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自衛隊のメンタル教官に聞く怒りの感情をコントロールする方法

2022.07.10

自衛隊初の心理教官がレクチャー

「イライラや怒りを募らせている日本人が増えている」

心理カウンセラーの下園壮太さんは、東日本大震災の1年後くらいから、そんな印象を抱くようになったという。

この間、格差社会の顕在化、SNSの普及、コロナ禍などがあった。

そうした社会事象が、知覚できない疲労を蓄積させ、疲労は怒りを誘発する―下園さんは、著書『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』(朝日新聞出版)の中でそう説いている。

書名にあるとおり、下園さんは自衛隊初の心理教官として経験を積み重ねてきたユニークな経歴の持ち主。

日常生活という「戦場」で起こる怒りをコントロールするため、即実践できるノウハウを教えてくれる。かいつまんで紹介しよう。

■怒りは身を守るための警備隊長”

そもそも、なぜ人は怒るのだろうか? 

下園さんによれば、この感情の本来の目的は「敵に反撃、威嚇すること」なのだという。

原始時代の人間は、猛獣や近隣部族など外敵に襲われるリスクが高かった。「話し合いで解決」が通用しない相手なので、逃げられないなら反撃するしかない。

かくして、戦いを有利に進めるため、怒りの感情が生み出された。相当に怒っているときは理性の出る幕はないが、そうしないと生き残れないからだ。下園さんは、次のようにも説明する。

“怒りという感情は、お人好しで弱気で博愛主義の人でも、自分や仲間の命が危ないときには、人を殺せるモードになれるという機能なのです。”

この感情があるからこそ、人間は種として命をつなぐことができた。現代では自身の命が脅かされる状況はめったになくなったが、それでも怒りの感情はしっかりと健在。

何かをきっかけにその感情がわき上がって、うかつに発露すれば、人生の破滅につながりかねない。では、どうするか?

下園さんは、怒りは「あなたを敵の攻撃から守るための“警備隊長”」だと表現する。

“警備隊長は宿主の危機にはすぐに駆けつけ、戦闘態勢を整えます。そして敵が退散するまで、警戒し見張りを続けてくれます。”

長く平和を享受している日本人だが、「危機」は意外と多い。例えば、給料や待遇など「自分の取り分」で損を感じると、警備隊長は攻撃されたと判断。

反撃の準備を始めるという。時には「被害妄想」や「自分最強妄想」といった心のスイッチが入ることもあるが、これも警備隊長が、きたる戦闘を有利に進めるために発動させるもの。

もはや原始人でないわれわれには厄介な感情だが、我慢で抑えつけようとすれば、怒りは長くくすぶることになる。

■相手と距離を取って休む

怒りに任せて行動できない現代人に必要なのは、その感情をうまく鎮めることだ。下園さんは、警備隊長のスイッチがオフになることをするのがコツだと説く。

オフになる要素は全部で6つ。その1つで最初になすべきは、怒りをもたらす「刺激から離れる」ことだという。

“怒りの相手や対象から、ただちに物理的に距離を取ること。具体的な行動としては、席をはずす、部屋を出る、トイレに行く、などです。

そのうえで、怒りのピークをやり過ごすまで、時間を稼ぎましょう。自分で「嵐が過ぎた」と思えるまで待ちます。場合によっては数分で、コトによっては数日以上かかることもあるかもしれません。”

ここをなんとか乗り越えられれば、あとは「自分の内面だけの問題」に落ち着く。そして、次に必要なのは、「疲労のケア」。要するに、とにかく休み、エネルギーを使う作業はしない。

“具体的には、こまめに小休憩をとる、昼寝をする、仕事を先延ばしにする、家事をサボる、人と会うのをキャンセルする、いつもより早く眠るなどの対処をしてください。

人と会って酒を交えながら、愚痴を言いたいのは自然な流れですが、楽しいストレス解消法と同様、人と会うこと、お酒を飲むことは、実は案外エネルギーを使う作業なのです。”

このように休むことが力説されるのは、イライラ・怒りは相当エネルギーを消耗させるから。冒頭でも触れたように、疲労は怒りを誘発するため、感情の負のループを避けるためにも必須となる。

ちなみに飲酒は逆効果。かえって怒りを増幅しやすくし、疲労の回復を遅らせるだけで、いいことは一つもない。

長くなるので割愛するが、警備隊長のスイッチをオフにするための要素として、以下「警備隊長のケア」「現実的対応」「記憶のケア」「繰り返し」と続く。

残念ながら、怒りを一瞬で消し去る方法はないが、経験の積み重ねで怒りにくい体質へと変われるそうだ。

■「相手を論破」でなく「逃げるが勝ち」

下園さんは、(自分でなく)近くの人がイライラや怒りにとらわれているときの対処法も述べている。

もしも、あなたの上司が怒りをパワハラというかたちで、あなたにぶつけてきたらどうすべきか?

まず、やってはいけないこととして「相手を論破」が挙げられている。

“というのも、パワハラをしてくる上司などは一般的に議論が得意です。特に頭のいい人は、攻撃のロジックも長けている。バトルになっても、言い負けることが多いでしょう。

また、運よく相手を一時的にやり込めても、相手の自信を揺さぶるので、恨みを買いやすく、逆襲を受けやすい。結局、外的エスカレーションを招き、こちらの被害のほうが大きくなりがちです。”

下園さんがすすめるのは、「逃げるが勝ち」。反撃でなく撤退し、心の裡に生じた怒りをなだめる。パワハラが執拗であれば、人事担当に相談して、異動の方策をとってもらうことも考慮に入れる。

また、意外にも「陰口を言う」ことは、大変有効な策だという。パワハラ上司の耳に入らないよう相談相手を選び、悪口を言って留飲を下げる。

共感を得られれば、その人は味方になってくれることも期待できる。「味方工作」をするのは、人数勝負で戦いの帰趨が決まった原始人の本能のようなもので、今の人でもメンタル面のダメージ軽減に役立つ。

組織としても、パワハラ被害者へのケアは必要だ。この場合、やはり加害者との距離をとるのが効果的。

それも、同じフロアの隣の部署では「あまり意味はありません」とのことで、関連会社など「二人が二度と会うことがないようなレベル」で離す。そして、消耗している被害者に対し「数年は温かい目で見てあげる」くらいの配慮は欲しいとも。

下園さんによれば、怒りのコントロールの最終的なゴールは、自分の中で「まあ、いいか」が増えることだという。そのためには、「~~は〇〇であるべき」という期待を高く持ちすぎないのがコツで、人生のさまざまな実経験がそれを可能にしてくれる。

本書のテクニックで、その時その時の試練を乗り越えつつ、長い目で怒りの感情を克服していくのがベストということなのだろう。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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