【東京駅八重洲口にクラフトビール店がひしめくワケその2】「リカーズハセガワ本店」人気の理由は定評あるセレクト感
東京駅の八重洲口が、日本屈指のクラフトビール街に進化している。国内外のビールを扱う酒販店、日本の有名ブルワリーの直営店、その他ビアバー。昨年5月に「お酒ドンキ」が、今年4月には、アメリカのビール輸入大手アンテナ・アメリカの東京店がオープンしている。なぜここにクラフトビールが集結するのか。八重洲地下街に1964年から構える酒販の老舗「リカーズハセガワ本店」を訪ねた。
その1はこちら:日本屈指のクラフトビール街・東京駅八重洲口にオープンした「お酒ドンキ」の歩き方
酒販老舗ならではのネットワークが持続中
八重洲地下街の1番通り。東京駅から歩くといちばん奥、銀座通りから入れば手前にあたるこの場所に、地下街誕生期から営業している酒販店がリカーズハセガワ本店だ。ハードリカー中心に、特にシングルモルトウイスキーの取り扱いが豊富、ウイスキーならリカーズハセガワだった。ウイスキー以外の洋酒も日本酒も扱うが、ここ数年、棚の占有率を増しているのがクラフトビールだ。
「以前はビールといえば、日本の大手メーカーのラガーしか置いてなかったんですよ」と、話すのは店長の倉島英昭さん。「1990年代の後半からは地ビールも入れてきました。細々と続けてきて、それが最近ですね、ビール棚を拡張して冷蔵庫も4面に増強しました」。今やクラフトビールの詰まった冷蔵庫が1番通りに堂々と面を向けている。
店長の倉島英昭さん。この道26年のベテラン。愛するビールスタイルはWIPA。
冷蔵庫をのぞくと、知名度の高い日本のブルワリーのビールが目につく。しかも、それぞれフルラインナップとはいかないまでも、定番プラス新作と、品揃えが厚い。「以前から取引のあるメーカーさんのブルワリーも多いですね」というように、90年代の地ビール時代から生き残ってきた志賀高原ビール、箕面ビール、常陸野ネストビールなどがラインアップ。さらにホップコタン(北海道)、AJB(長野県)、ベアードビール(静岡県)、二兎醸造(滋賀県)など、人気上昇中の注目ブルワリーのビールがズラリと並ぶ。
すでに評価を確立しているブルワリーと注目ブルワリーのビールが詰まった冷蔵庫。
「日本のブルワリーは品質に対するこだわりがとても強いですね。温度管理なども気を遣います。常温保存できるビールはまだ少数派ですから」ということで、冷蔵庫で冷えているのだ。
「毎週、新作を出すブルワリーもありますが、その新作を求めて来られる常連さんもいます。週末のたびに大きなカゴを持って来られます」
最近、人気ブルワリーの新作ビールはオンラインで販売されるとすぐに売り切れてしまう現象が見られる。常時取り扱いのあるブルワリーの新作なら、ここで買える可能性が高いというわけだ。新作を求めて通うとは、かなりマニアックな常連さんとお見受けする。
世界のトレンドを押さえたラインナップ
輸入ビールの棚を見る。ミッケラーやブリュードッグなどメジャーブランドのビールがズラリズラリ。売れ筋と世界のビールトレンド、双方向へ目配りしながらの仕入れだ。八重洲地下街にはこの春、アメリカのビール輸入大手のアンテナ・アメリカの直営店がオープンしているが、そちらとはひと味違うアラウンドワールドなラインナップといえる。
イギリス、アメリカをはじめとした輸入ビールの棚には別世界が広がっている。
「最近、世界的に人気なのはサワー系ですね。かなり入れています。また、うちのスタッフの好みもありますが、スタウトを多めに入れています。インペリアルスタウトはけっこう人気がありますよ。コアなファンが多いのですが、バレルエイジドのビールも注目です」
というわけで、輸入ビール棚のほうは国産ビール棚と比べるとマニアック度が高い印象だ。エストニアのポーター、ベルギーのインペリアルIPAなど、ビールマニアしか知らないようなブランドも多数。
リカーズハセガワ・セレクトで入門者にもおすすめ
では、クラフトビール初心者には不向きかというと、決してそうではない。むしろおすすめできる。ここに並んでいるビールは、長年、国内外の酒を仕入れてきた目利きが選んだものであり、定評あるブルワリーのビールであるからだ。初心者も安心して選ぶことができると思う。特に日本のブルワリーは質の高いセレクト感があり、迷いすぎずに選べるのではないだろうか。何よりリカーズハセガワはハードリカーも含めた世界の酒を扱う店。その蓄積された豊富な知識をもつスタッフから教示されるものも少なくないだろう。
そうやってじわじわっとビールの奥深さを知り、さらに深く知りたくなったら、同じ八重洲地下街にはクラフトビールの店はまだいくらもある。どんどんクラフトビールの世界にはまっていける、これが今の八重洲地下街の魅力だ。
●リカーズハセガワ本店
八重洲地下街 中4号 八重洲地下1番通り 03-3271-8747
取材・文/佐藤恵菜