大切な人やモノがなくなってしまうことをイメージしてみて、嫌だと思うのは普通のことです。しかし、それ以上に、「なくなることが想像できない」、「ひどく不安になってしまう」という人は、もしかしたら依存傾向が強いのかもしれません。
本稿では、依存体質の人の特徴や、依存体質から抜け出す方法をお伝えします。
依存とは
依存とは、その対象のものを常に求める状態で、それがなくては身動きが取れない状態を指し、依存体質は依存傾向が強い人のことを言います。
さらに、日常生活に支障をきたすほど何かに依存して、抜け出せない状態になっていることを「依存症」と言い、依存症は医療で治療するべき病となります。
依存は大きく3つのタイプに分かれます。
・物質に対する依存……アルコール、タバコ、薬物など
・行為に対する依存(プロセスへの依存)……買い物、ギャンブル、ネット、SNS、セックス、仕事など
・人間関係に対する依存(共依存)……恋愛、親子、友人など
依存に治療が必要なのかの分かれ道は、日常生活に支障が出ているかどうか、です。
依存体質の人の特徴
依存体質の方の中には、自分の依存傾向に気づいていない場合もあります。もちろん、気づいている方もいますが、それを自分だけではやめられないという状態です。自分の中に、下記のような特徴がないか、一度チェックしてみてください。
承認欲求が強い
承認欲求とは、簡単に説明すると「他人に認められたい」「他人から肯定されたい」という気持ちです。
承認欲求はモチベーションにつながることもあり、承認欲求を持つこと自体は問題ではありません。
しかし、「他人に認められること=自分の価値」となってしまっている人は注意が必要です。
承認欲求が強い人は、予定のない休日が耐えられず、先のスケジュールまで埋める傾向があります。誰にも必要とされない日が耐えられないのです。
また、周囲から嫌われることを極端に嫌うので、たとえ嫌なことであってもノーとは言えません。常に相手に求められる自分でいたいためです。
自分のことを1人で決められない
依存体質の人は、転職や引っ越しなど大きなことから、友人からのお誘いなど小さなことまですべて自分1人では決められないという特徴もあります。
「承認欲求が強い」でも触れましたが、常に他人に認められたい、否定されたくないという思いもあり、自分で決めたことが他人の意向に沿ったものなのか自信が持てません。自分の意志よりも他人の意志、となってしまっているのです。
些細なことでも「これどうしたほうがいいかな?」と常に聞いている人は依存傾向が強い可能性があります。
嫌なことから逃げて楽になった経験がある
嫌なことからの逃げること自体はまったく問題ありません。これはストレスコーピングという、ストレス対処法の1つです。嫌なことがあったときに、気晴らしに買い物に行ったり、友人に愚痴ったり、お酒を飲んで忘れようとする行為がそれに該当します。
しかし、依存体質の人は、その行為や人があたかも嫌なことから助けてくれた存在だと錯覚してしまうことがあります。助けてくれた存在から、「この人と一緒にいれば嫌なことが起こらない」と思い込み、嫌なことのあるなしに関わらず頼ってしまうという依存に陥ります。
依存体質から抜け出す4つの方法
依存体質は、今、外(人やモノ)に向けられている自分の関心を自分に向けること、つまり自立することで抜け出すことができます。ここではその方法をご紹介します。
1.小さな成功体験を重ねて自己肯定感を高める
依存をやめて自立するためには、自己肯定感を高めることです。
自己肯定感とは「ありのままの自分を肯定する感覚」のこと。自分を肯定することが自立につながります。
そのためには、小さな成功体験を繰り返すことが有効です。最初は日常でいつもできていることをノートなどに書き出していきましょう。日常でできていることとは、「遅刻せずに会社に行く」「早寝を目指して〇時までに寝る」などでいいのです。そこから徐々に「〇〇の仕事を達成する」など目標を設定していきましょう。
ここで注意してほしいのが、自分にはできそうにもない目標は設定しないこと。また、他人に左右される内容も控えたほうがいいでしょう。あくまでもスモールステップで、自分だけで達成できる目標を設定して、成し遂げるという成功体験を積み重ねることが大切です。
2.不安に感じるものを書き出し、客観視する
成功体験を書き出すこととは逆に、不安に思っていることを書き出すことも有効です。何に依存しているかではなく、不安に思っていることをノートに書き出します。
不安は漠然としたものが多く、人は正体が分からないものに対してより強い不安や恐怖を覚えます。頭の中で考えているだけでは堂々巡りのようにずっと同じ不安に苛まされてしまうのです。
それを書き出すことで、自分が何に不安に思っているのかが明確になり、さらに客観視することができます。不安の元が何なのかをハッキリさせることが、不安からくる依存を抜け出すきっかけになります。
3.新しいことを始めてみる
依存体質の人は、その依存先が自分のすべてだと、視野が狭くなっている可能性があります。
その視野を広げるためには、新しい何かを始めてみるのが効果的です。
始めるものは読書など知識を広げたり、習い事を始めてみるなど、少しでも興味を持てるものなら何れるのではなく、自らやってみたいと思えたものに取り組んでみてください。
4.物理的な距離を置く
最後は、頼りたくても頼れない環境を作るのも1つの方法です。シンプルですが、視界に入れない、対象が人であれば連絡を取らない時間を設定してみるなどです。
最初から一気に断つ、ではなく少しずつ減らしていくという考えのほうがうまくいきます。1~3の方法と併用して試してみるといいでしょう。
文・構成/藤野綾子