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パワハラが原因で病気になってしまったら?覚えておきたい労災認定を受ける基準と申請方法

2022.06.16

仕事中に上司などからパワハラを受けると、誰でも多かれ少なかれ、身体や心にストレスがかかるものです。

その結果、うつ病・急性ストレス障害などの精神疾患や、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの消化器疾患を発症してしまう方もいらっしゃいます。

パワハラが原因で病気になった場合、労災保険給付を受給できます。ただし、上記の各疾患はパワハラ以外の原因で発症する可能性もあるため、労災認定に当たっては、因果関係の立証が重要なポイントです。

今回は、パワハラに起因する精神疾患・消火器疾患の労災認定について、認定基準や申請のポイントをまとめました。

1. パワハラで精神疾患になった場合|うつ病、急性ストレス障害など

上司などからパワハラを受けた従業員は、うつ病・急性ストレス障害などの精神疾患を発症するケースがあります。

1-1. 精神疾患の労災認定基準

精神障害(精神疾患)については、厚生労働省が「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めています。パワハラ問題が社会的に広く認識されるに至ったことを受けて、同認定基準は2020年5月29日付で一部改正されました。

今回の改正では、パワハラによるストレス強度の評価基準等を明記するなどの変更が行われています。

具体的には以下の場合について、従業員の心理的負荷の強度を「強」と評価することが明記されました。

①上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

②上司等から暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合

③上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合
・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない、または業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃
・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

④心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

心理的負荷が「強」と認められれば、従業員が発病した精神障害は、原則として労災認定の対象となります。

ただし精神障害の発病が、業務以外の心理的負荷や個体側要因(元々あった持病など)によると認められた場合、例外的に労災認定の対象から除外される点に注意が必要です。

参考:心理的負荷による精神障害の認定基準について|厚生労働省
参考:心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました|厚生労働省

1-2. パワハラによる精神疾患につき、労災認定を受けるためのポイント

「心理的負荷による精神障害の認定基準」によれば、精神障害の労災認定に当たっては、単に違法なパワハラが行われただけでなく、以下のような事情が追加的に求められています。

・(単発であっても)パワハラの程度が酷く、悪質である
・パワハラが複数回にわたって執拗に行われた
・会社がパワハラ被害の解消、改善を図らなかった

従業員としては、上記のような事情を客観的な記録から明らかにする必要があります。たとえば業務メールや録音データなどを活用して、悪質なパワハラがあった事実を証明しなければなりません。

また、業務以外の要因により発病したと判断されてしまうと、労災認定を受けられなくなってしまいます。特に、元々精神障害に関連する持病がある場合や、発病直前の時期に以下のような事情がある場合は要注意です。

・離婚、夫婦の別居
・自分の重病、ケガ、流産
・配偶者、子、親、兄弟の死亡
・配偶者、子の重病、ケガ
・親類の不祥事
・多額の財産を失った
・天災、火災
・犯罪に巻き込まれた
など

これらの事情が存在する場合、医師の診断書などによって精神障害の発病はパワハラに起因するものであり、当該事情によるものではないことを明らかにする必要があります。

2. パワハラで消化器疾患になった場合|胃潰瘍、十二指腸潰瘍など

パワハラを受けた従業員は、精神だけでなく身体にもダメージを受けることがあります。たとえば、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化器疾患を発症する例が見られます。

2-1. 消化器疾患の労災認定基準

消化器疾患については、精神疾患とは異なり、厚生労働省が定めた労災認定基準は存在しません。

しかし、最高裁平成16年9月7日判決では、貿易会社の従業員が海外出張中にせん孔性十二指腸潰瘍を発症した事案につき、大要以下の論理に従って業務災害性を認定しました。この判示が、消化器疾患に関する労災認定の基準となっています。

① 14日間にわたる国内外の連続出張、12日間にわたる休日なしの長時間勤務によって、従業員には異例に強い精神的・肉体的負担がかかっており、客観的に見て特に過重な業務だったといえる。

② 発症したせん孔性十二指腸潰瘍について、他に確たる発症因子があったことは窺われない(基礎疾患や慢性十二指腸潰瘍の既往症はあったが、自然経過によりせん孔を生じる寸前まで進行していたとみることは困難)。

③ ①②を踏まえると、特に過重な業務の遂行により、基礎疾患等が自然経過を超えて急激に悪化したことにより、せん孔性十二指腸潰瘍を発症したとみるのが相当であり、業務災害性が認められる。

2-2. パワハラによる消化器疾患につき、労災認定を受けるためのポイント

上記の最高裁判決に沿えば、パワハラが原因で消化器疾患を発症したと認定されるには、「客観的に見て特に過重な業務」またはそれに準ずる程度の事情により、強い精神的・肉体的負担がかかっていたことを証明することが必要です。

従業員としては、精神障害のケースと同様に、パワハラ行為の悪質性の程度・回数・頻度や、会社による改善対応がなかったことなどが考えられます。

その一方で、消化器疾患の発病には、基礎疾患や既往症が寄与するケースが少なからずあります。もし基礎疾患や既往症がある場合には、それらが消化器疾患の「確たる発症因子」ではないことを、医師の診断書などに基づいて十分に説明する必要があるでしょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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