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【深層心理の謎】夢をよく思い出せる人はクリエイティビティが高く脳活動が活発とされる理由

2022.07.07

 今朝、目覚める直前まで見ていた夢がどうにも思い出せない。すごく意味深な内容だったはずなのだが、その片鱗さえよみがえってこないのだ。

夢について考えながら椎名町駅前を歩く

 私鉄沿線のなんということもない駅前の光景だが、かつて見た夢に出てきた光景のようにも思えてくる。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 西武池袋線を椎名町で降りた。夜8時になろうとしている。ここから自宅まで散歩がてら歩いて帰るつもりだが、その前にどこかで夕食にしてみてもいいだろう。

 北口を出て駅前の通りを左に進む。こぢんまりした商店街だ。かつて夢の中に出てきたような記憶も薄っすらとあるのだが、はっきりとは思い出せない。

 街にしろ人物にしろ、夢に出てくるものは見たことがあるものしかないように思える。細部や構造は多少違っていたとしても、メディアを通じて見たものも含めて、モデルがあるように感じている。少なくとも自分は夢の中で初めて見たものはないはずだ。まぁ、とはいっても夢の内容はすぐに忘れてしまうので、あまり確かな話はできないわけではあるが…。

 屋根のあるショッピングモールの入口の前を右折する。この通りも商店街なのだが飲食店はあまりない。もう少し歩くことにしたい。

 そういえば今朝の起床直前まで見ていた夢はきわめて印象深いものであったのだが、不思議なことにまったく思い出せない。起きて少しの間、見た夢の内容を振り返ったはずなのだが、どういうわけか今は思い出すことができそうにない。もちろん夢についてよくある話で、こうして何かきっかけがなければ、普段は思い出そうとすらしないだろう。また一度や二度思い出すことができたとしても、翌日以降には思い出したことすら忘れていても不思議ではなさそうだ。

 その一方で僅かではあるものの、今でも思い出すことができる夢の記憶もある。誰にもそうした忘れがたい夢の記憶があるのかわからないが、少なくとも自分には内容とビジュアルを思い出せる2、3の印象深い夢がある。

 その1つは子どもの頃に見た夢で、モンスターに追いかけられる夢だった。明らかにその直近に見たテレビドラマの影響を色濃く受けていて、モンスターもテレビに出てきたものとほぼ一緒だったのだが、着かず離れずして走って逃げている途中で自分の身体が宙に浮き、低空飛行したことが強く記憶に残っている。夢の中でも身体がふんわりと軽くなった感触もあった。

夢を頻繁に思い出せる人はクリエイティビティが高い!?

 最初の十字路を左折する。某ラーメンチェーン店をはじめ、いくつかの飲食店が視界に入ってくる。ひとまず先へ進むことにする。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 子どもの頃に見た忘れられない夢は、スリリングでありながらも得難い体験をした痛快な夢だったのだが、今もこうした楽しい夢を時折見ているのだが、忘れているだけなのかもしれない。

 そうした夢を見ているとすれば、それをたびたび思い出すことができれば楽しいひと時にもなるだろう。しかし自分は夢をすぐに忘れてしまうのでなかなか難しい。枕元にペンとメモを用意して「夢日記」をつけるべきなのだろうか。

 そういう自分とは違い、見た夢を難なく思い出せる人々もいるようだ。羨ましいともいえるのだが、最新の研究では夢を頻繁に思い出せる人はクリエイティビティが高いという、輪をかけて羨ましくなる研究結果が報告されている。


 いくつかの(研究)結果は、夢の想起の頻度が、創造性や経験への開放性などの性格特性と正の相関関係があることを示唆しています。

 さらに、ニューロイメージングの結果は、特にデフォルトモードネットワーク(DMN)の領域内で、睡眠と覚醒の両方で、高い夢想起者(HR)と低い夢想起者(LR)で異なる神経生理学的プロファイルを示しています。

 これらの調査結果は、夢とマインドワンダリングがDMNによって支えられている自発的な精神的プロセスの同族に関係しているという新たな見解と一致しています。

※「Dove Press」より引用


 仏クロード・ベルナール・リヨン1大学の研究チームが2022年2月に「Nature and Science of Sleep」で発表した研究では、実験を通じて夢を頻繁に思い出すことができる人は、より創造的で、脳の機能的なネットワークの接続性が向上している傾向があることが示されている。つまり夢をよく思い出せる人はクリエイティビティが高く、脳活動が活発なのである。

 正常な睡眠特性と肥満度指数を持つ55人の健康な参加者(19~29歳)のうち、28人の参加者は高い夢の想起者(平均して週に約6つの夢を思い出すことができる)であり、27人の参加者は低い夢の想起者(平均して週に1つ未満の夢を思い出す)であった。2つのグループには、年齢、習慣的な睡眠時間、または教育において有意な違いはなかった。

 参加者は性格、不安、睡眠の質の自己申告による自己測定評価を行い、ウェクスラー記憶検査(即時および遅延記憶パフォーマンスの測定に使用)、ギルドフォード言語系創造性テスト(創造力の測定に使用)、および桁スパンタスク(作業メモリーの数の記憶容量の測定に使用)をそれぞれ完了した。

 その後参加者は研究室に一晩滞在し、参加者は安静時の脳活動を測定するために3回のfMRIスキャンを受けた。

 収集したデータを分析した結果、高い夢の想起者と低い夢の想起者は性格、不安のレベル、睡眠の質、および記憶能力には違いはないものの、高い夢の想起者は、低い夢の想起者よりもギルドフォード言語系創造性テストで有意に高いスコアを獲得していることがわかった。これは、彼らがより優れた創造力を持っていることを示している。

 さらに低い夢の想起者と比較して、高い夢の想起者のデフォルトモードネットワーク(DMN)内の機能的接続性の増加が観察された。接続性が向上したDMNは創造性と夢を促進することが示唆されることになったのだ。しかし創造性スコアとDMN接続性の間には有意な相関関係は見られなかった。

 ともあれ見た夢を毎日のように思い出せる人は創造性が高く脳が活発に活動しているという、なかなか羨むべき研究結果が示されることになっている。このような話を聞けばやはり「夢日記」をつけるしかないのかもしれない。

食べ応えのある鉄板焼き定食をいただく

 再び別の商店街と交差する十字路に出る。左右どちらにも店はあるが、今日は真っすぐ進むことにしたい。通りの名前には某スーパーの名前が冠されている。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 駅前とは違いこの通りのような光景が夢に出てきたことはないと思うが、夢に出てくる街はいくつかに限定されているように思えたりもする。別の日に見ている夢でも、自分がいる街が同じだったことは確かにある。なかなか面白いものだ。

 通りをさらに進む。そば屋や居酒屋などがあるがもう少し先へ行ってみよう。部屋に戻ってから少しやることがあるので「ちょっと一杯」は控えることにしたい。

 左にあるコンビニの向かいに緑色の庇のお店がある。洋食店だ。店先にいろいろなメニューの紹介が表示されている。どれもなかなか美味しそうだ。入ってみよう。

 カウンター席もあるが先客がいたので、空いていた2人掛けのテーブル席に着かせていただく。店内は店先からのイメージ通りでこぢんまりとしたスペースだ。席に立てかけてあるメニューを開いてザッと眺める。

 冷たい麦茶を持ってきてくださったお店の人に「牛肉のスタミナ鉄板焼きセット」を注文した。どうやら1人で切り盛りされているお店のようだ。

 グラスの麦茶をひと口飲む。夢のことを考えてふと気づいたのだが、そういえば夢の中で物を食べたという体験がほとんどない。飲食店などに入ったこともまずないように思える。たぶんこれは個人的な傾向なのだろう。

 夢の中でいろいろと料理を食べたことがあるという話を聞いたことはある。夢の中の料理はどんな味がするのだろうか。夢の中で美味しい思いができるとすればそれはそれで羨ましい話だ。

 料理がやってきた。見るからにボリュームがある。ご飯と味噌汁もしっかりとした量がある。さっそくいただこう。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 鉄板で提供されているので熱々だ。キャベツはシャキシャキしているし、肉は冷凍もののようだが牛肉の旨味がしっかりとある。中華料理系の豚肉の炒め物とは文字通りひと味違っていて、案外ほかではあまり食べられそうにないメニューだ。味付けは見た目ほどに濃くはなく、どんどん食べ進めてしまいそうだ。

 夢の中で何かを食べることできるとすればどんな料理を食べたいだろうか。味や風味が再現されるのかどうかが肝心な点ではあると思うが、やっぱり食べている時の歯応えも重要であるような気もしてくる。とすれば今食べているような肉と野菜、そしてご飯を順番に味わうようなこうした食べ応えのある洋食のメニューがいいのかもしれない。夢の中で麺類はあまり食べたくない気もするがまぁ、それは人それぞれなのだろう。

 そして個人的には夢の中でお酒も飲んだことはないのだが、もしも夢の中でアルコールを飲んだとしたら二日酔いで目覚めるのだろうか……。

文/仲田しんじ

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