米国でのサル痘の現状とは――CDCの報告
サル痘ウイルスへの感染で生じる急性発疹性疾患であるサル痘の感染者が、5月以降、欧米諸国を中心に増加しており、WHO(世界保健機関)も警戒を強めている。
そんな中、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」2022年6月3日号に発表された報告によると、米国でのサル痘の感染症例は、ゲイやバイセクシュアルの男性、または男性とセックスする男性(MSM)に集中しており、皮膚と皮膚の密接な接触によりウイルスが伝播した可能性が示唆されたという。
報告書の共著者の一人である、米疾病対策センター(CDC)のDivision of Global Migration and QuarantineのJennifer McQuiston氏は、「感染者のほとんどは、発症前21日間に海外旅行に出かけたことを報告している。また、MMWRが調査した患者の大半はMSMであることが確認されている」と話す。
CDCの6月3日の発表によると、米国でのサル痘感染者の累計は、11州で確認された21人に増加した(注:6月8日時点で15州、40人)。
症例は、カリフォルニア州とニューヨーク州でそれぞれ4例、フロリダ州で3例、コロラド州とユタ州で2例、ジョージア州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ペンシルベニア州、バージニア州、ワシントン州でそれぞれ1例であるという。
CDCのこの報告書には、5月末までのサル痘の発生状況と、それまでに米国で特定された17症例に関する情報が記されている。それによると、今回の調査から、感染が確認された17人中16人が、ゲイ、バイセクシュアル、またはMSMであることが判明したという。
患者は全て成人で(平均年齢40歳、範囲28〜61歳)、全員に発疹が認められた。発疹は、4人で陰部、5人で肛門周辺から始まっていた。最終的に口腔にまで発疹が現れた患者も5人いた。また、17人中14人は、発症前の21日間に海外旅行に出かけたことを報告した。患者の渡航先は全部で11カ国だった。
なお、サル痘ウイルスのゲノム解析から、現在欧米諸国を中心に発生しているサル痘には、遺伝的に異なる2つの変異体が関与していることが示されているという。
McQuiston氏によると、これらの変異体はどちらも西アフリカ株から派生したものであり、他の既知のクレード(共通の先祖から進化した子孫の集団)に比べると重症度は低く、アフリカで発生した際にも死者数は比較的抑えられていたという。
実際、現時点では、サル痘による死者は米国でもそれ以外の国でも報告されていない。
「それでも、現状を軽視すべきではない。サル痘ウイルスにより生じる発疹は体全体に広がるか、性器などの敏感な部分に現れる。発疹がひどい痛みを伴うこともあり、その管理のために鎮痛薬の処方を必要とした患者の例も報告されている。また、長期間、皮膚に傷痕が残る可能性もある」とMcQuiston氏は言う。
今回の調査対象とされた患者については、全員が回復途上にあるか、もしくはすでに回復している。まだ発疹がある患者は、完全に回復、つまりかさぶたが取れて健康な肌に戻るまで、自宅で隔離生活を送るよう助言されているという。
サル痘の発生は、現時点ではゲイやバイセクシュアルの男性、またはMSMに集中しているものの、McQuiston氏は、「サル痘を発症する可能性は誰にでもある。われわれは、サル痘がこれら以外の人も含めて、あらゆる集団に広がる可能性のある疾患として注意深く監視している」と話している。
なお、サル痘に対しては、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた2種類のワクチンと1種類の抗ウイルス薬がある。(HealthDay News 2022年6月3日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/mm7123e1.htm?s_cid=mm7123e1_w
構成/DIME編集部