サーキュラーエコノミーの時代が到来!?
今年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」をご存知の方も多いだろう。これを受けて、さっそく各自治体でも努力義務とされる家庭の「プラスチックごみ」の分別回収をスタートするところも出てきている。ちなみに筆者の住む渋谷区では、7月から分別回収を行なうという旨の通知が届いた。
さて、この「プラスチック資源循環促進法」とは、どういうものなのだろうか?
まずその背景についてだが、使用済みのプラスチックが分解されずに海洋汚染が広がり、生態系や環境などに悪影響を及ぼすことが懸念される海洋プラスチックごみ問題。さらに、これまで日本は、廃棄するプラスチックを資源としてアジア諸国に輸出してきたが、各国の輸入規制の強化により自国で処理しなくてはならなくなった。
そんな背景から、プラスチックを資源として国内で循環させる必要が高まってきたのだ。
つまり「プラスチック資源循環促進法」は、プラスチック製品の設計・製造から排出・回収・リサイクルに至るまでのライフサイクル全般を通じた、プラスチック資源循環「3R+Renewable」の促進を図ることを目的としたもの。
ちなみに「3R+Renewable」とは、Reduce(リデュース)排出するごみを減らす、Reuse(リユース) 繰り返し使う、 Recycle(リサイクル)資源として再利用する、Renewable(リニューアブル)再生可能な資源に替える、という意味となる。
このように同法では、単に「廃棄するプラスチックを減らす」というだけではなく、「廃棄することを前提としない経済活動をすること」を目指しているという特徴がある。実は、このような考え方は、2015年12月にEUが公表した概念「サーキュラーエコノミー」と同様のものであり、経済全体をそこに向けて推し進める狙いがある。
その「サーキュラーエコノミー」とは、「循環型経済」とも呼ばれ、これまで廃棄されていた製品や原材料などを「資源」と考え、リサイクル・再利用などで活用し循環させる新しい経済システム。
つまり、従来では「原材料→製造→消費→廃棄」という一方向で、大量の廃棄物を生み出していたのに対し「資源→製造→消費→リサイクル・再利用(=資源)→製造〜」と循環させて、廃棄を最小限に抑え、新しい資源の利用も抑えようという考え方。
このようにして、地球の限りある資源や自然エネルギー守りつつ、大量の廃棄物による環境破壊や生態系への甚大な被害を無くしていこうという取り組みとなる。
サーキュラーエコノミーに取り組む企業
さて、この「サーキュラーエコノミー」への取り組みは、すでに世界中の企業で広まっているので、その事例をいくつか紹介しよう。
■銀座ロフトが使用済み繊維製品の回収拠点に!
生活雑貨専門店のロフトは、2022年4月22日(金)より使用済みの繊維製品を捨てずに回収し、新たな資源に再生する循環プラットフォーム「BIOLOGIC LOOP(ビオロジックループ)」の回収拠点店舗として、銀座ロフトで取り組みを開始。回収対象は、繊維衣類品、繊維製品(例:タオル、キャップ帽含む帽子、ナイロン含むエコバッグ、カーテン、ぬいぐるみなど)。期間は、2022年4月22日(金)より2023年4月14日(金)まで。
■大日本印刷がリサイクルプラスチック材を使用したICカードのラインアップを拡充
大日本印刷株が、ポリエステル系リサイクルプラスチック(PCT‐G)を基材の一部に使用した非接触IC対応のクレジットカード“リサイクルPCT‐Gカード”の提供を4月に開始。これは、高い耐衝撃強度を持つプラスチックであるPCT‐Gの加工段階で排出される端材等をリサイクル加工して、ICカードに使用することにより、カード発行企業等の環境活動を支援するとともに、プラスチックのリサイクル推進やCO2排出削減など、環境負荷の低減を推進していくというもの。
関連情報:https://www.dnp.co.jp/news/detail/10162432_1587.html
■環境省「サブスクリプションを活用したエアコン普及促進モデル事業」において熊谷市、トラストワン、パナソニックとの包括連携協定を締結
埼玉県熊谷市、トラストワン、パナソニック コンシューマーマーケティングが、環境省の「サブスクリプションを活用したエアコン普及促進モデル事業」の推進に向けて共同で取り組んでいくことで合意し、包括連携協定を締結した。本モデル事業により、高齢者世帯を中心とする地域の熱中症予防を促進するとともに、環境省における熱中症予防方策の検討に資する統計データ等の収集、及び分析を行なうことで、事業の有効性を検証していく。
さらに、エアコンの設置に係る初期費用の低減による省エネエアコン普及の加速及びサブスクリプション型サービスの事業検証を行なう。それにより、エアコンの所有者であるサブスクリプション型サービス提供事業者が、リサイクルを実施することにより確実なリサイクルを図り、サーキュラーエコノミーの進展に貢献することをめざす。
関連情報:https://ec-plus.panasonic.jp/store/page/env_aircon/kumagaya/
■東急ハンズがネイチャーズウェイグループ使用済み化粧品容器回収スタート
東急ハンズは、同社の銀座店・渋谷スクランブルスクエア店の2店舗で、4月29日(金)より使用済み化粧品容器の回収を開始した。この取り組みは、自然素材にこだわった化粧品を提供し続けるネイチャーズウェイが、テラサイクルジャパンと連携して行なうサステナブルプログラムの一環。回収したパッケージは新たな資源として製品などに使用される予定。対象ブランドは、ェレダ、ナチュラグラッセ、チャントアチャーム、ドクターブロナーとなる。
関連情報:https://www.tokyu-hands.co.jp/company/
■日本環境設計グループとアサヒ飲料が自動販売機横の使用済ボトルの循環を開始
日本環境設計およびグループ会社ペットリファインテクノロジーとアサヒ飲料が、5月中旬よりケミカルリサイクル技術を活用した自動販売機横の使用済ペットボトルに係る「ボトルtoボトル」を協働して取り組むこととなった。この取り組みは、アサヒ飲料グループの自動販売機横の回収BOXから回収した使用済PETボトルを、ペットリファインテクノロジーのケミカルリサイクル技術「BRING Technology」を用いてPETボトル向けの樹脂に再生。繰り返しPETボトルを循環させることで、プラスチックゴミ削減に貢献していくというもの。
関連情報:https://www.asahiinryo.co.jp/csv/eco/
地球の限りある資源や自然エネルギーを守るという意味で、「サーキュラーエコノミー」の考え方が大切なことはわかる。ただ、少子化が進む日本を除き、世界ではこれからも人口の増加が続くといわれており、この取り組みでは資源の確保が追いつかなくなる可能性も。となると、次は地球以外の宇宙に資源や居住場所を求めるようになるのかも知れない!?なんだか、その次なる一手、想像するだけでワクワクしてしまうのは筆者だけだろうか……。
取材・文/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)