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親の財布からお金を盗んだ子供…もしかして学校でいじめ?どう接するのが正解か

2022.07.04

5000円盗んだ、次は2万円抜き取った

今年の6月上旬のことですが、突然私のTwitterアカウントのDMに「子どもが親の財布からお金を盗んだときに、どう対応すればいいのですか?」と同時多発的に相談が寄せられるようになりました。

不思議に思いながら、色々と相談者様から話を聞いていると、Twitterで話題になっているということで、どうやらいわゆる「育児アカウント」と呼ばれるアカウントを運用しているあるお父さんの投稿が物議を醸しているようでした。

詳細の内容は伏せますが、息子さんがお父さん(アカウント運用者様)の財布から5000円を抜き取り、それを叱ったら次の日にさらに2万円抜き取ったそうです。

これは大変なことですね。

ただ、物議を醸した理由としては、当該育児アカウントには息子さんと思われる顔写真が複数投稿されており、その状態で子どもの窃盗を報告するツイートをすることはいかがなものか、という議論が起こったからでした。

今回、こちらの投稿の是非については触れません。

しかし、このツイートの内容である「親の財布からお金を盗む子どもの対応法」について、今回は元少年院教官の目線で現実的な対処法を解説していこうと思います。

叱りつけるよりも、淡々と問題点の穴を塞いでいくべき

状況によって多少順序は異なるかもしれませんが、確実に盗んでいることがわかっている場合には、基本的には以下のような順序で対応する方が望ましいです。

各項目について、どうしてそうするべきなのかの理由については後述します。

①盗んだことについて事実を確認する
(お金が減っていることを告知。本人が否認する場合は無理に追い詰めない)

②可及的速やかに学校側に連絡をする
(学校側と情報共有。学校でも盗難等が発生していないか確認)

③子どもと改めてもう一度話し合う
(感情的にはならず、行為についてのみ非難し、今後のお金の管理について話す)

ざっと書いて見て、こんな感じでしょうか。

では、ここから理由を解説していきます。

まず①について、解説する前に現場を確認して見ましょう。

保護者の方からすれば、子どもが自分の財布からお金を盗むなんてことは考えたくないですよね。しかし昔から、友達と遊ぶお金や洋服代、欲しいゲーム代のためについつい無防備な親の財布から……というのは多くありました。

ただし、ここ数年は新型コロナウイルス感染症流行の影響により、スマホゲームの課金のために保護者の財布からお金を盗むケースやクレジットカードを勝手に使用したり、勝手にキャリア決済を行ったりするケースも増えており、今後もこの手のトラブルは増えていくと思われています。

以下の図は、オンラインゲームに関する相談のうち契約当事者が小学生・中学生・高校生の相談件数です。このように子どものお金の使い道や使う額も増えたからこそ、家庭内における財布の管理もますます重要になっています。

国民生活センター資料引用

ただ、もしも子どもが自分の財布のお金などに手をつけていることに気づいたとして、冷静に対応できる保護者の方は多くないと思いますし、ついつい感情的に叱りつけてしまうこともあるでしょう。しかし、それはおかしいことではなく、普通の反応だと思います。

そしてここから①の話になるワケです。

今回は前提条件として、確実に子どもが保護者の財布からお金を盗んでいることが明らかな場合を想定していますが、まずは深呼吸でもして気持ちを落ち着けてから子どもを呼び出して「お金を盗んだのか」どうかを確認してください。

多くの場合、子どもの反応は「犯行を認めるor否認する」の2つに分かれると思います。

では、ここで子どもが犯行を認めたらどうすればいいのか。

子どもの態度によると思いますが、素直に犯行を認めた点については内心で承認して(素直に言ってくれてありがとうというと、語弊を恐れずに言えば「舐められます」)子どもに「もしかして、いじめられているのか?(心配しているというトーンで、お金の使い道やお金を盗むことが悪いことだと理解しているか確認する)」とゆっくり質問しつつ諭してください。

そして、一通り事実確認が終了したら、「今日はこれまで」とまた改めて話し合いをする旨を子どもに伝えて、一旦話し合いは終わりにしてあげてください。なぜなら、悪いのは子どもなのは間違いないのですが、緊張状態を長く続けることは、保護者にとっても子どもにとっても悪影響しかないからです。ここでは、一旦事実を確認とお金を盗むことについての認識を確認できれば問題ありません(もちろん、財布を子どもの手に届かないところに隠すなどの対策は必要ですが……)

では、子どもが犯行を否認している場合はどうするのか。

今回の場合は、子どもが嘘を吐いていることになります。

嘘を吐く理由としては

「怒られたくない」「見つかったことに動揺してつい否認してしまった」

「誰かを庇っている」「認めるわけにはいかない理由がある」

などが挙げられます。

子どもが否認している場合、保護者の方がついつい「本当のことを言いなさい!」と詰問してしまいがちです。しかし、子どもを過度に追い詰めてしまうと、子どもが完全に心を閉ざしてしまったり、その場しのぎ的な嘘を重ねたり、その後の信頼関係の回復や更生の妨げになる可能性があります。

そのため、もしも子どもが否認した(嘘を吐いた)場合には、こちらも「また話し合いをしよう」と一旦その場は終わらせて、後日お互い時間を置いてから話し合いをすることにしましょう。

そして保護者の方は、当日か次の日にでも学校に報告の連絡を入れて欲しいと思います。

これは、子どもが犯行を認めている場合でも、否認している場合でも同じです。

どうして②学校に連絡する の必要があるのか、ポイントは2つです。

(1)家の中だけでなく、学校でも他人の財布からお金を盗んでいる可能性
(2)いじめや不良交友によってお金を家から持ち出している可能性

この2つの可能性は、家の中の生活態度だけではなかなか見えないものです。

学校における見守りや助言を貰うためにも、一報は入れた方がいいでしょう。また、「犯行を認めていること」「否認していること」も、学校側に連絡する際にしっかりしてください。

ここで読者様の中には、「遊ぶお金やゲームの課金だったとしても学校に報告する必要があるのか?」と疑問に思った方も多いでしょう。

しかし、子どもが「遊ぶお金やゲームの課金のためにお金を盗んだ」と話していたとしても、実はいじめっ子や不良からお金を持ち出すように命じられているケースがあるからです。これに近いケースが、横浜市で起きたいじめ恐喝事件です。

この事件では、小学生の被害児童がいじめっ子たちからのいじめを回避するために、家から無断で多額のお金を持ち出していたことが判明しています。(1回最大10万円)。もちろん、親の財布からお金を盗む多くの子どもは「遊ぶお金欲しさ」に犯行に及ぶのですが、このようなケースもあるので学校と連携して対処することは非常に大切です。

また、犯行を認めている場合でも「実は……」といったことが出てくるかもしれません。

このような説明をすると、保護者の方の「学校に報告するなんて恥ずかしい」「学校から問題のある家庭だと思われたくない」との声が聞こえてきそうです。

たしかに、ここで問題を家庭の中だけで蓋をする方が楽かもしれません。しかし、これでは、親にバレなければ良いと考えるようになって、学校で盗むようになるかもしれませんよね。それに「学校から問題のある家庭だと思われたくない」という意見についても、事実として家庭の中ですでに犯罪が起きてしまっているわけですから、これはもう保護者だけで対処することは非常に困難な状況です。

また、普段聞くことのできない学校での生活態度や教育や見守りの方針を一緒に考えてもらえるという点において、学校は非常に頼りになる組織として機能します。

最後に③についてです。

まず、犯行を認めている場合には、子どもを呼び出して今回の件を学校側に伝えたこと、そこでもらった助言や今考えている今後の対応について、冷静に話しましょう。お金を盗んだ理由にもよりますが、お金の使い方や管理の仕方について親子で考えるきっかけとして前向きに話し合いを進めて欲しいと思います。

一方で、犯行を否認している場合には、どうして確信を持っているのかを丁寧に話した上で犯行を否認する子どもを否定するのではなく、お金がなくなっている事実と共に、もしも盗んでいるのなら許されないことであり、困っていることがあれば相談して欲しい旨を伝えて話し合いを進めましょう。また、継続して学校と連携を取りつつ、今後の指導方針などを決めていきましょう(家庭内問題行為については、児童相談所や法務省少年支援センターに相談へ行くのもアリです。様々な専門家のアドバイスを貰って対処しましょう)

罰だけはなく、次に繋がる教育の機会に

今回のケースに限らず家庭内の子どもの問題行動は、適切な方法で早期に介入することによってそれ以上大きな問題に発展することを防ぐことができます。ネットでは「厳しい罰を子どもに与えるべき」「警察に突き出せ!」との意見もありましたが、苛烈な報復的な措置は今後関わっていく子どもとの関係断絶や将来的な報復、さらなる問題行動に繋がる可能性が非常に高くなります。

一方で、子どもの問題行動の裏には必ずと言って良いほど「困りごと」が存在しています。つまり、子どもの問題行動は「子どもなりのSOS」と捉えることができるわけで、家庭内の対処が難しい場合には、ぜひ学校や専門機関を頼って欲しいと思います。

文/犯罪学教室のかなえ先生
2020年9月にデビューした、元少年院教官のVtuber。 登録者2.22万人(2022年3月末時点)。親しみやすい関西弁と幅広い学術領域を横断した事件解説が持ち味。特に、多くの犯罪者と関わってきた本人の目線から語られる事件解説は、その背景にある人間の弱さや社会問題への理解度が深まると定評がある。
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