バイクにもドライブレコーダーが必要だ。このことは筆者が過去に書いた記事でも、度々主張している。
が、バイクというものは四輪車に比べて拡張性に乏しい。特に旧車の場合は、当時存在しなかったドラレコの設置など想定しているはずもない。
故にバイク用ドラレコは「設置のしやすさ」も見逃せない評価点となる。
『MUFU V10S』は、特殊な工具を必要とせずバイクに設置できる脱着式ドラレコ。いざという時の事故もしっかり記録してくれるという。
簡単に設置できるドラレコ
「SONY製高性能センサー搭載」という触れ込みで応援購入サービスMakuakeに登場し、1,800万円以上の資金を集めた『MUFU V10S』。
なかなかどうして印象に残りやすいデザインである。ホルダーに収納する設計の横長の筐体。しかもこの筐体の中には、3,200mAh容量のバッテリーが内蔵されている。
これは自動二輪車だけでなく、自転車や電動キックボードなどにも設置できるよう配慮した結果だろう。
バイクの利用だけを想定するのなら車載のバッテリーに直接つなぐという方法もあるが、自転車ではそうはいかない。
もっとも、この設計はバイク乗りにも多大な恩恵をもたらしている。設置のために特別な知識や工具を一切必要としないということだ。
実際、筆者のグラストラッカービッグボーイにも簡単に設置することができた。使った工具は付属の六角レンチのみ。グラトラのバックミラーは、手でクルクル回せば簡単に外れるのだ。
車種によってミラーが外れやすい、外れにくいの差は当然あるだろう。ただしアタッチメントさえ設置できれば、あとは非常に簡単だ。
対向車線もバッチリ録画
筒形ホルダーに『MUFU V10S』を挿入すれば、電源が入るようになっている。予めインストールした専用アプリで操作する仕組みだ。
走行中はこのように録画する。横を広々と映してくれるから、対向車線の様子もバッチリ!
これ、マジで使える!
SONY製STARVISセンサーのフルHD動画は、やはり見ていて気持ちがいい。もちろん、事故の瞬間の光景も余さず録画してくれる。
よし、それじゃあ実証実験のために適当なクルマにぶつかってみよう……とはさすがにいかないが、動画のクオリティさえ確認できればまずは一安心。
これなら煽り運転の被害に遭った際も、相手のナンバーをきっちり記録できるはずだ。
今も絶えない煽り運転
筆者が若い頃にお世話になっていた有名格闘家のA先生には、こんな逸話がある。
高速道路で煽り運転に遭遇し、散々粘着された挙句路上で無理やり停車させられたそうだ。
そして暴漢はクルマから降りてきたA先生に掴みかかり、「テメェコノヤロー!」と怒鳴りながらパンチを繰り出そうとした。
が、A先生はその筋では有名なグラップラーである。何と高速道路のど真ん中で、暴漢を体落としで組み伏せてしまったとのこと。
どうだ、僕たちの先生は強いだろ! などと歓喜している場合ではない。
これは自動車用ドラレコというものが存在しない20年以上前の話だが、当時は煽り運転に遭遇してもそれを記録に残す手段が全くなかった。
A先生ほどの超人でない限り、路上での暴力に対抗できる手段が存在しなかったということだ。
残念ながら、ドラレコやカメラ内蔵のスマホが普及した今も煽り運転をしでかす者は後を絶たない。
だからこそ、バイクには『MUFU V10S』のような優秀なドラレコを設置するべきではないか。
もしも自分が加害者になったら?
『MUFU V10S』には車体の傾きや転倒を自動検出する機能もある。そして転倒を検出すると、その瞬間から始まる映像をこちらの操作なしで記録してくれるのだ。
つまり、それまでの録画と事故発生時の録画が自動的に区別されるということである。
なるほど、よく考えた仕組みだ!
ここまで書いて、筆者はあることに気づいてしまった。
『MUFU V10S』は、自分が交通事故加害者になった時もその機能を発揮してくれるんじゃないのか?
「自分が加害者になったら」などということは、他のレビューライターは誰も考えないだろう。いや、考えたくないはずだ。
が、筆者がいつも通る車道脇の歩道は小学校の通学路。昼下がりの下校時間、何かの間違いで筆者のバイクが歩道に突っ込み、その結果歩いていた子供たちが落命してしまったら……ということをここで想像したのだ。
その瞬間の記録を残すのは、我々大人の責務ではないのか。
そもそも「安全対策」とは、個々の備えがあってこそのもの。
備えが意識を啓発し、より安全な施策を確立させる。そして交通安全の第一歩は、高性能のドラレコであることは言うまでもない。
『MUFU V10S』のMakuakeでの予約は既に終了しているが、大手家電量販店やバイク用品店での販売が待ち遠しい製品だ。
【参考】
SONY製高性能センサー搭載!脱着式で多様な移動手段に対応するドライブレコーダー-Makuake
取材・文/澤田真一