セリフが少ないのに笑いが止まらないのは、さすが“コメディの天才”ローワン・アトキンソン!
2022年6月24日よりNetflixで独占配信中の『ローワン・アトキンソンのヒトvsハチ』は、イギリスで制作されたコメディドラマ。
イギリスの大人気コメディ『Mr.ビーン』シリーズのローワン・アトキンソンが原作・制作・主演。
あらすじ
大金持ちなバーゲンバテン夫妻の豪邸に、“ハウスシッター(留守番係)”としてハウスシッターズ・デラックス社から派遣されたトレヴァー・ビングリー(ローワン・アトキンソン)。
旅行好きで不在がちなバーゲンバテン夫妻に代わり、豪邸の管理と愛犬カップケーキの世話をすることになる。
ドアの開閉や台所設備の操作など、複雑なマニュアルを早口で説明してから足早に旅立ってしまうバーゲンバテン夫妻。
「とにかく必要なことは全てマニュアル本に書いてある」と言う。
豪邸にポツンと取り残されたトレヴァーは、貴重な美術品だらけの豪邸の中で慎重に仕事を進めていくつもりでいたが、そこに1匹のハチが飛び込んできたことで、事態は思いがけない方向に……。
見どころ
本作の“笑い”は、まるでカラクリ装置のように豪邸の至るところに仕掛けられ、後でやってくる爆発的な笑いを予感させながらジワジワと進んでいく。
トレヴァー本人はまったく気づかないまま致命的なミスをいくつも重ねていくのだが、その様子を観察している視聴者だけが気づいているという、もどかしさと面白さ。
「あ~っ、そんなことしたら後で大変なことに!」とハラハラするのだが、その時の上機嫌or呑気なトレヴァーの表情が絶妙。
トレヴァーvsハチの壮絶な闘いによって美術品や豪邸が破壊されていく中、愛くるしいカップケーキ(名前も可愛い)の存在が癒しとなっており、「面白い」「可愛い」を兼ね備えた作品に仕上がっている。
豪邸の中で次から次へと起こる“悲劇のドミノ倒し”は見ている分にはめちゃくちゃ面白いけれど、自分がもしトレヴァーやバーゲンバテン夫妻の立場だったら卒倒しそうなストーリーではある……(最後には意外なオチあり)。
余談だが、ジョルジュ・シムノンの推理小説の主人公ジュール・メグレをアトキンソンが演じているドラマ『メグレ警視』では、『Mr.ビーン』や本作とは別人のように渋くて紳士的な雰囲気を醸し出している。
表情や話し方、身ぶり手ぶりを変えるだけで、こんなにも同一人物の印象が変わるとは……。
人間を研究し尽くしてもはや職人芸の域に達しているアトキンソンの演技は、笑えると同時に感動すらしてしまうだろう。
Netflixシリーズ『ローワン・アトキンソンのヒトvsハチ』
独占配信中
文/吉野潤子