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男らしさ、女らしさって何?「ジェンダー」問題をわかりやすい言葉で考える

2022.07.04

わかりやすい言葉で「ジェンダー」を考える

使う人間が生きているのと同じように生きているのかもしれない言葉。

イメージで捉えてしまったり、曖昧なまま使っていたりする言葉。

少し立ち止まって、そんな言葉と向き合う時間を提案します。

この頃、ことに頻繁に使われるようになった言葉の一つである「ジェンダー」

無造作に使われている一方で、概念への理解が追いつかずに、誤用されているシーンもたびたび見かけます。

よく使われている一方で、実は正確に理解するのが難しい言葉なのです。

「ジェンダー」の概念について、具体的な例を取り上げつつ、噛み砕いて考えてみたいと思います。

ジェンダーと性別はどう違う?

辞書で「ジェンダー(gender)」を引くと、「生物学的な性別を示すセックスに対して、社会的・文化的に形成される性別。作られた男らしさ・女らしさ(広辞苑)」とあります。

ジェンダーが生物学的な性別(sex)とは違うものであるということがわかりますが、では、生物学的な性別とジェンダーはどのように違うのでしょうか。

ジェンダーは、人間社会における性別の捉え方がつくりあげたいろいろな概念なので、実際に存在する生物学的な性別や性差と違って、イメージや認識であり、流動的で実体がないといえます。

つまり、社会が作り上げてきた性別にまつわる思い込みや偏見を含むイメージなどのこと。「男らしさ」や「女らしさ」と表現される虚像です。

「ジェンダー」という言葉自体に正誤の概念は含まれていませんが、性別に紐付けられた役割や嗜好などの認識は、男女二元論を助長し、それに触れる人々を抑圧してしまいます。

例えば、「甲斐性なし」や、「ひ弱」という言葉が主に男性に向けられて使われたり、「気が強い」、「じゃじゃ馬」という表現が使われるのが、ほとんど女性であることなどは、ジェンダーが生み出す抑圧のかたちです。

男は稼いで家族を養うべき、とか、たくましくあるべき、そして、女はおしとやかで控えめなのが普通、といった「あるべき姿」を振りかざすジェンダーが抑圧を生み出しています。

ジェンダーをつくるのは社会

生まれたばかりの赤ちゃんの時には誰もジェンダーに影響を受けてはいません。

シモーヌ・ド・ボーヴォワールが著作『第二の性』の中で残した「ひとは女に生まれない、女になるのだ」という言葉のように、社会が構築した言語や行動様式が、しつけや社会に溢れる表現を通して、社会全体で習得されていきます。

人は社会生活の中、あらゆる方法でジェンダーの影響を受け、それを内在化するようになるのです。

こうして内在化されたジェンダーは、人種や、階級、民族、性、地域にまつわる言説から構築されるアイデンティティと絡まりあって、自分では認識しにくいかたちで私たち自身として存在するようになります。

例えば、私は髪をのばし、日によって化粧をしたり、スカートを履いたりしていますが、それらが「私らしさ」といえるのか、それともジェンダーからくる表現なのかを考えると、頭を抱え込んでしまいます。

成長した個人とジェンダーを切り離すことは不可能となり、また社会においても政治や文化の交錯からジェンダーだけを切り分けることはできないのです。

ジェンダーが私たちの生活の中にどのように存在するのか、その根深さは計り知れません。

褒めてるつもりの「男なのに」「女なのに」

ジェンダーが、私たちの生活に深く根ざしていることは、コミュニケーションや表現にも顕著にあらわれます。

悪気のない言葉、時には賞賛のつもりで口にした言葉に、偏見や差別性を指摘されて驚いたり、コマーシャルなどメディアの「炎上」に疑問を持った経験がある人もいるかもしれません。

ジェンダーがあまりに当たり前になっているせいで、理解の難しさや摩擦が生まれています。

「女なのにリーダーシップがあるね」

「男なのに育児に積極的でえらい」

褒めているつもりのこうした言葉や、「リケジョ」、「イクメン」、「草食男子」、「美人すぎる〇〇」といった流行のワードにもジェンダーバイアスはあらわれています。

こうした言葉が日常で使われ、時にはマスメディアで多用され、それに触れる人が増えることで、ジェンダーの「当たり前」がひろがり、それを内在化させる人が増え、結果的にジェンダーギャップは大きくなってしまいます。

性を否定するのではなく、ジェンダーから自由になろう

ジェンダーから自由になろうとする考え方を「ジェンダーフリー」と呼びます。

最近は性別にかかわらず、スカートとスラックスを選べるようにする中学や高校が増えてきていて、こうした取り組みはジェンダーフリーの概念から有意義であるとして注目されています。

・おもちゃ売り場の性別分けの廃止

・会社、学校などで、「さん」などの共通の敬称を使う

・性別の色分け(男=青、緑、女=赤、ピンクなど)をやめる

なども同様に効果的だと考えられています。

映像やイラスト、さまざまな表現の際に、ジェンダーバイアスを気にしてチェックしてみるのも、とても大切だと思います。

誤解をうみやすく注意したいのが、ジェンダーフリーは、性差を否定するものではないということ。

ジェンダーフリーで目指されているのは、社会からの性別にまつわる刷り込みをなくしていくこと、あらゆる人がジェンダーに縛られることなく生きられることです。

そのために、「ジェンダー」という言葉を含め、言葉を理解して使おうとすることも、とても大切なのではないかと思います。

文/山根那津子

ジャーナリズム誌やカルチャー誌の編集をしていた何者でもないただのフェミニスト。自身のミソジニーに気がついて一時ベルリンに移住。書くこと、描くことが好き。

編集/inox.

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