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世界初の植物性培養フォアグラが登場、どこまで本物の味に近づいた?

2022.07.07

代替肉の研究が活発に行われる中、世界初の植物性培養フォアグラが誕生した。代替肉商品の企画、製造、販売を手掛ける中で、なぜ、世界三大珍味であるフォアグラに着目したのか、発表会で話を聞いた。

世界的にたんぱく質が足りていないという現状

農林水産省ホームページより

世界初の植物性培養フォアグラを開発した「Dr.Foods」は、培養肉、微細藻類、遺伝子組み換え大豆の研究、代替肉の研究開発、代替肉商品の企画・製造、通販事業を手掛けている。地球を科学の力で救うことを目的に、研究開発を行っている。植物性の代替肉は、ヴィーガンの人に向けて開発されているから自分には関係ないと感じている人も多いようだが、実は、それだけではない。

世界初の植物性培養フォアグラ開発について話す株式会社Dr.Foods代表取締役の石塚孝一さん。

「世界的にたんぱく質が足りません」と、話すのはDr.Foods代表取締役の石塚孝一さん。日本の人口は減少傾向だが、世界的には人口が増え、食生活の向上により肉食の増加が予想されている。

日本の食料自給率は、農林水産省によると生産額ベースで67%。世界的にたんぱく質が不足しても、日本国内で何とかなるだろうと感じるかもしれないが、品目別に確認すると、そういうわけにもいかなそうだ。例えば、牛肉の場合、自給率は36%。ここには、畜産の飼料は含まれていない。飼料も国産となると、わずか9%の自給率だ。

世界中で不足するとなると、輸入で手に入れることも難しいことは容易に想像できる。肉食主義という人にこそ、代替肉の進化は切実な願いになるのではないだろうか。

たんぱく質不足が予想されることから、シンガポールでは、2021年に食用細胞培養肉の販売が認められている。一方、日本では、動物性の培養肉を研究開発しても販売できないことから、植物性にして作れないかと開発を進めたという。

なぜ植物性フォアグラに挑戦したのか

フランス料理の食材であるフォアグラは、世界三大珍味といわれ世界中で愛されている食材だ。日本人は、毎日食べるものではないが、ハレの日の料理として食べられることがある。

しかし強制給餌を行いガチョウやアヒルを育てる生産方法が議論の対象となり、欧米や欧州連合においては、生産や販売を禁止する動きもある。そこで、Dr.Foods執行役員で、フランス人の生物学博士アレクシ・グイヨネさんは、珍味で愛好家も多いフォアグラを、動物に負荷を与えない植物性で再現しようと考えたそうだ。

「ヴィーガンのフォアグラは、いくつか存在します。でも、それらの味に満足できませんでした。」と、アレクシ博士。

株式会社Dr.Foods執行役員で生物学博士のアレクシ・グイヨネさん。

フォアグラを食べ慣れているからこそ、既存の植物性のフォアグラに違和感が覚えたようだ。今回発表した植物性培養フォアグラは、カシューナッツを麹によって特定の温度で発酵させたものが原料になっている。日本の発酵技術を参考にすることで、本物に近い味が実現できたとのこと。来日してから、醤油や味噌、日本酒の研究を続け、さまざまな麹を試し、味と柔らかい香りのいい麹に出会ったことで完成にこぎつけた。カシューナッツと麹の発酵食品なのではないかと思ったが、菌を培養して発酵させるため、植物性培養と呼ばれている。

植物性培養フォアグラはパテタイプと瓶詰めの2種類

ヴィーガンフォアグラ(瓶詰め60g入り) 745円(消費税込み) 2022年7月2日発売

ヴィーガンフォアグラ(一切れ)486円(消費税込み) 2022年7月2日発売

アクシス博士によって、ラボで完成した植物性培養フォアグラは、食品工場として64年の歴史がある「マーマフーズ」との協業で、瓶詰めタイプと焼いて食べるタイプの2種類が完成した。マーマフーズ開発室室長の及川咲貴さんによると、ラボで成功したレシピ通りに作ってみても、分離したり、滑らかにならなかったりとその後も試行錯誤の日々が続いたそう。

マーマフーズ株式会社開発室室長の及川咲貴さん。

「常温で植物性油脂が溶け出すこともあり、融点の高いものを探したり、本物と食べ比べて風味を近づけたり、普段食べ慣れていないので苦労しました」(及川さん)
試作ができ上がるたび、社内で試食会を行ったが、最初はどうなることかと思ったというほど、別物だったようだ。そこから約1年半かけ、ようやく2種類のヴィーガンフォアグラが完成した。

完全植物性の「NEXTフォアグラバーガー」を販売

NEXTフォアグラバーガー 単品1800円/ポテトセット 2300円/ネクストサラダセット 3000円(すべて消費税込み)

世界初の植物性培養フォアグラは、今回の発表会場にもなったサステナブルなレストラン「WAYBACK BURGERS 表参道店」で、完全植物性の『NEXTフォアグラバーガー』として発売される。ネクストミーツ社が販売するほうれん草を練り込んだバンズに、同じくネクストミーツ社の代替肉のパティ、玉ねぎ、マッシュルームにヴィーガンフォアグラがサンドされ、なかなかのボリューム感だ。

代替肉のパティと共にサンドされたヴィーガンフォアグラは、本物より食感がやや柔らかい印象。食べた後味は、まさにフォアグラ。ナッツの香りを感じないというより、まるで動物性のフォアグラさながらの香りと味だった。これには、驚き。

瓶詰めタイプを使ったカナッペも試食したが、本物より油分が少なめという感じ。もしかしたら、味は好きだけれどフォアグラ特有の脂っこさが苦手という人には、こちらの方が好まれるのではないかと感じた。

今後も地球を科学の力で救うべく開発を続けていく。

Dr.Foodsは、大阪大学と共同で培養肉の研究も行い、今後も植物性培養フォアグラの開発を進めていくことで、地球にやさしい社会の実現に向けて貢献していくという。ヴィーガンでなくても、代替食品がおいしいから選ぶという日が、近い将来くるかもしれない。

・Dr.Foods
https://dr-foods.net

取材・文/林ゆり

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