隣家のゴミ屋敷から悪臭や害虫が! 被害を解消するためできる対策はある?
隣家の敷地に大量のゴミが放置されており、ひどい悪臭や害虫が発生している場合、周辺住民としては大きな生活上のストレスに苛まれてしまいます。
ゴミ屋敷による生活被害を解消するには、周辺住民が団結して所有者と交渉することが考えられます。しかし、それだけでは所有者がゴミの撤去に応じないケースも多いので、行政にも相談しながら対応するのがよいでしょう。
今回はゴミ屋敷の違法性や、ゴミ屋敷による生活被害を解消するための方法などをまとめました。
1. ゴミ屋敷は違法?
ゴミ屋敷は、周辺住民の権利を侵害するものとして、違法性を帯びるケースがあります。
1-1. ゴミが隣地にはみ出している場合|所有権の侵害
ゴミ屋敷に放置されたゴミが隣地にはみ出している場合、隣地所有権の侵害に該当します。
この場合、隣地所有者はゴミ屋敷の所有者に対して、はみ出ているゴミの撤去を求めることが可能です。
1-2. ゴミが敷地内に置かれてる場合|生活被害が生じれば不法行為
ゴミが隣地にはみ出しておらず、すべてゴミ屋敷の敷地内に置かれている場合には、隣地所有権の侵害は発生しません。
しかし、ゴミによって悪臭や害虫などの生活被害が生じ、周辺住民に経済的または精神的な損害を与えている場合には「不法行為」が成立します(民法709条)。
この場合、ゴミ屋敷の所有者は、周辺住民に生じた損害を賠償しなければなりません。
2. ゴミ屋敷による悪臭・害虫の被害を解消する方法は?
ゴミ屋敷で発生している悪臭・害虫などの被害を解消するためには、主に以下の方法が考えられます。
2-1. 他の周辺住民と団結して交渉する
ゴミ屋敷の所有者に対して、単独でクレームを入れたとしても、聞く耳を持つケースは少ないと考えられます。
ゴミ屋敷に対して不快感を覚えているのは、他の周辺住民も同様と思われます。そのため、ゴミ屋敷の所有者にクレームを入れるのであれば、周辺住民が一致団結して行うのがよいでしょう。
複数の周辺住民が一致してゴミ屋敷への不快感を示し、ゴミの早期撤去を求めれば、所有者も応じる可能性があります。
2-2. 損害賠償請求を行う
ゴミ屋敷のゴミを撤去しなければ、悪臭や害虫などの生活被害を理由に、所有者に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行うことも考えられます。
損害賠償請求そのものには、ゴミ屋敷のゴミを撤去させる強制力はありません。しかし、賠償金の支払いを迫られたことをプレッシャーに感じた所有者が、自発的にゴミを撤去することはあり得るでしょう。
2-3. 行政に相談する
周辺住民の行動だけではゴミ屋敷問題を解決できそうにない場合、行政に相談することもご検討ください。
各市区町村では、生活環境の維持・改善を取り扱う部署(課)にて、ゴミ屋敷問題に関する相談を受け付けています。
また、後述するように「ゴミ屋敷条例」を制定し、ゴミ屋敷に対して具体的な処分ができるようにしている自治体も存在します。
ゴミ屋敷の所有者がゴミの撤去に非協力的な場合には、生活被害を早期に解消するためにも、早めに行政と連携してご対応ください。
3. 「ゴミ屋敷条例」が制定されている自治体も|行政ができる対応は?
市区町村の中には、いわゆる「ゴミ屋敷条例」を制定し、ゴミ屋敷の解消に向けたルールや処分権限などを定めているところがあります。
たとえば横浜市の条例では、ゴミ屋敷等の「建築物等における不良な生活環境」が発生している場合、市長が以下の対応を行うことができると定めています。
参考:横浜市建築物等における不良な生活環境の解消及び発生の防止を図るための支援及び措置に関する条例|横浜市
①ゴミの排出支援
建築物等における不良な生活環境が発生し、近隣における生活環境が損なわれており、かつそれを発生させた者(堆積者)が自分で解消することが困難であると認めた場合には、堆積者の同意を得て、一般廃棄物(ゴミ)の排出の支援を行うことができます(同条例6条3項、4項)。
②指導
ゴミの排出支援によっては、建築物等における不良な生活環境を解消することが困難と認めた場合には、堆積者に対して書面により必要な指導を行うことができます(同条例7条1項)。
③勧告
指導を行ったにもかかわらず、なお建築物等における不良な生活環境が解消されない場合には、解消措置を行うよう書面で勧告することができます(同条2項)。
④命令
勧告を行ったにもかかわらず、なお建築物等における不良な生活環境が解消されない場合には、審議会の意見を聴いたうえで、期限を定めて解消措置を行うよう書面で命ずることができます(同条例8条1項、2項)。
⑤代執行
解消措置の命令を受けた者が、正当な理由なく期限までに解消措置を講じない場合は、行政代執行法の規定に基づき、行政主導でゴミを撤去することができます。この場合、撤去に要した費用は堆積者に対して請求されます。
「ゴミ屋敷条例」が制定されている市区町村では、行政による上記に準じた対応が可能となっているケースが多いです。ゴミ屋敷による生活被害に困っている方は、市区町村の窓口に相談することをお勧めいたします。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw