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置き配の盗難問題を解決しながらSDGsに貢献できる新サービスが話題

2022.05.30

配送物を対面で受け取らず、玄関外に置くことで配達完了となる「置き配」は、再配達を減らしてコストや長時間労働など多くの物流課題を解決する一方で、「盗難の心配」「オートロックマンションなどの共用部への置き配が難しい」「宅配ボックスが満杯になると受け取れない」などの課題もある。今後、さらにEC物流が増すと予想される中、置き配はより利用が増えていくだろう。そこで置き配課題を解決する新サービスを2つ紹介する。いずれもSDGs(持続可能な開発目標)にも寄与するサービスだ。

置き配の現状課題

EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数が増加している中、宅配便の小口化、多頻度化も進み、多くの課題が生じている。積載率の低下や再配達の発生などの非効率、トラックドライバー不足など、労働力不足も顕在化していることから、再配達削減に取り組んでいくことが重要とされている。

宅配便の再配達率については、国土交通省「宅配便再配達実態調査」(2019年10月期)によれば、全体の宅配便のうち、15.0%に上っている。その再配達削減策のうち、「多様な受取方法の推進」としてオープン型宅配ボックスの活用、コンビニ受け取り、宅配営業所受け取り、置き配などの方法がある。

置き配については、消費者、EC事業者、宅配事業者それぞれにメリットがある一方で、課題もある。

●置き配の主なメリット

・受け取りストレスの低減
・非対面の受け取りが可能
・ECの利用拡大
・ドライバーの生産性向上

●置き配の主な課題

・盗難の恐れ
・風雨や動物の糞尿被害の恐れ
・不在状況が分かってしまう
・オートロック式マンションは不可

出典:令和2年3月 経済産業省 国土交通省「置き配の現状と実施に向けたポイント」

置き配課題を解決しSDGsにも貢献するサービス2選

1.オートロックマンションでも置き配を実現する荷物認証宅配システム

●サービスの特徴

スマート宅配ソリューションなどを手がけるベンチャー、株式会社PacPortが、インターホン大手、アイホン株式会社と共同開発した「Pabbit(パビット)」は、荷物の非対面受け取りを可能とするシステム。具体的には荷物の伝票番号をエントランスインターホンの認証キーとするものだ。

荷物の伝票番号をエントランスインターホンで認証して通行キーとするソリューションという意味では日本初だという。

Pabbitは、オートロック付きマンションにおいて、配送業者が荷物の伝票番号(バーコード)を認証キーとしてオートロックを解錠することができる。それにより、居住者の不在時でも入館が可能となり、各階・各戸専用宅配ボックスに荷物を届けることができる。また従来、むずかしかった置き配も可能となる。

Pabbitのサービス概要

荷物の伝票番号で認証するため、荷物を持っている配達員のみがオートロックを解錠できる仕組みになっている。これにより、配送業者のなりすましを防ぐセキュリティ性も期待できるという。

すでに大手配送業者とのシステム連携に積極的に取組んでおり、今後、配送業者のほか、ネットスーパーなどにも順次拡大していく予定だという。

●開発背景

Pabbit開発の背景について、株式会社PacPort 営業部 セールスマネージャー 大﨑直人氏は次のように回答する。

「当社では日本の宅配サービスにおける“ラストワンマイル”問題をITの技術によって解決したいという想いを持っておりました。実際に増え続けるEC通販などの宅配量に対して、再配達の荷物も増え続ける。結果として、宅配業界のドライバー不足や長時間労働など社会問題化しています。この課題を解決するためにソリューション開発を行っており、より安全にかつ安心してご利用いただけるように考えております。

大きな転換点となったのは、アイホンさんとの提携といえます。このことによって、機器としてのハード面と、ソリューションというソフト面がつながり、“モノ”を認証する形でのオートロック解除システムが提供できるようになりました」

●サービスによって得られる効果と実施状況

すでに複数の大手不動産会社の新築マンションや既存マンションにおいてPabbitの導入が進んでいるという。

大﨑氏は次のように話す。

「Pabbitを採用する現在建築中の分譲マンションでは、各住戸に専用宅配ボックスが標準装備されます。また、既存物件にも対応が可能となることから、これまで課題だった既存のオートロック付きマンションへの置き配サービスや、オートロック内での宅配ロッカーの設置も可能になります」

●SDGsへの貢献性

Pabbitを通じて、SDGsの目標達成も意識しているという。

「コロナ禍の今、増え続けるEC通販など、宅配便業界を取り巻く環境は年々、厳しさが増しています。日本の宅配便における再配達率は、年間で約15%といわれています。この再配達によって発生するCO2の排出などは、本ソリューションによって再配達率の低下につながり、結果としてCO2排出量の削減につながると考えております」

●今後の展望

最後に今後の展望について、大﨑氏に回答してもらった。

「不在時においても荷物を届けたいと考えているのは、宅配便業者だけではありません。ネットスーパー・クリーニング・各種通販業者など、セキュリティを安心に通過できるシステムを活用したサービスの拡充を行って行きたいと思います。今後も、 Pabbitシステムの導入拡大に注力をしていきます」

2.SDGsにも貢献する「人に優しい」宅配ボックス・ゴミステーション

●製品の特徴

富山県で板金加工などを営む株式会社ナカノが独自開発したゴミステーション「DUSPON(ダスポン)」のうち、家庭向けの「ホームスライドダスポン」は宅配ボックスとしても使える多目的収納ボックスだ。置き配の盗難やプライバシー、雨ざらし防止に役立つ。

サイズは幅770mm×横400mm×縦760mm、扉カラーは全11色。耐久性や、サビや腐食に強い堅牢性、住まいや街の景観に溶け込み、調和するデザイン性も兼ね備える。

「ホームスライドダスポン プレミアムモデルHSDP-774、HSDP-BZ-774」
「ホームスライドダスポン スタンダードモデル HSD-774、HSD-BZ-774」
希望小売価格 131,000円~161,000円(税込)※素材やモデルにより異なる

一般に販売されており、ナカノの公式楽天市場のネットショップでも購入できる。

●開発背景

代表取締役社長 中野隆志氏によれば、DUSPONの一番大きな特徴は、ドアがスライド式になっている点にあるという。従来のゴミステーションは扉が上部に付いているものがほとんどで、下から上に扉を上げて、ごみを出し入れする構造だ。しかし、それには課題が多く、試行錯誤の末、ようやくこのスライド式の構造にたどりついたという。

中野氏は、DUSPONのうち、集合住宅向けのゴミステーションである「スライドダスポン」の開発背景について次のように話す。

「当社にはもともと、お客様からのリクエストにより先代社長が開発したカラスよけのステンレス製ごみステーションがありましたが、従来のように扉が上下に開くタイプだったため、進化させる必要がありました。2015年のある日のこと、いつものように朝のごみ出しをしていると、同じ町内の方がごみステーションの扉を開けて、ごみを上から入れる動作が、大変そうに見えたのです。それがスライド式を開発するきっかけとなりました」

従来のごみステーションは、扉を下から上にスライドさせて上げた後、ごみを腰より上の高さまで持ち上げて中に入れなければならない。高齢者などはその動作が大変で、わずらわしさも感じるはずだ。中野氏は、それを実際に体験することで、その大変さに気づいた。

また、ゴミ回収業者も同様に大変なのではないかと気付き、知り合いのゴミ回収業者を当たり、ゴミ回収作業を一定期間、体験した。

「計600か所以上のごみステーションを回り、出しやすさ・回収しやすさ・形状などを徹底分析し、データ化しました。作業員の方は中腰での作業が多いため、腰痛が多いことがわかりました。このようなデータをもとに社内で徹底に議論し、世代問わずゴミを出す人、回収する人が利用しやすい、やさしい機能を企画し、その機能性を追求した先に、このデザインにたどりつきました」

【これからの時代に必要とされるゴミ置き場の特徴】
・中腰の姿勢にならずに済む
・ゴミを高く持ち上げる必要がない
・適切なサイズがあり、ゴミがはみ出さない
・ゴミステーション自体がキレイで地域の景観に調和できる
・高齢者でも簡単にやさしく利用できる

●製品の効果

上記の特徴を兼ね備えた製品を作るべく、6台もの試作を重ね、2018年に「スライドダスポン」が誕生した。企画から完成品まで約3年もの歳月が費やされたという。

「L型のスライド扉を左右に開閉すると、中央部足元から上部にわたって、大きな投入部が現れます。腰板のない構造のため、ごみの出し入れ時に、ごみを持ち上げずに済みます。これにより、どこにもない『人に優しい機能』を持つことになりました」

また、素材は従来からよくある金網ではなく、高級感のあるステンレス素材を使用することで、一見するとごみ置き場に見えず、またごみが外から見えず景観が保たれるという。そのデザイン性が評価され、2018年にはグッドデザイン賞を受賞。スライドダスポンシリーズは発売から約2年で400台販売し、今なお需要が増加し続けているという。

そして、後日家庭向けに開発された「ホームスライドダスポン」は、宅配便の増加から宅配ボックスとしても使われるようになった。

●SDGsへの貢献性

先日は、DUSPONを通した防犯リスクの低減や再配達を減らすことによるCO2削減の活動について、「富山県SDGs宣言」に登録された。

同宣言は、県内企業や団体等からSDGsに関する取組みを宣言し、県のSDGsの取組みを推進していくもの。

ナカノはSDGsの3つの目標について取り組みを宣言した。

「11.住み続けられるまちづくりを」
目標:防犯リスクの低減を目的とした商品提案
「防犯対策として、解錠されにくく、楽に施錠ができるプッシュ錠や宅配ボックスごと盗難に遭わないよう本体そのものに盗難防止用のフックを装備し、セキュリティ性を強化しました。今後も防犯性が高い製品・ソリューションを提供することで、誰もが安全で住みやすい街づくりに貢献します」

「12.つくる責任、つかう責任」
目標:100%リサイクルが可能な商品提案
「当製品に使用しているステンレスは高い耐久性だけでなく、100%リサイクルが可能な素材です。その素材を使用し、長年愛用できるデザイン性のある商品開発や商品提案をすることで、つくる責任を果たします」

「13.気候変動に具体的な対策を」
目標:宅配ボックスを通してCO2の削減
「様々なECサイトが急速に拡大し、宅配便の利用が増加する世の中で、宅配便の再配達はCO2 排出量の増加や物流業界のドライバー不足を助長するものとして重大な社会問題になっています。宅配ボックスの配置を促進することで、再配達に伴うCO2削減を目指します」

●今後の展望

今後は、どのような展開を予定しているのだろうか。中野氏は次のように述べる。

「今後は、全国で開催されている展示会・見本市で、防犯性が高い製品・ソリューションを情報発信していきます。DUSPONを通じ至高の空間、かっこいい空間、快適な空間を選んでもらえるために、商品のラインナップを充実させます。

また宅配ボックスとしての機能を充実させ、再配達を軽減し、CO2の削減に貢献していきます」

再配達の削減に役立つ置き配や宅配ボックス設置は、ラストワンマイル問題の解決だけでなく、持続可能な社会づくりの一助にもなりそうだ。

【取材協力】
PacPort「Pabbit」
ナカノ「DUSPON」

取材・文/石原亜香利

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