「住民税を、期限内に支払えそうにない」「延滞金がかかっても支払わないでいるとどうなるのか不安」と思っている人はいませんか?
住民税にかかる延滞金の利率や期限までに支払えない場合の対処法、払い忘れを防止する方法などをまとめて解説します。
住民税の延滞金は滞納のペナルティ
住民税を滞納すると、ペナルティとして延滞金が発生します。まずは、延滞金の金額や時効制度について確認しましょう。
納付期限の翌日から発生!2022年の利率は?
住民税の支払い期限が5月31日の場合、翌日の6月1日から2000円以上の住民税に対して延滞金がかかります。延滞金の利率は、『1カ月を経過するまでは年7.3%、それ以降は年14.6%』が基本です。
延滞金の利率は年によって変わり、22年現在は『特例』が適用されています。1カ月以内と1カ月を過ぎての延滞金の利率と、金額の目安をチェックしましょう。
1カ月までの利率は年2.4%
納付期限の翌日から1カ月までの間は、住民税にかかる延滞金の利率は『年2.4%』と比較的低く設定されています。納付期限の翌日から1カ月以内に支払った場合の延滞金額は、次の計算式です。
- 期限翌日から1カ月以内の延滞金額:滞納額×延滞金の割合×日数÷365
以下の事例を使って、延滞金額を計算してみましょう。
納付金額 | 10万円 |
納付期限 | 22年5月31日 |
支払い日 | 22年6月20日 |
滞納日数 | 20日間 |
1カ月までの利率は2.4%のため、計算式は10万円×0.024×20日÷365です。計算して求められる延滞金は、131.5円となります。
延滞金が1000円に満たない場合は、端数処理で0円と判断されます。10万円の住民税を1カ月以内に支払った場合には、延滞金を支払う必要はありません。
1カ月を過ぎると利率が年8.7%にアップ
納付期限から1カ月を経過すると、利率が約4倍の『年8.7%』にアップします。利率が上がると延滞金の額はどれぐらい変わるのでしょうか?
以下の事例を使い、住民税を半年近く滞納した場合にかかる延滞金を計算してみましょう。
納付金額 | 10万円 |
納付期限 | 22年5月31日 |
支払い日 | 22年11月20日 |
滞納日数 | 173日 |
納付期限の翌日から1カ月を過ぎて納付した場合の延滞金額は、以下で求められます
- 期限翌日から1カ月が過ぎてからの延滞金額:1カ月分の延滞金+(滞納額×延滞金の割合×1カ月経過後の日数÷365)
1カ月までの延滞金の利息は2.4%であり、1カ月分の延滞金は1円未満切り捨てで197円です。1カ月を30日として計算すると、経過後の日数は173-30で143日になります。
計算式に当てはめると、滞納日数173日目の延滞金は197円+(10万円×0.087×143÷365)となり、端数処理をして3600円です。
さらに1カ月滞納すると4300円、半年だと7900円と、期間が長いほど延滞金の額は膨れ上がっていきます
参考:福岡市 市税の延滞金の計算方法について教えてください。
時効で住民税の支払いを免れるのはほぼ不可能
住民税の支払いは時効があり、『5年』で支払い義務が消滅するとされています。しかし、5年間住民税の未納を続けて時効を迎えるのは、不可能といえるでしょう。
なぜなら時効期間は、督促状の発行や差し押さえにより無効化できるからです。督促状は、住民税の納付期限を過ぎても支払いが確認できない未納者に対し『自治体』から送付されるものです。
地方税法第三百二十九条によって、期限後20日以内の督促状の発行が義務化されています。
督促状が届いてもなお住民税を支払わないでいると、給与や預貯金、不動産などの差し押さえが行われます。
督促状や差し押さえは、地方税法により自治体の権限で行われる行為です。時効を使って、住民税の支払いを免れることはできません。
なお、住民税にかかる延滞金の未払いも、督促や差し押さえの対象になるため注意しましょう。
期限内に住民税を支払えない場合の対処法
経済的な事情で、期限内に住民税を支払えなくて悩んでいる人は多いのではないでしょうか?理由があって支払いが困難な場合に役立つ対処法を、二つ紹介します。
猶予制度を利用する
病気や災害、『新型コロナウイルス感染症』などにより住民税の納税が難しい人は、自治体が独自に行う『猶予制度』を利用できる場合があります。
正当な事情があって支払いが困難なときは、住んでいる自治体の市町村税務担当窓口へ早めに相談しましょう。
また、国の『納税の猶予の特例』も利用できるケースもあります。納税の猶予の特例は、新型コロナ税特法の成立・施行に伴い20年4月に創設された制度です。
21年2月1日に申請期限を終えていますが、やむを得ない事情がある場合には申請が可能です。条件を満たすと、納税の義務を1年間延期してもらえる場合もあるため賢く利用しましょう。
猶予の終了日は、事前に発行された『猶予許可通知書』で分かります。期日を超えてしまった場合、猶予期間に対しての延滞金が発生する点に注意しましょう。
参考:総務省|新型コロナウイルス感染症の影響に伴う地方税における対応について
窓口で分割払いの相談をする
住民税の支払い方法には、『普通徴収』と『特別徴収』があります。普通徴収は、納付書を使って一括または分割(年間4回)で支払う納税方法です。
やむを得ない事情があったときは役所の窓口に相談すると、通常よりも支払い回数の多い少額の分割払いが認められる場合があります。
窓口に相談をする際には納税する意志を誠実に伝え、『12回(1年間)』を超えない範囲で分割をお願いするのが重要です。
ちなみに地方税法第十三条『納付又は納入の告知』に従い、分割払いの相談中に督促状が届くケースもあります。
普通徴収の住民税!払い忘れを防ぐには?
会社に勤めている人は基本的に、特別徴収として毎月の給与から天引きされるため払い忘れの心配はないでしょう。一方、納付書を使って自分で支払う普通徴収の場合、払い忘れの可能性は高まります。払い忘れを防ぐ二つの方法を、チェックしておきましょう。
口座振替を利用する
多くの自治体では、納付期限に普通徴収の住民税額が自動で引き落とされる『口座振替』に対応しています。仕事やプライベートが忙しい人は、口座振替を利用すると払い忘れを防げるでしょう。
口座振替で住民税を支払うには、自治体が定めている期間内に申し込みが必要です。年度途中に申し込むと、翌年度から住民税の口座振替が適用される場合があります。
申し込み方法や書類の形式は自治体ごとに違うため、住んでいる地域のホームページを確認しましょう。
クレジットカード払いにする
専用の納付サイトを使い、クレジットカードで住民税を支払える自治体もあります。『ポイント還元率の高いクレジットカード』で住民税を支払うと、支払い忘れを防ぎながらポイントの獲得も可能です。
例えば、100円で1ポイントが付与されるクレジットカードの場合、3万円の住民税を支払うと300ポイントが付きます。年会費が無料だったり、期間によってポイント還元率が上がったりするクレジットカードもあるので、住民税の支払いに役立てましょう。
構成/編集部