『飛んで火に入る夏の虫』という言葉を耳にしたことがあっても、詳しい意味が分からず、実際に使ったことはないという人もいるのではないでしょうか。意味や使い方と併せて類語や対義語も紹介するので、自信を持って使いこなせるようになりましょう。
「飛んで火に入る夏の虫」の意味と由来
まずは『飛んで火に入る夏の虫』の意味と由来を紹介します。由来を知ると、知識が増えるだけでなく、言葉の意味がより明確になります。
「自ら災難に飛び込んでいくこと」のたとえ
『飛んで火に入る夏の虫』は、自分から進んで災難に飛び込むことをたとえた言葉です。周囲の人から見て無謀だと思える行為に対して使います。
文脈によっては『あきれた』というニュアンスを含む場合や、『やめた方がいい』という助言の意味を含む場合もあります。
なお、『入る』は「はいる」ではなく「いる」と読む点に注意しましょう。意味は「はいる」と同じです。
虫の習性が由来
『飛んで火に入る夏の虫』の由来は、『走光性』と呼ばれる虫の習性に深い関わりがあります。
夜に外を歩いているときに、虫が街灯に集まっているのを目にした経験があるでしょう。これは、虫には光に向かって飛んでいく習性があるためです。
蛍光灯がまだ存在しなかった時代は、明かりを得るのに火が使われていました。命の危険があるにもかかわらず火に向かって飛んでいく虫の習性が語源になっているのです。
『夏の虫』とは、蛾の一種である『ヒトリガ』を指しているとされています。『火取蛾』や『火盗蛾』と表記され、夜行性の虫の中でも、特に火に向かう習性が強いのが特徴です。
「飛んで火に入る夏の虫」の使い方と例文
『飛んで火に入る夏の虫』は、具体的にどのようなシーンで使えるのでしょうか?分かりやすい例文を紹介するので、状況に合わせてアレンジして使ってみましょう。
無謀なことを理解していないときに使う
『飛んで火に入る夏の虫』は、本人は理解していないが、周囲から見て無謀だと思えることをしようとしているときに使います。自己破滅を招く行為や怖いもの知らずの行動などが該当します。
例えば、友人がまったく泳げないのにマリンスポーツにチャレンジしようとしているときに、その行為は無謀だという意味で『飛んで火にいる夏の虫』を使えるでしょう。
他人の行為にあきれている場合や、「無謀な行為だからやめた方がいい」と伝えたい場合などに使われる例は珍しくありません。
例文をチェック
正しい使い方を例文で確認しましょう。
- まったく泳げない彼がサーフィンに挑戦したいなんて危険過ぎる。飛んで火に入る夏の虫だ。
- 彼女の機嫌が悪いときに感情を逆なでするようなことを言うのは、飛んで火に入る夏の虫だよ。
- 上下関係がひときわ厳しい業界で、上司に反発するような言動は、まさに飛んで火に入る夏の虫だ。
- 新人に大きなプロジェクトを任せるのは、リスクが大き過ぎる。飛んで火に入る夏の虫というものだ。
「飛んで火に入る夏の虫」の類語
では、『飛んで火に入る夏の虫』は、どのような言葉に言い換えられるのでしょうか?類語を例文とともに紹介します。状況に合わせて使い分けましょう。
墓穴を掘る
『飛んで火に入る夏の虫』は、日常会話で使われることもある『墓穴を掘る』に言い換えられます。
『墓穴』は「ぼけつ」と読み、ひつぎや骨つぼを埋めるための穴のことです。自分で墓穴を掘るという意味で、『身を滅ぼす原因を自分で作ること』のたとえといえます。
主に、軽はずみな言動で自分を窮地に追い込んでしまったり、自ら失敗や不利な状況を招いてしまったりする場合に用います。
- その場を取り繕うためにうそをついてしまい、最終的に墓穴を掘る結果になってしまった。
- みんなに好かれたい気持ちも分かるが、誰に対してもいい顔をしていると、墓穴を掘ることになるかもしれないよ。
年寄りの冷や水
『年寄りの冷や水』は、高齢者が冷たい水を浴びるのは命に関わる危険性があるということから、年齢に合わない行為や振る舞いをすることを指します。
自分自身に対して自虐的に使う場合もあります。
- 健康のためとはいえ、それまでまったく運動していなかった人が急にジョギングを始めるのは、年寄りの冷や水というものだ。
- 定年退職したら運転免許を取得して日本各地をドライブするつもりだと娘に告げたら、年寄りの冷や水だと言われた。
- 年寄りの冷や水ですが、韓国ドラマにハマり韓国語を勉強中です。
「飛んで火に入る夏の虫」の対義語
『飛んで火に入る夏の虫』の対義語には、どのようなものがあるのでしょうか?意味とともに例文を紹介します。表現の幅を広げるのに役立てましょう。
君子危うきに近寄らず
『君子(くんし)』は、学識や人格に優れた人や人格者を指します。『君子危うきに近寄らず』は、「君子は危険なことはおかさない」という意味で、対義語に該当します。
『慎重に行動すべきだ』という教訓として用いられるケースが多いでしょう。
- 君子危うきに近寄らずという言葉がある通り、いつも人のうわさ話や陰口を言っている人からは距離を置いた方がいい。
- 軽率な行動によって、思わぬトラブルに巻き込まれることが多いので、娘には君子危うきに近寄らずと言い聞かせてきた。
石橋をたたいて渡る
日常会話でも使われることがある『石橋をたたいて渡る』は、頑丈に見える石橋でもたたいて安全を確かめて渡るという意味です。『用心深く物事を行うこと』のたとえといえます。
慎重に行動することを褒める意味で使う場合と、過剰な用心深さを皮肉る意味で使う場合があります。
- 石橋をたたいて渡る人は大きな失敗が少ないので、結婚相手に求める条件の一つです。
- 石橋をたたいて渡る人なのでミスは少ないが、緊急の案件には臨機応変に対応してほしいものだ。
構成/編集部