テレビなどの報道で『天神祭』の様子を目にしたことがあっても、どのような祭りなのか知らない人もいるのではないでしょうか。『天神祭』の特徴や歴史を紹介するので、見どころについても把握し、実際に足を運んで祭りを楽しみましょう。
天神祭とは?
『天神祭』は、日本各地で行われる夏祭りの中でも有名な祭りの一つです。まずは『天神祭』がどのような祭りなのか見ていきましょう。
菅原道真とゆかりの深い日本三大祭りの一つ
『天神祭』は「てんじんまつり」または「てんじんさい」と呼ばれ、日本各地の天満宮(天神社)で行われる祭りです。
中でも『大阪天満宮』で行われる『天神祭』が有名で、『愛染祭』『住吉祭』とともに大阪三大夏祭りの一つとされています。また、東京の『神田祭』、京都の『祇園祭』とともに、日本三大祭りの一つでもあります。
毎年7月24日が『宵宮』で、7月25日が『本宮』です。大阪天満宮に祀られている菅原道真の御神霊に市内の繁栄ぶりを見ていただき、今後のさらなる繁栄を祈願するための祭りです。
参考:天神祭|大阪天満宮
菅原道真は学問の神様
菅原道真は学問の神様として広く知られており、受験シーズンになると合格祈願のために天満宮に足を運ぶ人は少なくありません。
845年に学者の家系に生まれた道真は、幼児期から漢学を学び、18歳で難関の試験に合格して『文章生(もんじょうしょう)』になりました。
文章生は現在の大学生に該当し、40人いる中でも特に成績優秀な1人だったといわれています。33歳のときには、学者の最高位である『文章博士』の地位を得ました。
政治家としても成功し『右大臣』に抜てきされます。当時は、貴族ではない学者が重要な役職に就くのは珍しいことでした。
そのため、彼に嫉妬する人たちは多く、901年に九州へ左遷されます。その地で不遇の死を遂げた道真を祭るために、太宰府天満宮が建てられたのです。
天神祭の歴史
『天神祭』はどのように始まり現在まで続いているのか、歴史を紹介します。歴史的背景を知ることで、祭りをより楽しめるようになるでしょう。
951年の「鉾流神事」が起源
『天神祭』は菅原道真の霊を鎮めるための祭りとして、平安時代から続いている長い歴史を持つ祭りです。その起源は古く、951年の『鉾流神事(ほこながししんじ)』までさかのぼります。
大阪天満宮の社頭の浜から大川に神鉾を流し、流れ着いた場所に祭場を建て、みそぎを行ったのが起源とされます。その際に神領民が船を仕立てて奉迎したのが、現在まで続いている『船渡御(ふなとぎょ)』の始まりと考えられています。
『鉾流神事』は、現在も天神祭の開幕を告げる厳格な神事です。斎船(いつきぶね)で堂島川の中ほどまで行き、神童が鉾流を流します。神童は地元の小学生の中から選ばれるのが恒例です。
1953年に現在の天神祭の形に変化
豊臣秀吉が大阪城を築いた頃には船の数も増え、現在の『船渡御』のスタイルに整いつつあったとされています。それ以降、天神祭は繁栄のシンボルとして豪華さを増していきました。
幕末の混乱や戦争によって天神祭が中断された時期もありましたが、戦後には『船渡御』が復活しました。
しかし、地盤沈下により大川の水位が上昇し、船が橋の下を通ることが難しくなったため再び中止になったのです。
1953年に『船渡御』を持続させるために新たなコースが作られ、現在に至っています。
天神祭の特徴や見どころ
『天神祭』をより楽しむために、どのような特徴や見どころがあるのかチェックしましょう。代表的な行事を四つ紹介します。
なお、2022年はコロナ禍の影響で『船渡御』と『奉納花火』の中止が決定しています。
天神祭ギャルみこし
『天神祭』に華を添える行事として定着しているのが、1981年から続いている『ギャルみこし』です。正式には『天神祭女性みこし』ですが、有名になるにつれ『ギャルみこし』と呼ばれるようになりました。
一般公募で選ばれた女性たちが、約200kgもあるみこしを担いで天神橋筋商店街を巡り、大阪天満宮へ向かいます。
白地に赤の石組み模様が施されたハッピは、日本デザイナークラブ関西支部がデザインしたものです。白は『清潔感』、赤は『元気さ』、『石組み模様』は大阪城の石垣、帯の青は『大川の水』をイメージしています。
陸渡御
『陸渡御』は、総勢3000人もの大行列が、大阪天満宮から『船渡御』の場所である天神橋まで巡る行事です。
華やかな衣装をまとった人々が、催太鼓(もよおしだいこ)を先頭に神鉾・御羽車(おはぐるま)・御鳳輦(ごほうれん)・鳳神輿(おおとりみこし)・玉神輿(たまみこし)とともに約4kmを歩いていきます。
中でも見逃せないのが、独特な演奏が無形文化財に指定されている『催太鼓』です。大阪府の無形民俗文化財である「からうす」が披露されます。出発前に境内でも演奏されているので、足を運んでみるのもおすすめです。
船渡御
『陸渡御』に続いて、古くから続いている行事である『船渡御』が始まります。現在は100隻あまりの船が大川を航行する、大きな行事として親しまれています。
約7kmのコースを2~3時間かけて上流と下流に向かって行き交い、船がすれ違う際に掛け声と手拍子を組み合わせた『大阪締め』を交わし合うのが特徴です。
夜が更けてくると花火が打ち上げられ、水面に明かりをともす船と夜空に浮かぶ花火による美しく幻想的な光景を楽しめます。
『船渡御』は見るだけでなく、実際に乗船も可能です。予約が必要なので、興味のある人は事前にチェックしましょう。
奉納花火
『船渡御』に合わせて行われるのが、大川を挟んで2カ所から打ち上げられる『奉納花火』です。
午後7時頃から9時頃にかけて、約4000~5000発もの花火が打ち上げられます。『天神様』にちなんで作られた、梅鉢の形をしたオリジナルの花火である『紅梅』を見逃さないようにしましょう。
迫力ある花火が鑑賞できるおすすめのスポットは、『JR桜ノ宮駅』近くの『桜宮公園中央広場周辺』です。多くの屋台が出ているので、花火と同時においしい料理も堪能できます。非常に混み合うため、早めに鑑賞場所を確保しましょう。
構成/編集部