雇用状態がパートやアルバイトの人でも、申請すれば介護給付金が支給されるのでしょうか?申請から受給までの流れと、見落としやすい介護休業中の注意点について解説します。介護給付金の特徴をしっかりと理解して、制度を最大限に活用しましょう。
介護休業給付金ってどんなもの?
介護休業給付金は、介護をする人なら誰でも受け取れるお金なのでしょうか?まずは介護休業給付金の特徴や支給される額、受給できる期間を解説します。
家族の介護で休業した際にもらえるお金
『介護休業給付金』は家族を介護するため『介護休業』を取得した後に支給されるお金です。給付金であり、支給額に対する税金はかかりません。
少子高齢化社会の日本にとって、家族の介護は社会的な問題といっても過言ではないでしょう。近年は『介護難民』や『老老介護』といった事態も少なくありません。
また、核家族の増加により近くに頼れる人がおらず、親の介護を1人で担う労働者もいます。身内の介護をする際に直面するのが、仕事と介護との両立です。
このような労働者の仕事と介護との両立を支援するために、国による介護休業給付金の支給がスタートしたのです。ちなみに、介護休業とよく似ている『介護休暇』は給付金の対象になりません。
参考:介護休業制度|厚生労働省
休業開始前の賃金の67%を最大93日間支給
介護給付金としてもらえる額は、『休業を開始する前にもらっていた賃金(日額)の67%』です。介護休業を取得する前の賃金が1日1万円の人は、日額6700円の給付が受けられます。
- 介護給付金支給額(要介護者1人当たり):休業日開始賃金日額×支給日数×67%
支給日数の上限は、『介護が必要な家族1人につき93日間まで』です。対象の日数の範囲であれば、3回まで分割して受け取れます。
例えば、母親の看護のために介護休業を取得し、介護休業給付金を50日分受け取ったとしましょう。1回目の介護休業では50日分の介護給付金をもらっているため、再度母親の介護が必要になって休業した際には残りの43日分を2回まで分けて受け取ることが可能です。
雇用保険に加入している人が対象
介護休業給付金を受け取る前提条件は、雇用保険に加入していることです。基本的に、雇い主には『1週間の労働時間が20時間以上あり、31日以上続けて雇用する見込みがある人』を雇用保険に加入させる義務があります。
雇用保険に加入している派遣労働者やパート、アルバイトなどの非正規雇用の人も、条件を満たせば介護休業給付金の支給対象です。
31日という日数の条件は、申し込み時に満たしていない場合でも『更新予定見込み』や『過去の更新事例』などに基づき認められる場合があります。詳しくは、厚生労働省の資料を確認しましょう。
なお、フリーランスや自営業(個人事業主)は、雇用保険の対象にはなりません。
参考:【新】 31日以上の雇用見込みがあること – 厚生労働省
介護休業給付金がもらえる条件
雇用保険に加入しているからといって、全ての人が介護休業給付金を受け取れるわけではありません。介護休業給付金をもらうためにクリアしなければならない、二つの条件を紹介します。
配偶者や子などが要介護状態にある
介護休業給付金を受け取れるのは、要介護状態にある家族のために休業したときに限られています。家族に含まれる人は、以下の通りです。
- 配偶者
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
配偶者には、戸籍上は夫婦関係ではない事実婚も含みます。また、血のつながりのない養父母や養子も対象になる点を覚えておきましょう。なお、要介護状態とは『心や体に負った障害によって2週間以上、常に介護が必要な状態』を指しています。
ここでいう2週間以上とは『対象家族が介護を必要としている程度』を表したものです。入院や介護者へ委託した場合、家族が常に介護している状態ではありません。
そのため、8日間の介護後に要介護者が入院した場合には、8日間のみ介護休業を取得できます。このケースでは、8日分の介護休業給付金をもらうことが可能です。
直近2年間で12カ月以上雇用保険に加入
介護休業の受給に必要なもう一つの条件は、『介護休業をスタートする日を基準にした直近2年間で雇用保険に加入している期間が12カ月以上ある』ことです。
雇用保険の加入期間は、『11日以上勤務した月』をカウントできます。11日以上働いた月が続いていない場合でも、直近2年間のうちに加入月が合計で12カ月以上あれば介護休業給付金を受け取る条件を満たせます。
なお、これまで、半年や1年単位で雇用契約を結んでいる契約社員やパート、アルバイトなどの『有期契約労働者』は、同じ雇用主の元で1年以上継続して勤務することが条件でした。しかし、22年4月より、この条件はなくなっています。
参考:雇用保険を受給するためには、何ヶ月加入していればよいのですか | 北海道ハローワーク
参考:育児休業や介護休業を 有期雇用労働者について – 厚生労働省
介護休業給付金を申請する際の注意点
介護休業給付金を申請する前に、気をつけたいポイントが三つあります。介護休業給付金の申請が認められなかったり、減額されたりしないためにも注意点をチェックしておきましょう。
介護休業中の就労時間と収入
介護休業給付金を申請する際に、特に気をつけなければならないのが勤務時間と収入です。
介護休業給付金は、原則『30日を1支給単位期間』として支給されます。勤務日数が11日以上になったときは、支給対象外です。
また、1単位期間の賃金が『休業開始時賃金日額』の80%以上になるときは、給付金はありません。
- 休業開始日額:休業を開始する前6カ月の総支給額÷180
総支給額は手取りではなく、所得税や住民税、社会保険料などが引かれる前の金額です。なお、80%に達していなくても、稼働時間が多いと判断された場合には給付金の減額につながる可能性があります。
休業前に退職が決まっている場合は対象外
介護と仕事の両立を支援するための介護休業給付金は、介護休業を終えてから仕事に復職するのが前提です。申請の時点で退職が決まっている人は、介護休業給付金の対象にはなりません。
また、有期契約労働者(パート・契約社員など)は『介護休業を開始する予定日から93日後』から『さらに半年後まで』に、契約が終了しないことが条件です。
育児休業や産前産後休業との併用不可
介護給付金をもらっている間に、育児休業手当や出産手当金などを含めたほかの給付金を受け取ることは不可です。介護休業を取得している間に産前産後休業や育児休業を開始する際には、『介護休業と給付金の支給』が終了します。
産前・産後休業や育児休業の間にどうしても介護が必要になった場合には、ほか家族に介護休業を取得してもらうのも一つの方法です。
申請から受給までの流れをチェック
「介護休業給付金がもらえるが、申請方法が分からない」という人もいるのではないでしょうか?申請に必要な書類や手続きの方法、介護休業給付金を請求してから振り込まれるまでの流れを紹介します。
休業の2週間前までに必要書類を会社に提出
介護休業給付金を受け取るためには、『勤務先』へ介護休業の申請をしなければなりません。具体的には介護休業を開始する2週間前までに、以下のような書類を準備して介護休業を申請します。
<会社へ提出>
- 介護休業給付申請書(申請者氏名欄のみ記載)
<会社から請求される可能性があるもの>
- 介護休業申出書
- 住民票・戸籍謄本(介護対象者の世帯全員が記載されたもの)
- 通帳やキャッシュカードのコピー(本人名義・旧姓口座は不可)
- 賃金台帳・出勤簿(休業期間の実績が確認できるもの)
介護休業給付申請書は、会社が給付金の申請をする際に必要な書類です。ただし、会社が代理申請するのを許可する同意書があれば、提出する必要はありません。
添付資料は、提出先や提出方法(郵送・電子申請など)、確認事項によって様式の違いや提出不要のものがあります。会社側から請求された際に出せるよう、用意しておきましょう。
参考:介護休業申出書
会社がハローワークに申請
介護休業給付金の申請は介護休業が終了した後、基本的には勤務先を通して行います。もちろん希望すれば、介護休業給付金を受け取る本人が申請することも可能です。
介護休業が終了した日の翌日から2カ月後の月末までに、勤務先のある地域を管轄するハローワークへ提出する必要があります。
提出するものは、『介護休業給付金支給申請書』と『雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書』です。そのほか、前述した添付書類を提出します。
本人が申請する場合には、『雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(介護休業のスタート日の翌日から10日以内)』と『介護休業取扱通知書』を提出する必要があります。
支給決定通知書が届いてから約1週間で振込
書類を提出してから審査が行われて介護給付金の支給が決まると、申請先のハローワークから『支給決定通知書』が郵送で届きます。
支給決定通知書には、介護休業給付金の支給日や振り込まれる額などが記載されています。なお、給付が認められなかった場合には『不支給決定通知書』が届くことも覚えておきましょう。
支給が決定してから約1週間後に、申請の際に届け出た本人名義の銀行口座へ介護休業給付金が振り込まれます。
構成/編集部