利用したソフトウエアを医療機器として法的に位置付けたが、欧米ではそれ以前から医療機器として扱われている。今までの概念では測れないものが出てきた時に、ルール改定が迅速にできないのだ。

 そんな日本もやっと重い腰を上げて動きつつある。日本は世界の中でも高齢化が進み、若い人が減って医療費もどんどん増大している。そんな状況下では、ある程度医療現場を自動化し、人件費などを減らす必要がある。また、多くの人の健康寿命を延ばし、自分の力で生活をし続けてもらえるように推進することも必須だといえる。

 そのような事情を、やっと国は認めたのだろうか、最近になって「世界初の高血圧治療アプリ」が日本で薬事承認されたほか、「禁煙治療アプリ」が実用化され、保険診療として禁煙外来で処方されている。

 実は、このように〝アプリ〟の開発は活発で、医療分野ではウエアラブル機器そのものよりも主流だ。スマートウオッチに代表される計測器はブームともいえる盛り上がりを見せているが、医療の領域では脈拍や酸素濃度、血圧などは測ることができて当たり前のこと。むしろ大事なのは、「この計測したデータをどう健康に生かすか」ということだ。

 多くの人はデータを採っても、それをどう生かしていいかわからず、医師側との共有もできていない。

 だが、持て余していた膨大な測定データもAIなら分析可能だ。そしてその分析結果を生かす方法として〝アプリ〟との連携が期待されているわけだ。ウエアラブルデバイスはほぼ四六時中身につけているわけだから、うまく活用できれば、患者自身にピッタリの〝オーダーメイド型医療〟につながるだろう。ウエアラブル機器は海外製のものが目につくが、アプリ開発は今後、日本勢がリードしていくことに期待したい。

デバイス進化のキーワードは「低侵襲性」

 アプリ側の開発が主流と述べたが、もちろん医療用ウエアラブル機器自体の開発も着々と進められている。

 例えば2018年には、テルモが糖尿病治療薬であるインスリンを自動で注射する機器『メディセーフウィズ』を発売した。従来の方法では、1型糖尿病などの毎日インスリンを投与しないといけない人の場合、自分自身で腹部などにインスリンを注射しなければならなかったが、注射針を改良しても無痛とはいかなかった。

 しかし、このタイプでは、針を刺しっぱなしにすることで、痛みを感じる頻度が減り日常生活が過ごしやすくなっている。昔に比べれば画期的な技術が次々に開発され、多くの人の生活を変えているのだ。

 このように、最近の機器開発は「いかに体を傷つけず、患者に負担をかけないか(低侵襲性)」がキーワードになっている。だが、まだまだ課題は残されている。

 今後実用化が期待できるデバイスやアプリはたくさんありそうだ。日本発の「ウエアラブル機器」が世界中の命を救う未来はそう遠くはないだろう。

CereApp HT 高血圧治療補助アプリ

2022年中の実用化を目指している「CereApp HT 高血圧治療補助アプリ」。通院と通院の間の医師が直接サポートできない家庭の時間での活躍が期待される。

国内で開発・実用化されている世界最先端ウエアラブル機器

ウエアラブル医療機器市場は、2022年に144.1億米ドルの市場価値から、2030年までに467.3億米ドルに達すると推定されている。心拍数や脈拍、血圧、睡眠など自身の健康状態を確認できるデバイスや、インスリン投与や痛みのコントロールなど治療として使えるデバイスなどが次々開発・実用化されている。特に糖尿病や心血管疾患に代表される慢性的な疾患の予防や治療のために使われるウエアラブル医療機器の需要は高い。新たな機器の実用化が非常に期待される分野だ。

開発中のこんなものも!

超薄型の「貼る脈拍計」

ジャパンディスプレイと東京大学が科学技術振興機構の支援のもと共同開発している指紋・静脈・脈波を計測できる薄型イメージセンサー。厚みは15㎛で髪の毛よりも薄く、曲げて使うこともできる。ウエアラブル端末やセキュリティー端末などへの実用化が期待される。

「貼る脈拍計」

胃酸で発電する「飲む体温計」

東北大学の吉田慎哉氏・宮口裕氏らが開発し、実用化を進める「飲む体温計」。真の体温といわれる「深部体温」を定期的に測定し体外受信機へ無線で送る。胃酸発電でエネルギーを蓄積し腸に入っても動作する。非常に小さく、体から出やすいという特徴は安全面でも魅力的。

「飲む体温計」

血糖変動を「見える化」『FreeStyleリブレ』

上腕後部に500円玉大のセンサーを貼付し、リーダーでスキャンすることで、いつでもどこでも、服の上からでも簡単に最新のグルコース値が測定できる。インスリン療法を行なっているすべての糖尿病患者が保険適用の範囲で使用可能な日本で初めての持続血糖測定器。

『FreeStyleリブレ』

〈使い方〉
センサーを上腕の後ろ側に装着。手のひらサイズのリーダーをセンサーにかざすだけで測定ができる。リーダーには現在のグルコース値と8時間の履歴、血糖変動の傾向を示す矢印が表示される。センサーは耐水設計であり、雨や汗などを気にせず過ごせる。

『FreeStyleリブレ』

インスリンを持続投与『メディセーフウィズ』

2018年に発売した日本初のパッチ式インスリンポンプ。毎日複数回のインスリン注射等により血糖管理が必要な1型糖尿病患者向けに開発された医療機器。「まいにちを、わたしらしく」がコンセプト。チューブフリー仕様で、日常の行動を制限せずに治療が続けられる。

『メディセーフウィズ』

約3日分のインスリンを入れたポンプを直接腹部などに貼り付けて使用。一定量が少量ずつ皮下に注入される。インスリン量の設定や投与操作は、タッチパネル式のリモコンを使う。ポンプとリモコンはBluetooth通信でつながっており、人目を気にせず操作できる。

『メディセーフウィズ』

介護現場でも大活躍!進化するウエアラブル機器

人生100年時代といわれ、介護対象になる人の数はしばらく右肩上がりになると予想されている。高齢者が快適に過ごすことができるように、そして、介護現場のスタッフの負担を軽減するために、介護現場で活用できるデバイス開発は次々と進んでいる。ここでは、すでに実用化されている注目のサービスを紹介する。

排泄検知『Aiserv排泄検知システム』

おむつの内側に装着し、高齢者の排泄(便)をリアルタイムで通知。介護施設のスタッフがおむつ交換のタイミングをつかむことができる。おむつ内を常に清潔な状態に維持できるため、皮膚トラブルも予防。

『Aiserv排泄検知システム』

ウエアラブル嚥下計『GOKURI』

嚥下時の音を約2万5000パターン学習したAIが、食べ物を正常に飲み込めているかどうか識別する。入院患者や福祉施設利用者の誤嚥性肺炎を防ぐために使われる。嚥下機能の状態はインターネットを通じ、スタッフ間で情報共有が可能。

『GOKURI』

介護予防プログラム『モフバンド&モフトレ』

腕や足に装着して使用。3Dモーションセンサーを活用し、運動などの機能訓練の結果を可視化する。レポートも自動に作成される。モフトレとは、モフバンドを装着して行なう最先端のトレーニング、レクリエーションの介護予防プログラム。

『モフバンド&モフトレ』

構成/田村菜津季

※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2022年5月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。

DIME8月号はウエアラブルの大特集、豪華付録はLEDテープライト250

大特集は「仕事も暮らしもジブン最適化! 超快適!ウエアラブル」

ついに発表されたグーグル初のスマートウォッチ「Pixel Watch」から約130インチの映像をどこでも気軽に視聴できる「Nreal Air」まで、注目のウエアラブルデバイスが続々登場。中でも、単体で使える機能が充実し、スマホ全盛時代の終焉を告げる「ポストスマホ」の本命デバイスを、WATCH、MOBILE、HOME、SPORTS、WORK、HEALTH CAREのカテゴリーに分けて編集部がセレクト。その実力を検証した!

また、8月号の付録は、好きな場所に貼って使える便利なDIYアイテム「LEDテープライト250」。 床、壁、天井などに照射した光の反射で、空間をほんのりと明るくする、間接照明にピッタリのアイテムです!テープの長さは250㎝。設置したいスペースに合わせて、好きな長さに切って使えます。 電源はテープ端のUSB Type-A端子をUSB-ACアダプターやモバイルバッテリーなどに接続すればOK。

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