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おサイフケータイ、防水対応!モトローラの日本専用モデル「moto g52j 5G」を使ってわかった〇と✕

2022.06.27

■連載/石野純也のガチレビュー

 “携帯電話の老舗”として今もその名を知られるモトローラだが、日本ではオープンマーケットを中心にミドルレンジのスマホを数多く投入している。コストパフォーマンスに優れた端末が多い一方で、おサイフケータイや防水といった、日本市場向けのカスタマイズは見送られてきた。そんなモトローラが、満を持して日本専用モデルとして発売したのが「moto g52j 5G」だ。

 同モデルは、グローバル版の端末をベースにしながら、基板から作り直し、日本専用モデルに仕立て上げた1台。コストパフォーマンスの高さはそのままに、モトローラのオープンマーケット版スマホとして、初めておサイフケータイに対応しているのが最大の特徴だ。防水・防塵仕様もIP68と高く、急な雨に降られがちな梅雨どきや夏場でも安心して利用できる。

 スペック的にはミドルレンジモデルで、その名の通り5Gにも対応しているmoto g52j 5G。価格は約4万円で、MVNOやオンライン専用ブランドの回線と組み合わせやすい。日本専用モデルながら、グローバルのコストメリットを生かせている印象だ。そんな同機を、短期間ながら試用することができた。ここでは、そのレビューをお届けしよう。

モトローラのオープンマーケットモデルとして初めておサイフケータイに対応したmoto g52j 5G

レスポンスのいい大画面を採用、トレードオフは持ちやすさか

 おサイフケータイやIP68の防水・防塵仕様が注目を集めがちなmoto g52j 5Gだが、スマホとしての基本性能もなかなか高い。まずはディスプレイから。画面サイズが6.8インチと大きく、映像を再生した際の迫力は抜群だ。液晶を採用しているため、有機ELのような高いコントラスト比は味わえないが、動画などのコンテンツが見やすいのはうれしい。

 液晶ながら、リフレッシュレートが120Hz駆動に対応しているのも、同モデルの特徴だ。この高いリフレッシュレートのおかげで、スクロールなどの操作をした際の動きが非常に滑らか。操作感のよさは、ハイエンドモデルかと思ってしまうほどだ。リフレッシュレートは60Hzと120Hzの2択だが、AIを使用して、自動で切り替える機能も用意されている。

ディスプレイのリフレッシュレートは最大120Hz。AIによる自動切り替え機能にも対応する

 ここ最近のハイエンドモデルには、リフレッシュレートを1から120Hzの間で可変するものもあるが、コストがかかることもあり、ほかのミドルレンジスマホと同様、moto g52j 5Gもこうした機能には非対応だ。一方で、120Hzに設定したままだと、不要な場面でリフレッシュレートが高いままになり、バッテリーの消費が激しくなる。60Hzと120Hzの切り替えだが、AIで自動制御できるのはうれしい機能と言えるだろう。

 ただし、トレードオフとしてボディのサイズが大きくなってしまっているため、片手での操作は少々しづらい。片手で持って親指で画面の上部をタッチしたり、ドラッグしたりするのは、よほど手が大きい人でないと難しいだろう。通知は画面下部を下方向にドラッグすれば開けるなど、ユーザーインターフェイス(UI)で補われている部分はあるものの、コンパクトな端末が好きな人には不向きかもしれない。

サイズが大きく、ディスプレイが見やすぶん、片手での操作がしづらい

 サイズが大きいため、重量が206gと少々重めなのも残念なポイントだ。また、ミッドレンジモデルゆえか、背面の素材が樹脂になっている。落下時にガラスのように派手に割れてしまう心配は少ないが、見比べてしまうと、わずかだがチープ感はある。価格なりと言えば価格なりだが、長く使っていくうえでは少々気になるポイントだ。ミドルレンジモデルならではの割り切った仕様と言えるだろう。

背面は樹脂でできている。よくよく見ないとわからないが、ややチープ感がある部分だ

ミドルレンジ上位に迫るパフォーマンス、5G対応もうれしい

 チップセットには、Snapdragon 695 5Gを採用しており、パフォーマンスはそれなりに高い。Snapdragon 695 5Gは、600番台のため、性能的には中級レベルのチップセットと思われがちだが、どちらかと言えばミッドハイのモデルに搭載される700番台のSnapdragonに近い。moto g52j 5Gも、通常のアプリであれば、特に重くなることなく、スムーズに動作する。ベンチマークアプリで取ったスコアも、まずまずの結果だ。

Geekbenchでのスコア。ミッドレンジモデル上位に迫る実力だ

 5Gに対応しているのも、このモデルの特徴。端末にはOCNモバイルONEのSIMカードを挿してみたが、5G接続時には数百Mbpsと高い速度が出ていた。アプリのダウンロードなど、サイズの大きなデータをやり取りする際には重宝しそうだ。デュアルSIMやeSIMに対応しているため、複数キャリアを同時に利用できるのもうれしい。通信機能に関しては、オープンマーケットの端末に求められている仕様を網羅している印象だ。

5Gに対応しており、エリア内からの通信速度は非常に速い

 ただし、5Gの対応周波数にはやや注意が必要になる。特にドコモやドコモからネットワークを借りるMVNOの回線で使用する場合、4.5GHz帯である「n79」に非対応な点がネックになる。ドコモは、衛星通信との干渉調整の必要がないn79で5Gのエリアを広げているため、この周波数帯に非対応だと、5Gでつながらない箇所が多くなるからだ。実際、OCNモバイルONEのSIMカードでも、5Gで通信できるエリアは狭かった。

 逆に、1.7GHz帯(n3)や700MHz帯(n28)といった、低い周波数の5Gには対応している。そのため、4Gの周波数を5Gに転用して、エリアを広げているKDDIやソフトバンクのネットワークでは使い勝手がいい。5Gに接続するケースが多く、通信速度も高くなりやすい。5Gのエリアは今後さらに広がっていくことを踏まえると、moto g52j 5GではKDDIやソフトバンクの回線を使うようにした方がよさそうだ。

 メモリは6GB、ストレージは128GBで、バッテリーは5000mAh。メモリやストレージは、ミドルレンジモデルとしてはごく普通の仕様だが、バッテリーは多めだ。15Wの急速充電に対応しているため、チャージのスピードもまずまずの速さと言えるだろう。いずれもハイエンドモデルと比べると見劣りする部分はあるが、必要十分な性能には達している印象を受ける。

ストレージは128GB。microSDカードにも対応するため、写真や動画などを頻繁に撮る人にも安心だ

必要十分なカメラとシンプルなUIで、使い勝手がいい1台

 必要十分という点では、カメラも同じだ。同モデルは、背面にトリプルカメラを搭載しており、メインカメラの画素数は5000万画素と高い。撮影時には、いわゆるピクセルビニングで画素を束ねて感度を上げるため、暗所での写りも上々。標準モードで撮影すると、1200万画素相当の写真として記録される。AIによる被写体の判別機能も備えており、料理の写真などでは温かみを増した仕上がりになる。

カメラはトリプルカメラで、メインカメラの画素数は5000万画素

解像感があり、色味のバランスも悪くない。AIによる補正は控え目だ

 メインカメラ以外は、800万画素の超広角カメラ兼深度センサーを備える。こちらは、画素数が800万とやや低いこともあって、解像感はメインカメラより落ちる。もう1つは、200万画素のマクロカメラ。被写体に接近して、ディテールをクッキリ映し出せる半面、画素数が低いため等倍で見るのがやっとといったところだ。メインカメラと超広角カメラは実用的だが、マクロカメラはオマケ程度に捉えておいた方がいいかもしれない。

マクロカメラで撮った写真。確かに寄れてはいるものの、解像感が低く、暗めの仕上がり

 モトローラは、ピュアAndroid戦略に基づき、ソフトウエアのカスタマイズを最小限に抑え、AndroidならではのUIを踏襲している。中国や韓国のメーカーが、UIまで含め、大幅に手を加えているのとは対照的だ。カスタマイズが少なめのAndroidから乗り換えても、操作に迷うことはないだろう。一方で、モトローラならではのひと工夫が加えられているのも、同社のスマホの特徴だ。

UIは、Android標準に近い

 例えば、電源ボタンをダブルタップすると、アプリのショートカットが出現する。ダブルタップの判定がかなりシビアで、失敗することが多いのは難点だが、よく使うアプリをまとめておけるので便利だ。本体を素早く2回ひねるとカメラが起動する「クイックキャプチャー」といった機能も、モトローラなではのカスタマイズになる。見た目は標準的なAndroidに近いが、ゼスチャー操作などで独自性を出しているというわけだ。

電源ボタンをダブルタップすると、ショートカットが現れる

ゼスチャーでカメラを起動したり、3本指のタップでスクリーンショットを取ったりすることが可能

 こうした機能や仕様に加え、冒頭で述べたように本モデルはおサイフケータイやIP68の防水・防塵に対応している。ほかのおサイフケータイ対応スマホと同様、moto g52j 5GでもモバイルSuicaやiD、QUICPayといった各種電子マネーやクレジットカードを利用可能。タイプA/BのNFCも搭載しており、Google PayでVISAのタッチ決済などを使用することもできる。おサイフケータイは日々の支払いに欠かせない機能なだけに、道具としの使い勝手が高まった印象を受ける。

おサイフケータイに対応しており、各種電子マネーに対応する

 パフォーマンスが高く、大画面で5G対応。しかもおサイフケータイと防水・防塵に対応しながら、moto g52j 5Gはわずかながら4万円を下回る価格で販売されている。円安傾向の中、かなりがんばった価格設定と言えるだろう。必要十分で、値ごろ感のあるスマホを探していた人には、いい選択肢になりそうだ。

【石野’s ジャッジメント】
質感        ★★★
持ちやすさ     ★★★
ディスプレイ性能  ★★★★
UI         ★★★★
撮影性能      ★★★★
音楽性能      ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★
生体認証      ★★★★
決済機能      ★★★★★
バッテリーもち   ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定

取材・文/石野純也

慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

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