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人気コミック『アオアシ』に学ぶ!VUCA時代に求められるカオスな環境に強い「頭のよさ」

2022.06.13

ⓒ小林有吾/小学館

4月からNHKでアニメ版も放映されているコミック『アオアシ』

光る才能を持ちながらも、それを生かし切れないユースサッカー選手の成長を描いた物語として、『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中。単行本は、累計1200万部を超える大ヒット作だ。

主要登場人物は10代の少年たち。にもかかわらず、多くの大人の共感を得ているのは、仕事の現場と似たシチュエーションが、しばしば出てくるからだろう。

そこに着目して、本作をベースにビジネス啓発書を著したのが、仲山進也さん(楽天グループ株式会社楽天大学学長、仲山考材株式会社代表取締役)。書名は、『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』(小学館)。副題は『カオスな環境に強い「頭のよさ」とは』とあるように、VUCAの時代を生き抜くための思考力の構築法が綴られている。

アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』(小学館)

今回は、仲山さんのインタビューをまじえながら、本書の魅力を紹介していきたい。

知らないものは見えない

本書で重要なキーワードとなるのが“観察→判断→実行”のループ。これらの単語はそのまま各章のタイトルともなっている。

まず“観察”。国語辞典では「物事の状態や変化を客観的に注意深く見る」と説明されている。地味な単語だし、誰でも日常からしているようで、できていない行動の1つだと仲山さんは指摘する。

その例として、仲山さんは『アオアシ』のあるシーンを引用する。それは、エスペリオンユースに入団間もない主人公・青井葦人(アシト)が試合中、黒田選手から「パスからメッセージが伝わらないの? それ以前に、今の僕らのポジショニングやボールの運び方を見たら、意図ぐらいは察知できるはずだ」とツッコまれる場面。

この時のアシトの反応は、何を言われているのかさっぱりわからない状態。並の選手なら、フィールドを観察すればわかるはずなのに、アシトは同じものを見ても理解はできていない。

ⓒ小林有吾/小学館

なぜこんなことが起きるのか? 仲山さんは「知らないものは見えない」からだと言い、次のように説明を加える。

「この時のアシトは、ボールの運び方やパスのメッセージといった“視点”がなく、黒田選手と同じ状況を見てはいても、認識できていないのですね。なので、目では見えていても、知らないので、見えていないのと同じ状態に陥っています。

同じことが、興味のないもの、偏見があるものにも言えます。要は、自分のみたいものしか見えていないということですね。同じものを見ていても、見えているものが違うことを‟視差”といいます。視差が生まれる原因は主に3つあります。無知、偏見、どっぷり症候群です。

ここで“視点”“視野”“視座”という言葉を使って考えてみましょう。

視点とは、対象物のどこを見るか、視野はどこまで見えるか、視座はどこから見るか、という意味で使っています。

視点を知らないのが無知。つまり、どこを見ればよいのかわからない状態です。ユース入団直後のアシトが、まさにそう。次に、視点はあっても固定したままの状態が、偏見です。また、視座が固定していると、目の前の価値に気づけない“どっぷり症候群”になります。これらが観察力を鈍らせます」

この根深い問題を解決する秘訣を、仲山さんは本書で幾つか記している。例えば、視野を広げる方法。これは「視点を増やす」ことによって改善できるそうだ。

“よくありがちな、「売上げ目標を追って、値下げにより達成したものの、赤字だったしクレームも増えた」というシーン。ここでも「売上げ」という唯一の目標ではなく、「利益」とか「お客さんが喜んでくれているか」などの目標を追加して視点を複数にすることで、視野を広げることができます。” (本書より)

選択肢は複数持つ

2つめのキーワードとなる“判断”。

細かいことも含めれば、誰もが毎日多くの判断をしている。仕事の現場では、1つの判断の良し悪しで、その後の成果もがらりと変わってしまう。

その判断力はどう高めていくべきか?仲山さんはこう語る。

「いい判断をするためには、いい“価値基準”を持つこと。そして“選択肢”を多く持つこと。その選択肢は、他人の理由でなく自分の理由で選んだものでなくてはいけません」

価値基準について仲山さんは、サッカーの名言「シュートはゴールへのパスである」を引き合いに出す。素人のサッカー好きがよくやる失敗が、ゴールへ思いっきり蹴って、派手に外してしまうこと。この場合、「シュートは思いっきり蹴るもの」が、これまでの価値基準。これを指導者は、「ゴールにパスしろ」(強く蹴るな、狙って蹴れ)という指示によって、別の価値基準に上書きする。いわば「価値基準のアップデート」。これで判断力強化に必要な要素が1つ改善される。

次に選択肢について。エスペリオンユースのエース・栗林選手のセリフに、「僕はいかなる局面でも、どれを選んでも正答となる4つの選択肢を持ち、一つを選ぶ」というのがある。対して、アシトは、「選択肢なんてなんて…俺にはない。『これぞ』と思うプレーはいつも……一つだ」。

ⓒ小林有吾/小学館

聞いていて、アシトの方がカッコ良さそうに思えるが、仲山さんは、「そうではない」と言う。

「判断するにあたって、選択肢を持てている状態が“自由”です。アシトも最初は、選択肢はないと言ってましたが、実際は意識できていないだけです。無意識でやっていることを言語化し、意識化することが大事。かといって、選択肢は多ければいいというわけではありません。多すぎて迷いやすくなったら判断が遅くなるので」

いつも決め打ちで、一択しかないのがいいと思っている人には痛い言葉だ。

“仮説→試行→検証→規範化”のサイクルを回す

『アオアシ』の第4巻36話に、アシトが、「ボールを止めて、蹴る」というテクニックの練習をえんえん繰り返すシーンがある。そこへ、「数こなしゃいーってんもんじゃねぇぜ」と現れる同期の選手たち。

ⓒ小林有吾/小学館

この場面から、仲山さんは“実行”のポイントとして、“仮説→試行→検証→規範化”のサイクルについて解説する。

「よい実行をするには、ただ繰り返すのではダメで、よい仮説を持つことが大事です。仮説とは、『こうすればよくなるのでは?』という問いを立てること。それを実際にやってみるのが試行。試行して仮説が検証されるわけです。うまく実証されたなら、仮説は仮でなくなって価値基準がアップデートされます。これが規範化。このサイクルを繰り返すのが実行です」

アシトの苦闘に話を戻すと、仲間の手本によって「ボールを止めて、蹴る」の意味がおぼろげにわかり、「どこにでも一発で打てる自由な位置にボールを止める」という仮説が生まれる。そして試合中、その仮説に基づき試行したことで、仮説が正しいことが検証された。

ⓒ小林有吾/小学館

仲山さんはこう語る。

「コロナ禍でのリモートワークで、新入社員が、上司とのコミュニケーション不足で不安になっているという話を聞きます。リモート化になって、もう2年以上経っているのに、会社側が“仮説→試行→検証→規範化”のサイクルをほとんど回せていない可能性が高いです。本社部門がやり方を計画し、通達して、現場は指示されたとおりにやるだけ。うまくいかないと思っていてもフィードバックしないからサイクルが回らない。この種のことは、多くの組織で起きていることでしょう。

この本の内容は、“試行錯誤の作法”です。

大概のビジネス書って、想定読者を、“どうしていいかわからなくて悩んでいる人”に置きがちですよね。『アオアシ』の福田監督のセリフに『悩んでサッカーをするな』というのがあります。 “悩む”とは、立ち止まって深刻になることで、 “考える”とは、仮説をつくって試すことだと思います。考え方を知ることで、悩まずに試行錯誤できるようになってほしい。それが本で訴えたかった、大きなメッセージの1つです」

おそらく、「自分で考え行動すること」の重要性は、誰しも知ってはいる。では、それを具体的にどう進めていくか? そのエッセンスが盛り込まれた本書は、悩んで立ち止まっているビジネスパーソンには、有用な1冊になるはずだ。

撮影:守谷 美峰

仲山進也さん プロフィール
仲山考材株式会社代表取締役、楽天株式会社楽天大学学長。
創業期(社員約20 名)の楽天に入社。2000年に楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立、人にフォーカスした商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。2004年「ヴィッセル神戸」ネットショップ開設。2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由)となり、2008年には仲山考材を設立、考える材料(考材)をファシリテーションつきで提供している。2016年「横浜F・マリノス」とプロ契約、コーチ向け・ジュニアユース向け育成プログラムを実施。
数万社の中小・ベンチャー企業を見続け支援しながら、消耗戦に陥らない経営、共創マーケティング、指示命令のない自律自走型の組織文化・チームづくり、長続きするコミュニティづくり、人が育ちやすい環境のつくり方、仕事を遊ぶような働き方を探究している。
「子どもが憧れる、夢中で仕事する大人」を増やすことがミッション。「仕事を遊ぼう」がモットー。
著書『「組織のネコ」という働き方』『組織にいながら、自由に働く。』『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』ほか多数。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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