マンションなどの不動産を購入したところ、その後なぜか知らない不動産会社から、メールや書面で売却勧誘などのDMが届いた経験がある方もいらっしゃるかと思います。
どうして知らない不動産会社からDMが届くのでしょうか?
また、DMの送信を停止してほしい場合には、どのような対応を取るべきなのでしょうか?
今回は、知らない不動産会社からDMが届く理由や、不要なDMへの対処法などをまとめました。
1. 不動産購入後、知らない不動産会社からDMが来るのはなぜ?
不動産を購入した直後に、知らない不動産会社を送信元とするDMが送られてきたら、どのようなルートで住所や氏名を知ったのか、不思議に思うかもしれません。
不動産会社は、DMを送信する潜在的顧客の情報を、あらゆるルートから取得しています。そのため一概には言えませんが、不動産登記から住所と氏名を確認している可能性があります。
新築マンションの販売時には、ディベロッパーが大々的に宣伝広告を行うのが通例です。
また中古マンションの販売時には、指定流通機構(レインズ)や民間の情報サイト(SUUMO、at homeなど)に販売情報が掲載されます。
不動産会社は、これらの情報を継続的にチェックしており、どの物件が売れたのかをかなり細かく把握しています。
法務局で数百円の手数料を支払えば、誰でも不動産の登記情報を確認できます。登記情報には、所有者の氏名や住所も記載されています。
不動産会社は、「不動産取引に関心がある潜在顧客」として囲い込むために、売れたと思われる物件について登記情報を確認し、新所有者にDMを送信しているものと思われます。
2. 取引した不動産会社から、個人情報が流出した可能性はないのか?
新築マンションのディベロッパーや、中古マンションの仲介業者など、取引した不動産会社から個人情報が流出したという可能性も、一応考えられます。
現実的には、競合他社に対して不動産会社が個人情報を流すことは考えにくいです。報道等で特に話題になっていない限りは、個人情報の流出事件が発生した可能性も低いでしょう。
ただし、これらの可能性が全くないとは言い切れません。また、関連会社の間で個人情報がシェアされている場合には、個人情報流出のリスクは高まります。
そのため、個人情報の取扱いについて不安がある場合には、不動産会社に対して利用の停止・消去の請求を行いましょう(個人情報保護法35条1項、5項)。
3. 不動産会社からのDMを止めるには?
不動産会社から届く不要なDMを止めるためには、以下の手続きを取りましょう。
3-1. 電子メールの場合|送信停止の手続きを取る
「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)では、営業広告・宣伝用の電子メール(=特定電子メール)の送付に関するルールが設けられています。
特定電子メール法3条1項に基づき、以下に挙げる以外の者に対して、特定電子メールを送付することは禁止されています。
①あらかじめ送信を求めた者、または送信に同意した者
②原則として書面により、自己のメールアドレスを送信者等に通知した者
③広告・宣伝の対象となっている営業者と取引関係にある者
④インターネット上で事故のメールアドレスを公表している団体・個人事業主
ご自身が上記のいずれにも該当しないのに、知らない不動産会社から特定電子メールが送られて来る場合、不動産会社が特定電子メール法に違反している可能性があります。
また、受信者が上記のいずれかに該当するとしても、送信停止の通知を行えば、送信者は特定電子メールの送信を停止しなければなりません(同条3項)。
不要な特定電子メールが送られ続ける場合には、送信者に送信停止を依頼しましょう。
3-2. 郵便・メール便等の場合|個人情報保護法に基づくクレームを入れる
DMが郵便・メール便等で届く場合、送信元の不動産会社に対して、個人データの利用停止・消去を請求することが考えられます(個人情報保護法35条1項、5項)。
個人データの利用停止・消去の請求が認められるのは、以下のいずれかに該当する場合です。
①個人情報が目的外利用されている場合
②個人情報が違法・不当な行為を助長し、または誘発するおそれがある方法により利用されている場合
③個人情報が不正の手段により取得された場合
④事業者が保有個人データを利用する必要がなくなった場合
⑤保有個人データの漏えい等が生じた場合
⑥その他、事業者による保有個人データの取扱いにより、本人の権利・正当な利益が害されるおそれがある場合
取引のない不動産会社が、不要なDMを送り続けるために個人情報(個人データ)を保有・利用している状態は、少なくとも以下のいずれかに該当する可能性があります。
④事業者が保有個人データを利用する必要がなくなった場合
⑥その他、事業者による保有個人データの取扱いにより、本人の権利・正当な利益が害されるおそれがある場合
不要なDMが郵便・メール便等で届き続ける場合には、速やかに不動産会社に連絡を取り、上記の規定を根拠に個人データの利用停止・消去を求めましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw