砂糖入りのコーヒーも死亡リスクを下げる可能性
コーヒーに少量の砂糖を入れて飲む習慣も、健康にとってプラスに働く可能性を示唆する研究結果が報告された。
南方医科大学(中国)のChen Mao氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に2022年5月31日掲載された。
これまでの観察研究から、コーヒーを摂取するという習慣が死亡リスクの低さに関連していることが示唆されている。
ただし、それらの研究はコーヒーをブラックで飲むか、砂糖を入れて飲むかといった区別をしておらず、砂糖を入れて飲むと健康へのプラスの影響が相殺される可能性も考えられる。
そこでMao氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」を用いてこの点を検討した。
ベースラインで心血管疾患やがんのない17万1,616人(平均年齢55.6歳±7.9歳)を対象として、2009年から2018年まで追跡。
ブラックコーヒー、砂糖または人工甘味料を添加したコーヒーの摂取量を、自己申告に基づき把握。全死亡、がん死、心血管死のリスクを比較した。中央値7.0年の追跡で3,177人の死亡が記録されていた(がん死1,725人、心血管死628人)。
1日当たりのブラックコーヒーの摂取量が、0~1.5杯、1.5杯超~2.5杯、2.5杯超~3.5杯、3.5杯超~4.5杯、4.5杯超の群に分け、交絡因子を調整後に、コーヒーを飲まない群を基準として全死亡リスクを比較。
すると、前記の順にハザード比は0.79、0.84、0.71、0.71、0.77となり、全群とも有意に低リスクであることが示された。
砂糖入りコーヒーの場合のハザード比は同順に、0.91、0.69、0.72、0.79、1.05であり、1.5杯超~2.5杯と2.5杯超~3.5杯の群は有意なリスク低下が観察され、その他の群は非有意だった。
がん死や心血管死についても、全死亡とほぼ同様の関連が認められた。人工甘味料入りのコーヒーについては、死亡リスクとの関連に一貫性がなかった。
ジャーナルの副編集長であるChristina Wee氏は、本論文に対する付随論評の中で、「少量の砂糖をコーヒーに加え、甘くして飲んだとしても潜在的に有益であり、少なくとも有害ではないようだ」と述べている。
ただし、キャラメルマキアートのように多量の砂糖を使って良いわけではない。Wee氏や米クリーブランド・クリニックのAnthony DiMarino氏によると、コーヒー1杯に対して小さじ1杯の砂糖までが適量だという。
「小さじ1杯の砂糖は16kcal程度であり、追加されるエネルギー量として、それほど多いものではない。それに対してキャラメルマキアートのようなコーヒー飲料では、砂糖と脂肪から数百kcalが追加される」とDiMarino氏は説明する。
DiMarino氏によると、「コーヒーには1,000種類近くの植物性化合物が含まれているが、そのほとんどはまだ研究されていない。しかし、健康に不可欠なビタミンB群、カリウムなどの栄養素や、がんのリスク低減につながる複数の抗炎症物質が含まれている」とのことだ。
また、覚醒や記憶、精神機能を改善する作用が示されており、「われわれが物事に気づきやすくなり、間違いを減らすのに役立つのではないか」という。
さらにWee氏は、コーヒーにクロロゲン酸が含まれていることを指摘する。クロロゲン酸は血液の凝固能を抑える作用があり、血栓による心臓発作や脳卒中のリスクを抑制する可能性があるとのことだ。
これらに加えて米マウントサイナイ・モーニングサイドのAlan Rozanski氏は、「コーヒーは腸の健康を改善したり、過剰な脂肪蓄積を抑制して、肝臓を保護するといった経路を介しても、死亡リスクを下げるのではないか」と話す。
一方、Wee氏は「コーヒーに含まれるカフェインについて懸念する医師は少なくない」と述べる。
カフェインは心拍数を上げたり、代謝を変化させる可能性がある。この点について同氏は、「常識的な摂取量であれば害はないと考えられる。とは言え、コーヒー嫌いな人が、今回の報告を根拠としてコーヒーを飲み始めるべきかどうかについては、何とも言えない」と語っている。(HealthDay News 2022年5月31日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M21-2977
構成/DIME編集部