近年は温暖化が続き、30度を超える日も珍しくありません。ニュースや予報で『猛暑日』といわれたら、熱中症に陥らないために対策が必要です。猛暑日の定義と増加の理由、対策について解説します。
猛暑日とは
テレビやラジオのニュースなど流れる天気予報において、暑さ対策など猛暑に対する注意喚起を促す際、予報用語の一つとして猛暑日という単語を使います。
これにはどのような意味があるのでしょうか。猛暑日について解説します。
最高気温が35度以上
猛暑日とは『日中の最高気温が35度以上』の日のことをいいます。
全国各地の気象台や地域気象観測システム(アメダス)では、日々の気象情報の観測が行われています。
猛暑に該当する気温は、海風のある沿岸部よりも日中の気温が上昇しやすい内陸部や盆地で多く観測されています。
気象庁ではこれ以外にも、気温が高いときに用いられる予報用語があります。
- 真夏日:日中の最高気温が30度以上
- 夏日:日中の最高気温が25度以上
- 熱帯夜:夜間の最低気温が25度以上
- 超熱帯夜:夜間の最低気温が30度以上
はじまりはいつ?
1990年以降、地球温暖化や都市化の影響によって、1日の最高気温が35度を超える日が増えてきました。
世間で『それまでの真夏日とは違う定義が必要』との見方が強まり、猛暑日という用語が作られたのが始まりです。
2007年4月には気象庁により、気象用語の改正が行われました。以降、正式に天気予報や気象情報などで『猛暑日』が使われるようになったのが経緯です。
歴代では、2020年に静岡県浜松市・2018年に埼玉県熊谷市で41.1度を記録しました。2022年6月25日には、群馬県伊勢崎市で国内初の『6月中に40度超え』も記録されたところです。
近年では、都市部の気温が郊外よりも高くなる『ヒートアイランド現象』も見られます。保水力の低いアスファルトやコンクリートが猛暑を引き起こす要因の一つです。
参考:6月では観測史上初 群馬 伊勢崎で40度超 26日も熱中症に警戒を | NHK | 気象
猛暑はどうやって起こるのか
猛暑は沿岸部よりも、人口が密集した都心部や日中の気温が上昇しやすい内陸部で多く観測されています。これらはなぜ起こるのでしょうか。猛暑で発生する現象を解説します。
フェーン現象
内陸部や盆地で猛暑が起こりやすい原因の一つに、『フェーン現象』があります。
低い位置から水蒸気を含んだ空気が山を越えるとき、雲を作り雨となります。水分が抜けた後に残るのは、乾燥した空気です。
この乾いた空気は熱気を帯びており、山を下ることで内陸部や盆地に吹き込みます。こうして気温が押し上げられる現象がフェーン現象です。
過去には、台風や日本海側からの南風によって猛暑日になったことがありました。極端に急に暑くなるときは、フェーン現象が関係していることがあります。
参考:フェーン現象 – 気象庁
熱波による被害も出ている
猛暑は日本にとどまらず、世界各地で観測されています。フランスでは2003年、猛暑の影響により約1万5000人もの人が命を落としたといわれています。
2021年6月、カナダでは史上最高の気温49.5度が記録され、500人もの人が命を落としました。
例年、夏の平均気温は20度ほどで過ごしやすく、冷房設備が整っていないカナダでは、熱中症により多数の死者を出すという被害が報告されています。
このように、温暖化の影響は日本のみに留まらず、世界中で猛暑を引き起こし、人の命を奪う結果までもたらしているのです。
参考:猛暑の世界を生き抜く | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト
参考:カナダの気温、過去最高の47.5度に 「ヒートドーム」現象で – BBCニュース
熱中症対策の重要性
高温な環境下で体内に熱がこもり、水分が不足すると体温調節機能がうまく働きません。めまいや吐き気、ひどい場合は痙攣(けいれん)や意識障害などの症状が起こるでしょう。
『熱中症』と呼ばれるこれらの症状は、意外にも梅雨の時期に起こりやすいといわれています。
熱中症対策の重要性を理解し、熱中症にかからないように対策を練りましょう。
猛暑日には熱中症が起こりやすい
猛暑の中、日中の最高気温が高くなるにつれ、熱中症にかかる人が増加する傾向にあります。
気象庁では、夕方から翌朝までの最低気温が25度以上になる夜を『熱帯夜』と定義しています。夜間でも暑さが続き、体温が高く維持されてしまうため熱中症にかかりやすくなるのです。
梅雨明けの蒸し暑い時期には、日中の湿度が80%を超えることも多くなります。湿度が高いと汗が蒸発せず、熱も発散できません。体温調節がうまくいかずに熱中症になることもあるため、注意しましょう。
暑さ指数(WBGT)を知ろう
熱中症を予防することを目的として、アメリカで提案された指標に『暑さ指数(WBGT)』があります。
1954年に提案されたこの暑さ指数(WBGT)は、国際的に有効であると認められているものです。労働環境や運動環境の指針として、ISO等で規格化されています。
単位は気温と同じ摂氏度(度)で表示されますが、値は気温とは異なり別の意味を持ちます。
31度以上の指数は『すべての生活活動で熱中症がおこる危険性がある』という『危険』基準です。外出はなるべく避け、涼しい室内で過ごすことを推奨しています。
効果的な熱中症対策
熱中症は正しい予防方法を知り、普段の生活の中で気を付けるだけでもリスクを減らせます。
本格的に熱くなるのは梅雨明けからですが、気温が上がり始める梅雨入り前から適度な運動を行いましょう。体力をつけると、暑さにバテにくい身体をつくれます。
また、猛暑が予測される日中は、直射日光を避けることが賢明です。室内は、空調を利用して快適な温度を保ちます。衣服も、風通しの良いゆったりめのシルエットを選びましょう。
暑い日はこまめな水分補給を忘れず、無理な外での活動を避けます。万が一の連絡先についても、家族間で共有しておくことが大切です。
構成/編集部