エアコンは夏に欠かせない家電だが、リモートワークや子どもの夏休みで使用時間が長くなったり、電力料金の値上げで電気代が気になる人も多いだろう。
「気温が平年並みか高い」と予測されている今年の夏。【上手なエアコンの使い方】を、総合空調機メーカー「ダイキン工業」コーポレートコミュニケーション室の由井明日香さんに教えてもらった。9つのコツを紹介しよう。
1.本格的な夏を迎える前に試運転を
使い始めたらエアコンの調子が悪い…なんてことにならないよう、まずは試運転をしておこう。
夏本番になると、買い替えや修理の問い合わせが増加するため、対応が通常より遅れる場合もある。本格的な夏が始まる前に、買い替えや修理の必要がないかチェックを!
「エアコンの健康寿命は多くの場合10年で、平均的な使用年数は約13年といわれています。買い替えを検討するのは、購入後10年頃からがおすすめです」と由井さん。
2.フィルター掃除は2週間に一度が理想
エアコンは、室内機が部屋の空気を取り込んで、温めたり冷やしたりして室内に戻すことで温度を調整する。使ううちに空気中のホコリがフィルターに堆積し、室内機を通る空気の量が減ることで、室温が設定温度に到達するまで時間が必要となり、その分、無駄な電力の消費につながってしまう。
このフィルターを一年間掃除しないと、上のグラフのとおり約25%もの電気代の無駄につながる場合もあるのだとか。シーズンイン前の掃除はもちろん「おすすめは2週間に一度のこまめな掃除」。
「少々面倒かもしれませんが、より涼しく、かつ省エネ&節電への近道です」(由井さん)
3.室外機の周辺には物を置かない
室外機の周辺にものを置いたり、カバーをかけたりしていないだろうか?
「吸込口や吹出口をふさぐとエアコンに負荷かがかかり、運転効率が下がります。すると消費電力は上がり、電気代も上がります。室外機周辺の風の流れは妨げないようにしましょう」(由井さん)
また、室外機周辺が高温になった場合も、エアコンの運転効率が下がることがあるという。
「夏場、直射日光などで室外機の周辺が熱くなる場合は、風通しの良い『よしず』などを使って日影を作りましょう。室外機から1メートルほど離れたところに立てかけるのがおすすめです」(由井さん)
4.短時間の外出、換気時はつけっぱなしが正解!
「エアコンは、電源を入れた直後など設定温度を目指している時ほど多くの電力を消費します。設定温度に到達して室温をキープするためにかかる電力は少なめ。そのため、エアコンのスイッチをこまめにオンオフすると、エアコンに負荷がかかり、消費電力も増加してしまうのです」(由井さん)
そのため、日中30分程度の外出や定期的な窓開け換気をする場合なら、つけっぱなしがおすすめだという。
ちなみに、ダイキン工業が行った実験によると、30 分に5分の窓開け換気のたびにエアコンの電源をオンオフにするよりも、つけっぱなしの方が、電気代が1日で約45.7円(1カ月換算で約1,371円)低くなる結果に。
5.薄着で室温は28℃設定
一般的に「冷房時の室温は28℃が節電につながる」と言われているが、実はこれは、17年前に環境省が進めた「COOLBIZ(クールビズ)」で提唱されたもの。「クールビズ」といえば、ノーネクタイ・ノージャケットなど軽装の取り組みだが、これは「上着を脱いでネクタイを外すと体感温度が2℃下がる」という実験結果に基づいたものだった。つまり、室温28℃時の軽装と室温26℃時のスーツの温熱感はほぼ同じ、という意味合いだ。
(出典:ECCJ 省エネルギーセンター)
つまり、28℃に設定するから省エネ&節電になるのではなく、快適な室温とのバランスを探った結果が28℃というわけだ。まずは軽装にし、そのうえで【室温28℃】を目指そう。
「お住まいの状況によっては、エアコンの設定温度を28℃にしても室温が28℃にならない場合もあります。温度計などで室温を確認しながらエアコンの設定温度を調整いただければと思います」(由井さん)
6.風量は「自動」に!
「エアコンの風量は「自動」を選びましょう。ファンの回転音が静かで、一見節電につながりそうな微風や弱風の場合、室内を設定温度にするまでに時間がかかるため、無駄な電気代がかかる場合があります」(由井さん)
「『自動』であまり部屋が冷えないと感じる場合は、設定温度を変える前に『風向』を自分のほうへ向けてみましょう。風は直接体にあたると気化熱を奪うため、涼しく感じます」(由井さん)
このとき、エアコンの風が直接あたるのが苦手、また足元だけ冷えるようなら「温度ムラ」を解消しよう。温かい空気は上へ行き、冷たい空気は下にたまるため、足元は涼しくても顔まわりは暑く感じる場合もある。
「『風向』を水平にし、扇風機やサーキュレーターを活用して空気を循環させ、部屋全体に冷たい空気を行き渡らせましょう。扇風機やサーキュレーターは、エアコンから離して対面させるように置き、天井に向けると効果的です」(由井さん)
7.ムシ暑い日は【除湿】、真夏の猛暑日は【冷房】
涼しさを感じるには設定温度を下げるしかないかというと、必ずしもそうではないという。人が暑さを感じるのは、温度と湿度に影響されるためだ。
「真夏など、温度が高く湿度はさほど高くない場合には、温度を下げることを第一に考えた『冷房』を。一方、梅雨によくある、室温はあまり高くはないけれど湿度が高く、じめじめした空気をどうにかしたい場合は『除湿』を使いましょう」(由井さん)
8.「除湿だと肌寒い」なら【再熱除湿】を選んでみる
ムシ暑さを解消する「除湿」機能だが、「肌寒さが気になる」という場合も。
「実は除湿には大きく2種類あります。エアコンの多くに搭載されているのが『弱冷房除湿(ドライ運転)』で、もう一つが高級機に見られる『再熱除湿』です。除湿で肌寒さが気になる場合は、再熱除湿を選ぶのがおすすめです」(由井さん)
弱冷房除湿は湿度を取り除く際に空気を冷やすため、弱冷房をかけ続けているのと同じような状態だという。再熱除湿は、冷やした空気を温め直してくれるので、より心地よく、快適に除湿だけができる。ただし、温め直す過程で弱冷房除湿よりも多少電力がかかる場合があるので、節電を考えている方は注意。
9.室温28℃、湿度50~60%を目指す
節電のことを考えた場合、冷房と除湿、どちらがお得なのだろうか。
「まず、冷房運転と除湿(ドライ)運転は使用の目的が異なります。また、温度や湿度の使用環境や設定温度によって電気代も異なるので、どちらが電気代が安いとは一概に言えません」(由井さん)
ただし「再熱除湿」は、冷房や弱冷房除湿(ドライ運転)よりも電気代がかかる場合もあると覚えておこう(※コツ8参照)。節電のことだけを考えるなら、基本的には設定温度を高くしておいた方が消費電力は押さえられる。
「ただし、熱中症のリスクを考えて、室温28℃、湿度50~60%を目安に、温度や湿度をコントロールするのが正解です」(由井さん)。
これから夏本番。上手にエアコンを使って節電しながらも快適な夏を過ごしてほしい。
取材・文/ニイミユカ