体に装着することで、荷物の持ち上げ作業時の腰の負担軽減や、介護施設、医療機関での介助補助、疾病などで障がいのある人の自立支援などをサポートする様々なアシストスーツの導入が広がっている。利用者の声とともに主力製品を紹介していく。
特別なものではなく家電として使える時代に
アシストスーツのビジネス市場はこの10年で急成長を遂げている。タイプ別では、柔軟素材でつくったスーツを、体に密着させて着用することで導入コストを抑えた「内骨格型」製品が、高いシェアを獲得。一方、最近では、筋力の負荷を抑えるだけではなく、体の動きを拡張する、硬質フレームを使った装着型の「外骨格型」製品が徐々に広がりつつある。
「外骨格型には、モーター動力や空気圧など外部からエネルギーを供給する〝アクティブ型〟と、内部にためた空気圧で動かす〝パッシブ型〟の2種類があります。前者はパワーが強い反面、重く、値段も高くなります。後者は軽量で価格が手頃であり、家庭介護にも使いやすいというメリットがあります」と、ロボット研究の第一人者である、東京理科大学の小林宏教授は語る。
「今後はよりシンプルな仕組みの導入と軽量化で、製品を必要とする家庭が一家に1台導入できる環境をつくることが、目標になると考えています」
まだまだ進化中!
東京理科大学 教授
イノフィス創業者・最高技術者
小林 宏さん
東京理科大学博士課程修了、博士(工学)。1998年、東京理科大学工学部第一部機械工学科で講師、2008年より同教授。2000年からマッスルスーツの開発を開始。イノフィスの創業者であり最高技術者、取締役を兼務。
介護の仕事効率を高め、リハビリにも活用【医療・介護】
[砧ホーム]介護施設の職員が抱える問題に対応。排泄介助もラクに!
小林宏教授が開発した『マッスルスーツEvery』は、モーターなどを使わず、人工筋肉にためた空気を動力にするパッシブ型のアシストスーツだ。背中のフレームにある人工筋肉のチューブに空気を送り、人工筋肉が伸縮する力で、腿フレームとつないだワイヤを引っ張り、腰を屈めた体勢から自然に上半身を起こす。装着しやすいリュック型の本体は3.8kgと軽く、女性や老老介護の高齢者でも簡単に使えることも大きな特徴だ。
「防水・防塵仕様で、屋外や水場でも使えます」(小林 宏教授)
●腰痛の軽減で仕事に余裕が出てきました
イノフィス『マッスルスーツEvery』
14万9600円
部品数を見直し、フレームに一体化樹脂を採用することによって4kgを切る軽量化を実現。価格も家電レベルに抑えられている。腰への作業負担を大幅に軽減すると、重筋作業の現場に導入されている。
人工筋肉は、ゴムチューブを筒状のナイロンメッシュで包み、両端を留めた構造。5気圧で最大200kgfの引張力を発生させる。
腿フレーム上部の回転軸を中心に背中フレームが回転し、上半身を起こす仕組み。反力で外側に回転する腿フレームを腿パッドで抑える。
特別養護老人ホーム「社会福祉法人友愛十字会・砧ホーム」では、本製品を職員の介護サポート補助に採用。電気を使わず、簡単に装着でき、丈夫なことから導入を決めた。腰への負荷軽減は、より丁寧な介護にもつながるという。
〈Review〉
介護で、特に大変な仕事が移乗介助や排泄介助です。中腰姿勢を5~10分続けることも多く、ほとんどの職員が腰痛に悩まされています。この器具を使うと、中腰姿勢のままひねる動作や、下にあるものを持ち上げる動作がとてもラクですね。腰への負荷が減り、疲れが残りにくくなりました。
〈Review結果〉実用度:★★★★★ 拡張性:★★★★☆ コスパ:★★★★★
[ロボケアセンター]事故後後遺症や疾患で身体障害を持つ患者さんの退院後のリハビリを支援!
人が体を動かそうとする時に体の表面に漏れ出す微弱な「生体電位信号」を、皮膚に貼ったセンサーで検出し、意思に従った動作を実現する技術が『HAL』だ。
「意思に従った運動を無理なく繰り返し行なうことで、本来、体に備わるサイクルが戻ってきます。装着している間はもちろん器具を、外した後に効果が持続することも大きな特徴です」(サイバーダイン社・広報)
HALは、全国16か所にある自費リハビリ施設HAL「ロボケアセンター」でリハビリに活用され、驚きの効果を出している。
●皮膚に貼ったセンサーで動作意思に従った動きを実現!
サイバーダイン『HAL 自立支援用下肢タイプPro』
18万8000円/月(5年レンタル・法人専用)
事故や疾患で動かしづらくなった下肢の運動を、生体電位信号を使ってアシストするアクティブ型の製品。無理なく、動作意思に従った動きを実現できるため、身体機能の改善を促す効果が期待される。重さは両脚タイプで約14kg。1回の充電で約1時間作動する。
コントローラーの表示内容をリアルタイムで映し出す大型のHALモニター。装着者は状態を視覚的にフィードバックしながら運動ができる。
〈Review〉
頸髄損傷によって動くことさえ困難でしたが、HALを続けることから今では座位が安定し、寝返りも打てるようになりました。最近では尿意を感じるようになり、体の機能が戻ってきていることと、回復に向かっていることを実感できます。
〈Review結果〉実用度:★★★☆☆ 拡張性:★★★★☆ コスパ:★★★☆☆
●介護する側もされる側も使える
サイバーダイン『HAL 腰タイプ 介護・自立支援用』
15万8400円(個人向け・3か月レンタル)
腰に装着し、体幹運動を行なうことで、機能向上が期待できる。バッテリー駆動で重さは3kg。介護施設のほか、個人向けに自宅で使えるサービスも開始した。