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コンセプト重視のブティックホテルは日本のホテル業界にイノベーションを起こせるか?

2022.07.08

海外のホテルトレンドの波が、近年、日本にも入ってきている。それはラグジュアリーホテル界における「ブティックホテル」というジャンルだ。日本に新しいブティックホテルが続々開業しており、今後、本格的に根付いていくとみられる。従来の日本のラグジュアリーホテル文化にイノベーションがもたらされる可能性もある。これから日本で広がっていくブティックホテルとは、どのようなホテルか探ってみた。

「ブティックホテル」はラグジュアリーホテルの一種

「ブティックホテル」は、海外ではもともとラグジュアリーホテルの一種である。

このほど、ブライダル事業で広く知られているテイクアンドギヴ・ニーズ(以下、T&G)が、ブティックホテル市場を日本に創出し、イノベーションを起こすと発表した。すでに持つブティックホテルブランド「TRUNK(HOTEL)」より、渋谷・代々木や道玄坂に新しく開業するほか、新たに「EVOL HOTEL(仮称)」というブティックホテルブランドを立ち上げ、今後は2ブランドで展開していく。

●ブティックホテルとは?

同社によると、ブティックホテルとは「独創的で店舗ごとに異なるコンセプトと高いクリエイティビティをセールスポイントに持ち、一貫したコンセプト、細部に至るまで徹底したクリエイティブのこだわりが見られる、高品質・高価格帯のホテル」を指すという。独立系のオーナーによる経営が多いが、近年では、国際的なホテルチェーンがブティックホテルをサブブランドに持つ動きが出てきているという。

時代の変化とともに世界のホテル市場は変化しており、従来は高価格なホテルがラグジュアリーとされていたが、現在は価格帯ではなく、顧客のライフスタイルや価値観を軸に広く多様化が進んでいるという。

(T&Gプレスリリースより)

同社は、ラグジュアリー領域を大きく4つのカテゴリー「トラディショナル」「ノーム」「エッジー」「ディスラプティブ」に定義している。ブティックホテルは、「エッジー」と「ディスラプティブ」に該当し、近年広がりを見せているそうだ。トレンドの先端にいる、振り切った刺激や体験を追い求める顧客層に向けて海外で増加しているという。

■日本のホテル業界にイノベーションを起こす

T&Gが手がけるブティックホテルは、これから「エッジー」 領域と「ディスラプティブ」領域を共にカバーすることになる。

(T&Gプレスリリースより)

日本にブティックホテルが増えることで、ホテル業界にどんなイノベーションが起こるだろうか。T&Gの広報 木本由有氏に話を聞いた。

「世界のトレンドと大きく乖離し、コモディティ化が進む日本のホテル市場において、ラグジュアリーホテルが多様化して選択肢の幅が広がることで、今後さらに増加するインバウンドのニーズに対応できるほか、日本のホテル業界が抱える『付加価値づくりが苦手』『ADR(平均客室単価)が低い』『労働環境が良くない』などの課題解決に寄与すると考えています。

当社は、展開するTRUNK(HOTEL)で海外のアワードを数多く受賞し、高いダイレクトブッキング率やADRを実現しているほか、業界平均より高い給与やエンゲージメントを叶えています。さらに、TRUNK(HOTEL)ではホテルに関わるすべてのクリエイティブディレクションを行う『アトリエ』機能を自社内に持ち、高いクリエイティビティを発揮しています。また、開業時から『地域を巻き込むホテル創り』を強みとし、ホテル運営にCSV戦略を取り入れて、新しい付加価値の創出にも成功しています。こういったノウハウを活用して日本におけるブティックホテル市場の確立を牽引することで、日本のホテル業界にイノベーションを起こしていきたいと思っています」

TRUNK(HOTEL)イメージ

日本には、海外のブティックホテルの顧客層とされる「トレンドの先端にいる、振り切った刺激や体験を追い求める層」というのは存在するのだろうか。

「すでにブティックホテル市場が成長している海外の方がターゲットとする顧客層は多いものの、2017年に開業した渋谷・神宮前のTRUNK(HOTEL)でも一定割合で日本人顧客がいることから、日本においてもその顧客層は存在すると考えています。また、40代以下の比較的若い富裕層においては、上の世代とはラグジュアリーの意味や価値が異なる人が増えており、今後さらに当社ホテルがターゲットとする層は増えていくと見ています」

新しいブティックホテルが提供する価値

同社の新しいブティックホテルは、今後どのような価値を提供していくのか。従来のラグジュアリーホテルと比べて、滞在客の体験価値の変化を木本氏に聞いた。

「従来は高価格で豪華なホテルがラグジュアリーとされてきましたが、当社が提供するブティックホテルは、従来の“豪華さ”が特徴ではなく、ホテル滞在という体験の様々な場面において『トレンドの最先端を感じられる』『振り切った刺激や体験ができる』ことが『今の時代の新しい豪華さ』であり、新たな価値だと考えています」

●TRUNK(HOTEL)について

TRUNK(HOTEL)の提供価値は「唯一無二」だという。具体的にどのような価値を体験できるのだろうか。

「ホテルづくりやホテル運営において、当社では固定観念にとらわれず、新しい価値を創出し続けられることを大切にしています。そして、『ホテルはこうあるべき』という考え方から脱し、お客様一人ひとりにその瞬間しかできない『唯一無二』の体験を提供できるように努めています。

ホテルづくりにおいては、出店地域の特性を理解し、その場所でしか生み出せない独自のコンセプトを考案して、デザインやコンテンツを設計します。そのため、同じTRUNK(HOTEL)は今もこの先もありません。建築、設計においても同様で、例えば神楽坂のTRUNK(HOUSE)では、築70年のリノベーション物件の中に完全防音のミニディスコを作りました。内装・空間設計の常識からは外れたコンテンツですが、これこそ私たちが大切にしている唯一無二のものだと言えます。

ホテル運営においては、渋谷区・神宮前のTRUNK(HOTEL)ではあえてマニュアルを設けず、個々のスタッフに一定の権限を与え、その都度目の前のお客様に対して『唯一無二』だと考えるサービスや提案ができるようにしています」

「TRUNK(HOTEL) YOYOGI PARK」2023 年開業(予定)
所在地:東京都渋谷区富ヶ谷1丁目
客室数:25 室~30 室
付帯施設(予定):ルーフトッププール&バーラウンジ、オールデーダイニング
客室単価(想定):48,000 円~180,000円

既存のTRUNK(HOTEL)のホテルと比べ、今後、同ブランドではどのようなホテルを創出していくのだろうか。

「ブランドの提供価値、ターゲット等、つまりブランドのDNAは基本的に変化しませんが、ブティックホテルは出店エリアによってデザインやコンセプトがそれぞれまったく異なります。そのため、今後出店予定の富ヶ谷、道玄坂のTRUNK(HOTEL)は、神宮前とコンセプトもデザインもまったく別のものです。

また、現状は東京都内の店舗のみですが、今後は日本全国、そして海外出店も視野に入れています。また、出店形態についても、いわゆる『ホテル』以外にもサービスアパートメント、コンドミニアムホテル、分譲・賃貸レジデンスなど様々な形に広げていく予定です」

●EVOL HOTEL(仮称)について

そして今回、新たに生まれるエッジーラグジュアリーの「EVOL HOTEL(仮称)」というブランド。木本氏はブランド誕生の背景について次のように述べる。

「ターゲットについて、新しい価値観の富裕層という点では似ていますが、エッジーよりもディスラプティブのほうがより世の中や他人の意見に左右されず、振り切った刺激や体験を求める層だと考えています。つまりトレンドをつくる側です。一方で、その層に向けた商品やサービスは好みが分かれることから、よりニッチな層向けをTRUNKが、もう少し幅広い層向けをEVOLが展開していきます。ブランドは異なるものの、同じ会社で展開していくため、ノウハウ活用などのメリットは十分にあると見ています」

「EVOL HOTEL KOBE(仮称)」2027 年度頃開業(予定)
所在地:兵庫県神戸市中央区雲井通5丁目
客室数:60室~70室
付帯施設(予定):オールデーダイニング、スペシャリティ レスト ラン、ルーフトッププール&バー、スパ、ジム、バンケット、チャペル
客室単価(想定):30,000円~200,000円

EVOL HOTELにて提供できる価値は「高揚」。具体的にはどのような体験が得られるのだろうか。

「現時点ではEVOL HOTEL KOBE(仮称)の2027年度の開業に向け、詳細のコンテンツや運営等を検討している段階のため、具体例をご紹介できない状況ですが、デザイン・コンテンツ・サービスに上品さと遊び心のエッセンスを盛り込み、ルーフトッププール&バーや眺望を楽しめるテラス付きレストラン、スパなど、すべてのコンテンツやサービスにおいて『高揚』を感じていただき、単に眠りに帰るだけでなく、『旅慣れた大人がホテルで過ごすこと自体を堪能できる』ホテルを目指します」

日本に生まれようとしている新たなラグジュアリーホテルとしてのブティックホテルの波。新しい価値体験により何が生まれるのか期待したいところだ。

日本のブティックホテルの潮流

ところで、ブティックホテルはすでに日本にじわじわブームが来ている。例えば、こんなホテルも近年開業している。

●Ace Hotel(エースホテル)

いわゆるライフスタイル型ホテルとも呼ばれる独自のスタイルとなる米国発のホテルブランド「Ace Hotel(エースホテル)」は、2020年6月に日本に上陸し、京都市の商業施設・新風館に「エースホテル京都」をオープンした。

エースホテルの担当者は、ブティックホテルとしての特徴として、次のように話す。

「エースホテルは、1999年に米国西海岸のシアトルに誕生。特徴は、トランプカードにある『Ace(エース)』同様に、最下位にも最上位なるカードであるハイエンドとローエンドを兼ね備えている点です。

どのホテルも古い建物をリノベーションしており、心地よさと程よいクラシック感と共に、ローカルのクリエイターによるスタイリッシュなデザインに。各ホテルのアイデンティティは、建築物とその周辺地域からヒントを得ており、デザインはその土地の構造と歴史に裏付けられたものになっています」

「ホスピタリティにおける決まった型はなく、最高の体験を切望し、都市の魅力を形づくる人々のために、都市型ホテルの新たな概念をご提案。ただ宿泊したり、飲食を楽しんだりするだけの場所ではなく、アーティストやクリエイター、地元の人が交流するコミュニティとして機能しているのも特徴です」

エースホテル京都では、月に一度、満月の夜限定の恒例イベント「フルムーンナイト」を新風館と共同で実施している。2022年7月14日(木)に開催される回では、神々しく投影された大きな月を眺めながら、エースホテル京都3階にある、アメリカ風イタリアン・オステリア「Mr. Maurices’s Italian」で「Full Moon Rooftop Live Performance」と題し、料理とカクテルのペアリングと共に、ラテンジャズの演奏を堪能できる特別なプランが提供される予定だ。

●エディション

マリオット・インターナショナルのブティックホテルブランド「エディション」が日本上陸し、東京1号店となる「東京エディション虎ノ門」が、2020年10月にオープンした。エディションの特徴は、ホテルが立地する土地の文化や美学がホテルのデザインやサービス、アメニティなどすべてに反映されていることにある。虎ノ門は、まさに「東京」を体感できるホテルとなった。2022年中には「東京エディション銀座」がオープン予定という。

今後、日本には日本ならではのブティックホテルが根付いていくだろう。これまでにどんなホテルでも感じたことがない新しい価値を求める人々が増えることで、イノベーションにつながるのかもしれない。

【取材協力】
TRUNK(HOTEL)
エースホテル京都

取材・文/石原亜香利

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