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私道に面した土地、戸建住宅を購入する時に注意すべきこと

2022.07.05

土地や戸建住宅の購入を検討している際には、「私道」に面した物件を目にするケースもあるでしょう。

私道に面した物件でも、購入・利用に当たって何らかの支障が生じるとは限りません。しかし、接道の状態や私道の権利関係によっては、購入した物件を予定どおりに利用できないケースもあるので注意が必要です。

今回は、私道に面した土地・戸建住宅を購入する際の注意点をまとめました。

1. 「私道」とは?

「私道」とは、私人(個人・法人)が所有する土地のうち、道路として使用されている区域を意味します。

私道はあくまでも私人の所有地であるため、通行する際には所有者の許可が必要です。

私道と対になる用語は「公道」で、国や地方公共団体が管理する道路を意味します。公道は私道と異なり、原則として誰でも自由に通行できます。

2. 私道に面した物件を購入する際に確認すべき事項

私道に面した物件を購入する場合、建築基準法上の接道要件を満たしていることと、私道の権利関係を確認する必要があります。

2-1. 接道要件を満たしていることを確認する

私道が設定される目的はさまざまですが、特に住宅用地の場合には、建築基準法上の「接道要件」を満たすために私道を設定するケースが多いです。

建築基準法43条1項に基づき、建築物の敷地は、原則として「道路」に2メートル以上接している必要があります。

この「接道要件」を満たしていない土地には、一部の例外的なケースを除いて、建築物(戸建住宅・マンション・ビルなど)を建てることができません。

建築基準法上の「道路」とは、原則として幅員4メートル以上の道路とされています(同法42条1項)。

ただし、道路の幅員が4メートル未満の場合でも、土地の一部に私道を設定して幅員合計4メートル以上とすれば、建築基準法上の「道路」と認められることがあります(同条2項)。このような形で、建築基準法上の接道要件を満たすために私道を設定することを「セットバック」と呼びます。

セットバックによる私道は、建築基準法上の接道要件ギリギリの位置に設定されているケースが多いです。したがって、私道に面した土地を購入して新たに建築物を建てる場合、接道要件を満たしているかどうかを事前に十分確認しておくべきでしょう。

2-2. 私道の権利関係を確認する

私道に関してよく見られるのが、私道の権利関係を巡るトラブルです。

私道はあくまでも私人の所有地なので、私道を通行したり掘削したりする際には、私道所有者の許可が必要になります。

そのため、私道に面した物件を購入する際には、その私道を誰が所有しているのかが重要なチェックポイントです。

私道所有者のパターンは、以下の3つに大別されます。

①物件の所有者が、私道を単独で所有している場合
この場合、私道に面した物件を購入する際には、併せて私道も購入するのが通常です。
物件所有者が私道も自由に利用できるので、購入しても特に問題ありません。

②物件の所有者が、私道を他人と共有している場合
私道については共有状態であるため、他の共有者との調整が必要になります。
私道を通行することについては問題ありませんが、掘削などを行う際には、他の共有者の許可を要する点に注意が必要です。

③物件の所有者は私道を所有しておらず、使用権の設定を受けているに留まる場合
使用料の支払いが発生するケースがあるほか、使用権の期限が切れた場合にトラブルが発生する可能性があるため、ハイリスク物件と言えるでしょう。

物件を購入したあとで私道に関するトラブルに巻き込まれないように、私道に関する権利関係をあらかじめ確認しておきましょう。

3. 私道にも固定資産税はかかるのか?

私道は私人の所有地であるため、原則として固定資産税が課税されます。

私道部分には建築物を建てることができないため、固定資産税を「カラ払い」する形になってしまうケースも多いです。

ただし、私道が「公共の用に供する道路」である場合には、例外的に固定資産税が非課税となります(地方税法348条2項5号)。

私道が「公共の用に供する道路」と認められるには、以下の3要件を満たすことが必要です。

①開放性
所有者が、私道の利用に関して何らの制約も設けていないことを意味します。
(NG例)
・利用時間を制限している(夜間通行禁止など)
・私物を置いている

②公共性
広く不特定多数の者の利用に供されていることを意味します。
(NG例)
・利用者を制限している(施設利用者に限るなど)

③準道路性
道路法上の道路に準ずると認められることを意味します。

私道に関する固定資産税課税の具体的な取扱いについては、各市町村の税事務所(または都税事務所)にご確認ください。

4. 私道に面していることは、市場価格に影響するのか?

私道に面している物件であっても、その私道を物件所有者が単独で所有している場合には、市場価格への影響はほとんど生じないと考えられます。物件と併せて私道も購入することで、それぞれ問題なく利用できるからです。

これに対して、物件所有者が私道を他人と共有している場合や、私道について使用権の設定を受けているに過ぎない場合には、物件・私道の利用に関する潜在的なリスクが存在します。

私道リスクがどの程度のものかはケースバイケースですが、顕在化した際に大きな影響が見込まれる場合には、物件の市場価格を押し下げる要素になり得ます。

このような物件の購入を検討するならば、そもそも私道リスクを受け入れられるかどうかに加えて、私道リスクを織り込んだ販売価格になっているかどうかについても注目すべきでしょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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